糖尿病は今もなお脅威的な病気であり、WHOが2020年に発表した「2000〜2019年の世界の死因トップ10」では9位にランクインしている。
実際に糖尿病を患う人は増え続けており、2021年の世界の糖尿病患者数は5億3,700万人にのぼる。特にアジア・中東・アフリカ地域が深刻で、2045年には世界の糖尿病患者全体の77%を占めると予測されているそう。
糖尿病患者は生涯にわたって食事や運動の管理・日々の記録作成が必要であり、そのサポートの重要性も非常に高まっている。
そこで立ち上がったのが、糖尿病大国インドのスタートアップ「Sugar.fit」だ。糖尿病患者向けのオンライン遠隔診療・体調管理サービスを展開している同社について紹介していく。
事業内容:糖尿病患者向けに体調管理を遠隔サポート
Sugar.fitは、糖尿病患者向けに体調管理をオンラインでサポートするサービスを展開している。非常に高い効果を発揮しており、実際に90%以上の人が糖尿病治療薬の使用量を減らすか、完璧にやめることができたそうだ。
<Sugar.fitが展開するサービス一覧> 1.血糖値の自動測定・記録 2.健康状態を総合的に診断 3.医師による定期的なアドバイス 4.1人1人に合わせたプラン 5.患者だけのコミュニティ |
サービス①:血糖値を自動で測定・記録
Sugar.fitが展開する革新的なサービスの1つが、血糖値を自動で測定・記録してくれる「CGM(Continuous Glucose Monitoring)」だ。患者は同センサーを上腕につけるだけで、血糖値がリアルタイムに測定され、アプリ上に自動で記録される。
一般に「◯時◯分に血糖値を測定した」「今日は〇〇を食べた」など、糖尿病患者は毎日詳細な記録をつけなければならない。また、この記録を定期的に医者に提出する必要があり、その苦労は計り知れない。
糖尿病患者の負担を軽減できる本サービスは、まさに画期的といえるだろう。
サービス②:70以上の項目から健康状態を総合的に診断
Sugar.fitは、CGMが測定・記録した70以上のパラメータをもとに、健康状態を総合的に判断してくれる。
まずは、サービス利用開始時に血液・尿検査を実施して、その人の基本となる健康状態を把握。次に3ヶ月ごとにスクリーニング検査を行い、「健康状態がどう変化したのか」を正確に診断してくれる。
たとえば「今日は何を食べたらダメなのか」をデータとして検証することも可能だ。
サービス③:医者やヘルスコーチによる最適なアドバイス
糖尿病患者の言語・食事の好みに合わせて、最適な医者やヘルスコーチが割り当てられ、今後のケアについてオンライン上でアドバイスをくれる。医者やヘルスコーチは、同社の厳しい試験・プログラムを乗り越えたエキスパートだそうだ。
サービス④:データをもとに1人1人に合わせた最適なプランを提供
Sugar.fitでは、CGMが計測・記録したデータと、医師との相談結果をもとに、糖尿病を改善するための、食事や運動、睡眠に関するプランを提供してくれる。
Sugar.fitの用意するフィットネスビデオは、インドの専門家によって監修されたもの。プロが作成した運動プログラムで、確実な減量に臨むことができるそう。
サービス⑤:他の糖尿病患者と交流できるコミュニティ
Sugar.fitは、糖尿病患者同士が交流することができるコミュニティも提供している。お互いに疑問や工夫などについて共有することで、治療のモチベーションが続くようにしているのだ。
資金調達:シリーズAラウンドにて追加で500万ドルを獲得
Sugar.fitは2024年3月にシリーズAラウンドにて、追加の資金としてB Capitalから500万ドルを調達した。これで同社の累計調達額は2,600万ドルにのぼる。
<シードラウンド>
- 時期:2021年
- 金額:1,000万ドル
- 出資者:Cure.fit・Endiya Partners・Tanglin Venture Partners
- 目的:初期製品の開発と市場投入、サービス基盤の構築
- 時期:2023年10月
- 金額:1,100万ドル
- 出資者:MassMutual Ventures・Cure.fit・Tanglin Venture Partners・Endiya Partners
- 目的:技術スタックの強化、製品ラインの拡充、ブランド認知度の向上
- 時期:2024年3月
- 金額:500万ドル
- 出資者:B Capital
- 目的:研究開発の強化
トレンド:新興国にて2型糖尿病患者が急増
実は途上国や新興国にて2型糖尿病に苦しめられる患者が急増している。
実際に国際糖尿病連合(IDF)が発表した2021年のデータによると、糖尿病患者の4分の3が低・中所得国の居住者とのこと。今や経済先進国と同様に、高カロリーの食事による肥満・糖尿病が、アジア・中東・アフリカ地域の保健当局を悩ませている。
背景として考えられているのが、経済成長をきっかけとした中間層の増加だ。欧米式の食事の拡大や砂糖消費量の増加、運動不足によって、糖尿病患者が急速に増えているそう。
また糖尿病に対して、世界中で9,660億ドル(2021年)の医療費が支払われている。2006年から15年間で316%増という脅威的な伸び率であり、2030年には約1兆ドルまで増大すると予測されている。糖尿病の前段階である耐糖能障害に罹患する成人は5.4億人にのぼるとも言われており、今後は糖尿病の予防はもちろん、合併症・重症化の予防も重要となるだろう。
企業概要
会社名:Sugar.fit
代表取締役:Madan Somasundaram・Shivtosh Kumar
設立:2021年
所在地:インド、バンガロール
公式HP:https://www.sugarfit.com/
まとめ
本記事では、糖尿病患者向けのオンライン遠隔診療を提供しているSugar.fitについて紹介した。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。
Sugar.fitのように、海外の面白い企業についてまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。