最終更新日 25/02/03
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【Boom Supersonic】超音速旅客機の新時代が幕開け!XB-1が初の超音速飛行に成功

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回紹介する「Boom Supersonic」(ブーム・スーパーソニック社)は、次世代の超音速旅客機を開発する航空機メーカーです。同社の目標は、マッハ1.7で飛行できる商用超音速旅客機「Overture」を開発し、安全性と持続可能性を両立させた航空旅行を実現すること。これにより、従来の飛行時間を半分以下に短縮し、より速く目的地へ到達できる未来を目指しています。

Reutersによると、2025年1月、Boom Supersonicの技術実証機「XB-1」が超音速飛行に成功し、最高速度はマッハ1.1に到達しました。これは、商用超音速旅客機「Overture」の実現に向けた大きな前進といえるでしょう。

本記事では、Boom Supersonicの事業内容や創業の経緯、市場規模について詳しく解説します。

事業内容:超音速旅客機「Overture」の開発・販売

Boom Supersonicは、主に航空会社や政府機関向けに超音速旅客機を販売するビジネスモデルを展開しています。主力機種である「Overture」の価格は約2億ドルにのぼるそう。

すでにアメリカン航空やユナイテッド航空、日本航空などの大手航空会社と購入契約を結んでおり、米空軍ともパートナーシップを締結済みです。

Overture(オーバーチュア):マッハ1.7で飛行する次世代旅客機

(出典:https://boomsupersonic.com/overture)

「Overture」は、マッハ1.7(時速約2100km)で飛行可能な次世代の超音速旅客機です。全長約60メートルで、最大80名の乗客を収容できるほか、わずか約3時間30分で大西洋を横断します。

特筆すべきは、100%持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)*での飛行が可能な点です。これにより、環境負荷を軽減しながら、従来の旅客機よりも短時間で目的地へ到達できます。

さらに、以下の技術革新により、従来の超音速機よりも効率的な運航を実現しています。

  • 燃費の向上:空気抵抗を抑える流線型の設計を採用
  • 騒音の低減:エンジン配置の工夫により、超音速飛行時の騒音を最小限に抑制
  • 既存インフラとの互換性:主要な国際空港の滑走路やゲートでの運用が可能

商業運航は2029年の開始を目指しており、2030年には約600のルートで運航予定。すでにアメリカン航空、ユナイテッド航空、日本航空から合計130機の注文を獲得しています。

*持続可能な航空燃料(SAF)について詳しくは、こちらの記事をご覧ください

XB-1:Overtureの試作機

(出典:https://boomsupersonic.com/xb-1)

「XB-1」は、Overtureの技術検証を目的とした試作機(スケールモデル)です。実際のOvertureよりも小型(約3分の1スケール)ですが、飛行データを収集し、超音速旅客機の実用化に向けた開発を加速させています。

Reutersによると、2025年1月28日、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠上空で初の超音速飛行を達成。高度約35000フィート(約10700メートル)でマッハ1.1(時速約1360km)に到達し、Boom Supersonicが開発した航空機として初めて音速の壁を突破しました。

この成功は、以下の点で重要な意味を持ちます。

  • 商用超音速旅客機開発のマイルストーン
    • XB-1の成功により、「Overture」の実用化に向けた技術検証が順調に進んでいることが証明されました
  • 超音速旅客機復活への道
    • 2003年のコンコルド退役以来、超音速旅客機の実用化を目指したプロジェクトの中で最も具体的な成果を上げた企業となりました
  • 歴史的な場所での達成
    • 1947年に伝説のパイロット「チャック・イェーガー」が世界初の超音速飛行を成功させたモハーヴェ砂漠上空で行われました

Overture Superfactory:世界初の超音速旅客機工場

2024年6月、Boom Supersonicは米国初の超音速旅客機製造工場「Overture Superfactory」を完成させました。この工場では、年間最大66機のOvertureを製造する計画です。

工場内には、航空会社向けのデリバリーセンターも併設されており、今後ユナイテッド航空やアメリカン航空、日本航空などがここで納入を受けるとしています。

創業の経緯:Amazon出身エンジニアが超音速旅客機に挑戦

(出典:https://theobjectivestandard.com/2020/10/reinventing-flight-an-interview-with-blake-scholl/)

