Lacework社は、クラウドセキュリティの分野で革新的なソリューションを提供するアメリカのスタートアップです。多くの企業がクラウド環境に移行する中で、同社は機械学習とデータ分析を駆使して、複雑なセキュリティ課題に対処しています。2015年の創業以来、急速に成長を遂げ、今では世界中の多くの企業に信頼される存在となっています。
本記事では、Lacework社の事業内容(主なサービス)・創業の経緯・会社沿革・資金調達について詳しく紹介していきます。
事業内容:クラウドセキュリティサービスの提供
Lacework社の事業内容は、クラウドセキュリティサービスの提供です。クラウドコンピューティングが急速に普及する中、多くの企業がクラウド上でビジネスを展開しています。しかし、クラウドの利用にはセキュリティリスクが伴います。同社は、このような課題に対応するためのソリューションを提供しています。
同社の主な役割は、企業のクラウド環境を継続的に監視し、セキュリティ上の脅威や脆弱性を自動的に検出することです。これにより、企業は安全かつ迅速にクラウド上でビジネスを展開できます。同社のサービスは、主要なクラウドプラットフォーム(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform)に対応しています。
Lacework社の特徴は、機械学習を活用した高度な分析能力です。従来の固定ルールに基づくセキュリティ対策とは異なり、Laceworkは膨大なデータを分析し、正常な状態を学習します。そして、その正常状態から逸脱する異常な活動を検出することで、新たな脅威にも柔軟に対応できます。
同社の目標は、クラウド環境におけるセキュリティとイノベーションの両立です。企業がクラウドの利点を最大限に活かしながら、同時に高度なセキュリティを維持できるよう支援しています。
以下では、主なサービスについて説明していきます。
主なサービス
Lacework社の主なサービスは、クラウドセキュリティプラットフォームの提供です。このプラットフォームは、複数の重要な機能を統合しており、企業のクラウド環境を保護することが可能です。以下に主要な機能を紹介していきます。
- Polygraph*データプラットフォーム
Lacework社の中心となる技術です。機械学習を使って、クラウド環境の通常の状態を学習し、異常を検出します。大量のデータを分析して、重要なアラートだけを選出します。(*Polygraphとは、日本語で「嘘発見器」の意) - クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)
クラウド全体のセキュリティを一つのプラットフォームで管理する仕組みです。アプリケーションの開発から運用までの全ての段階でセキュリティを提供し、リスクを減らします。 - クラウドセキュリティポスチャ管理(CSPM)
クラウド環境の設定ミスやセキュリティの弱点を自動的に見つけて修正する機能です。企業が定めたセキュリティポリシーに基づいて、クラウドリソースの設定が適切かどうかを常にチェックします。 - クラウドインフラストラクチャエンタイトルメント管理(CIEM)
クラウド環境でのアクセス権限を管理する機能です。ユーザーや役割に与えられた権限が適切かどうかを調べ、過剰な権限がないか確認します。 - クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)
クラウド上で動くアプリケーションやシステムを保護するための機能です。コンテナやサーバーレス環境など、様々なクラウドの作業環境のセキュリティを確保します。 - インフラストラクチャ・アズ・コードセキュリティ(IaC)
インフラストラクチャをコード化するプロセスでのセキュリティを確保する機能です。開発段階から設定ミスを見つけて修正することで、安全なインフラストラクチャの構築をサポートします。
これらの機能が統合されたプラットフォームにより、Lacework社は企業のクラウド環境を適切に保護し、セキュリティ運用の効率化を実現しています。
創業ストーリー
Lacework社は、Sanjay Kalra(サンジャイ・カール;元CPO)とVikram Kapoor(ヴィクラム・カプール;CTO)によって2015年に設立されました。二人はSutter Hill Venturesの支援を受けて会社を設立しました。創業当初から、同社はクラウドセキュリティに特化したサービスを提供することを目指してきました。
世界中でクラウド環境が整備され、新たなアプリケーションやサービスが追加されていく中で、クラウドのセキュリティの需要が高まっていました。
Kalra氏とKapoor氏は、これらの課題に対応するために、機械学習を活用した新しいタイプのセキュリティが必要だと考えました。彼らのビジョンは、クラウド環境を継続的に監視し、正常な状態を学習することで、異常を自動的に検出するシステムでした。
このビジョンを実現するため、KalraとKapoorは、Lacework社を設立しました。彼らの目標は、企業がクラウドの利点を最大限に活かしながら、同時に高度なセキュリティを維持できるようにすることでした。「スピードと安全性を両立させる」という同社の理念は、この創業時の思いに基づいています。
資金調達:総調達額は約20億ドル以上
Lacework社は、その革新的なクラウドセキュリティソリューションと市場の急速な成長を背景に、大規模な資金調達に成功しています。以下に、同社の主要な資金調達ラウンドをまとめます。
2015年(設立時): 具体的な金額は公開されていませんが、Sutter Hill Venturesによるインキュベーションを受けて設立されました。
2021年1月: シリーズD資金調達で5億2500万ドルを調達。
このラウンドは、Sutter Hill VenturesとAltimeter Capitalが主導し、D1 Capital Partners・Coatue・Dragoneer Investment Group・Liberty Global Ventures・Snowflake Venturesなども参加しました。
2021年11月: シリーズD資金調達で13億ドルを追加で調達し、企業価値は85億ドル以上と評価。
このラウンドは、Sutter Hill Ventures・Altimeter Capital・D1 Capital Partners・Tiger Global Management・Counterpoint Global(Morgan Stanley)などが参加。
この一連の資金調達により、Lacework社の総調達額は約20億ドルに達しています。これは、サイバーセキュリティ業界の歴史の中でも最大規模の資金調達の一つとなっています。
市場規模
クラウドセキュリティの市場は急速に成長しています。2023年には407億ドル(約5.4兆円)だった市場規模が、2028年には629億ドル(約8.4兆円)に達すると予想されています。年平均成長率は9.1%です。
この成長の主な理由は以下の通りです。
- マルチクラウド環境の普及:企業が複数のクラウドサービスを利用するようになっています。
- AIや機械学習の利用:クラウドセキュリティに最新技術を活用することで、より安全性が高まっています。
- BYOD(自分のデバイスを持ち込む)やCYOD(自分のデバイスを選ぶ)の増加:社員が自分のスマホやパソコンを仕事で使うことが増え、それに伴うセキュリティ対策が必要となっています。
また、同社の業績は、世界のクラウド利用量に大きく影響されます。世界全体のクラウドコンピューティング市場は、2023年には5918億ドル(約79兆円)で、2022年の4900億ドル(約65兆円)から増加し、2024年には6800億ドル(約91兆円)に達すると予想されています。
クラウドインフラストラクチャー関連の企業の売上は、2023年第4四半期に740億ドル(約9.9兆円)に達し、2023年第3四半期と比べて56億ドル(約7400億円)、2022年第4四半期と比べて120億ドル(約1.6兆円)増加しました。
会社概要
会社名:Lacework
設立:2015年1月
創業者:Sanjay Kalra、Vikram Kapoor
拠点:アメリカ合衆国、カリフォルニア州
まとめ
本記事では、クラウドセキュリティサービスを提供するLacework社について紹介してきました。
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特に、Wiz社は同じクラウドセキュリティサービスを提供するイスラエル発のスタートアップです。Wiz社は、Googleが3兆円で買収を検討している今大注目の企業です。併せてご覧ください。