Boom Supersonicの創業者でありCEOを務めるブレイク・ショール氏は、幼少期から航空機に興味を持ち、特に超音速飛行に魅了されていました。彼はかつて運航していたコンコルド(英仏合同で開発された超音速旅客機)の失敗に着目し、「より速く、安全で、環境に優しい超音速旅客機を実現できるはずだ」と考えたのです。

ショール氏はAmazonでソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせた後、複数の企業で製品開発を担当。その後、2008年にパイロットライセンスを取得し、モバイル決済企業「Kima Labs」を共同創業。事業を成功させた後に売却し、その資金をもとに2014年、Boom Supersonicを立ち上げました。

将来展望:2030年までにOvertureの初飛行と商業運航を実現

(出典:https://marketrealist.com/ipos/does-boom-supersonic-have-stock/)

Boom Supersonicは、2030年までにOvertureの初飛行を実現し、商業運航を開始することを目指しています。現在は、超音速飛行を一般の人々が手軽に利用できるものにするため、技術の進化とコスト削減に注力しているそうです。

この計画が成功すれば、パリ-ニューヨーク間は約4時間、ロンドン-マイアミ間は5時間未満と、従来のフライト時間を半分に短縮できます。超音速旅客機の復活が、国際移動の概念を大きく変えるかもしれません。

さらに、Boom Supersonicは、より高速な旅客機の開発や、商業用途以外への超音速技術の応用も視野に入れており、世界規模での移動時間の短縮を目指しています。これにより、より迅速かつ効率的な交通手段の提供が可能になるでしょう。

しかし、商業運航の実現に向けては、以下のような課題も残されています。

  • 騒音規制(ソニックブーム)の克服
    • 現在、超音速飛行は海上に限定されていますが、NASAをはじめとする研究機関と協力し、騒音を低減する技術開発が進められています
  • 開発資金の確保
    • 超音速旅客機の開発には巨額の資金が必要です。過去にはAerion Supersonicのように資金不足で撤退した企業もあるため、Boom Supersonicも持続的な資金調達が求められています

資金調達:総額7億ドルの資金を調達

Boom Supersonicは、これまでに総額7億ドル超の資金調達を行っています。

  • 2019年1月:シリーズBにてY Combinator ContinuityやSV Angelなどから1億ドルを調達
  • 2020年:追加で5000万ドルを調達し、評価額10億ドルを突破
  • 2023年10月:サウジアラビアのネオム・インベストメント・ファンド(NIF)から出資

特に2023年のNIFとの提携により、中東市場への進出が加速すると見られています。湾湾岸諸国ではビジネス・トラベル市場が拡大しており、超音速旅客機の需要が高まると予測されているため、Boom Supersonicにとって戦略的に重要な市場となるでしょう。

市場規模:航空会社の世界市場は2026年に7000億ドル以上へ

航空市場は今後大きく成長すると予測されています。Boom Supersonicの調査では、2020年に3326億ドルだった市場規模が、2026年には7440億ドルに拡大すると見込まれています。これは、国際ビジネスの活性化や新興国の航空需要増加によるものです。

また、ボーイングの2022年の予測によると、2041年までに航空会社は4万1000機以上の新型機を必要とし、市場価値は7兆2000億ドルに達する見通しです。さらに、航空輸送の需要を示す指標であるRPK(有償旅客キロ)は、2023年の8.4兆キロから2041年には20.1兆キロへ倍増すると予測されています。

こうした市場の拡大により、長距離移動を短縮する超音速旅客機への関心も高まる可能性があります。Boom Supersonicは、特にプレミアム旅客層やビジネス用途に向けた超音速フライトの需要を開拓し、2030年までに約600のルートでの運航を目指す予定です。

会社概要

  • 会社名:Boom Supersonic
  • 設立:2014年
  • 拠点:アメリカ合衆国 コロラド州 デンバー
  • 事業内容:超音速航空機の開発・製造
  • 創業者:Blake Scholl (CEO)
  • 公式HP:https://boomsupersonic.com/

まとめ

Boom Supersonicは、2025年1月に技術実証機「XB-1」で超音速飛行に成功し、商用超音速旅客機の実用化に向けた大きな前進を遂げました。

2030年までに「Overture」の初飛行と商業運航を実現することを目指し、すでに130機の注文を獲得。さらに、資金調達を進めながら生産体制を整備しています。

超音速旅客機が復活すれば、長距離フライトが劇的に短縮され、国際移動の新たなスタンダードが誕生するかもしれません。今後のBoom Supersonicの動向に注目です。

また、New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

Boom Supersonicのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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