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「たったひとつの地球」と「たったひとつの人生」を掛け合わせた、完全オーダーメイドの旅──。そんな特別な体験を提供するのが、2012年にパナマで創業した「旅行会社オンリーワン」(以下、オンリーワン)です。
中南米やアフリカなど、個人では訪れるのが難しいエリアを中心に、ツアーの企画から現地運営までを自社で完結。コストを抑えながら、旅の細部までこだわったオリジナルプランを提供しています。
2025年1月には1億円の資金調達を実施し、新たに「秘境ツアー」や「ホテルマネジメント事業」も展開予定。コロナ禍を経て回復基調にある海外旅行市場において、同社が描く“Life Changing”な旅の未来とは?
本記事では、オンリーワンの事業内容や成長戦略、旅行市場の動向について詳しく解説します。
事業内容:唯一無二の旅を用意する完全オーダーメイドの旅行サービス
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オンリーワンは、「たったひとつの地球の素晴らしさ」と「たったひとつのあなたの人生」を掛け合わせた、唯一無二の旅行体験を提供する旅行会社です。2012年にパナマで創業し、2018年にはアフリカへと進出。現在は、中南米・アフリカ全域を対象に、完全オーダーメイドのツアーを展開しています。
一般的な旅行業界では、ツアーの企画・販売・現地サービス運営が異なる企業によって分担され、手数料が積み重なるケースが多いですが、オンリーワンはこれらのプロセスをすべて自社で完結。これによりコストを抑えつつ、顧客一人ひとりの希望に細かく対応できる体制を築いています。
特に中南米エリアでは、日本人経営者のもと、現地に長年暮らし旅行業に精通した日本人スタッフがツアーを企画・運営。日本語による24時間対応の緊急サポートを提供し、安心して旅を楽しめる環境を整えています。
また、メキシコからブラジルまで中南米各地に駐在するスタッフが、ソーシャルメディアを通じて最新の旅行情報を発信。現地ならではのリアルな視点をもとに、観光地の魅力や文化を紹介しています。
創業者の山田氏は、世界中を旅する中で「人生を変える(Life-changing)」体験の価値を実感し、その想いを事業の根幹に据えています。物質的な贅沢ではなく、旅を通じて得られる感動や気づきを重視する「体験型ラグジュアリー」を追求し、顧客にとって一生の思い出となる旅を提供し続けているのが特徴です。
資金調達:2025年1月に総額1億円を調達
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2025年1月31日、オンリーワンは第三者割当増資により、総額1億円の資金調達を実施したと発表しました。今回調達した資金は、さらなる事業拡大と体験価値最大化のために活用し、より多くの人に”Life Changingな旅”を届けることを目指すとしています。
資金調達の主な目的
オンリーワンは今回調達した資金を、以下の4つの事業強化に充てる方針です。
- 「募集型」秘境ツアーの企画・販売
- ホテルマネジメント事業の開始
- グローバル顧客の新規開拓
- 採用強化
①「募集型」秘境ツアーの企画・販売
これまで提供してきたオーダーメイド型ツアーのノウハウを活かし、新たに「募集型」のスモールグループツアーを開始する予定です。これにより、個人では訪れるのが難しい秘境への旅行や特別な体験を、より多くの人に提供できるようになります。
同社は2025年末までに、30カ国で計100本のスモールグループツアーを販売することを目標としています。また、この事業の拡大に向け、2024年6月には第一種旅行業の登録を完了しました。
②ホテルマネジメント事業の開始
ツアーの提供に加え、新たにホテルの運営管理事業を開始するとしています。具体的には、ケニアのサファリロッジやビーチリゾート、広大な大地を一望できる邸宅などの宿泊施設を管理する予定です。また、他のホテルとも提携しながら、「体験型ラグジュアリー」という新たな宿泊体験の提供を拡大していくと明らかにしました。
③グローバル顧客の新規開拓
東南アジアや台湾、インドなどに拠点を設立し、現地からの旅行者を増やす取り組みを進めるとしています。また、英語圏向けの新規顧客獲得のため、ホームページやブランドイメージを刷新し、プロモーションを強化するとのこと。
④採用強化
事業拡大に伴い、特に東京オフィスを中心に人材採用を強化するとしています。優秀な人材を確保し、さらなる成長を加速させる方針です。
市場トレンド:海外旅行は回復基調もコロナ前には届かず
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2024年の日本人の海外旅行市場は回復傾向にありますが、新型コロナ前の水準には達していません。JTBの推計によると、2024年の海外旅行者数は1,450万人と前年より大幅に増加するものの、2019年比では72.2%にとどまる見込みです。主な要因として、円安や海外の物価高、国際情勢の不安定さが挙げられます。
一方で、一人当たりの平均旅行消費額は342,100円と過去最高水準になる見通しです。旅行費用の負担が大きいため、旅行先の選択肢はハワイやヨーロッパといった遠距離地域と、韓国や台湾などの近距離地域に二極化する傾向がみられます。実際に、JTBの調査でも人気の旅行先としてハワイ、ヨーロッパ、オーストラリア・ニュージーランド、台湾、米国本土、韓国、グアム・サイパンが挙げられています。
このように、海外旅行の意向は高まりつつありますが、経済的な制約が大きく、新型コロナ前の水準に戻るのは2025年以降という予測です。旅行業界にとっては、コストを抑えた旅行プランの提供や、割引施策の導入が求められるでしょう。
創業者プロフィール:山田 陽介
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山田陽介氏は、幼少期から多様な経験を積んできました。父親は元全日本代表のサッカー選手であり、その影響もあってサッカーに打ち込みました。一方、母親は幼い頃からさまざまな習い事に挑戦させましたが、最終的に続いたのはサッカーだけでした。
高校時代に世界史や写真に興味を持ち、「世界を見てみたい」という思いが芽生えます。その思いを実現するため、アメリカの大学に進学。報道写真家になれば世界を旅しながら働けると考え、国際関係を専攻しました。
在学中に国際開発に関心を持ち、積極的に発展途上国を訪問。異文化や社会の矛盾を肌で感じ、国際協力の道を志しました。しかし、自ら何かを生み出すことに魅力を感じるようになり、大学時代のインターンシップで訪れたエクアドルに再び渡航。現地でホステルとレストランを経営しながら、エクアドル外務省でも働きました。
その後、4年間続けたホステルとレストランの経営を譲り、日本へ帰国。エクアドル大使館の商務部で貿易・観光促進に携わりました。しかし、南米での経験が忘れられず、その魅力をより多くの人と共有したいと考えます。
そこで、エクアドルの旅行会社「スールトレック・ジャパン」を設立。大量販売の概念にとらわれず、一つ一つの旅行を丁寧に提供することを理念としました。そして、中南米と日本をつなぐ架け橋となるべく「オンリーワン・グループ」を創業しました。
企業概要
<パナマ本社>
- 企業名:Only One Panama Corp.
- 代表者:山田陽介 (Yosuke Yamada)
- 設立:2012年12月6日
- 所在地: 8H Sortis Business Tower, Calle 57 Este, Obarrio, Ciudad de Panama, Panama
<日本法人>
- 企業名:オンリーワン株式会社(Only One Corp.)
- 代表者:山田陽介 (Yosuke Yamada)
- 設立:2012年12月3日
- 所在地: 〒135-0016 東京都江東区東陽2-3-5-509
- お問い合わせ先: sales@onlyone.travel
- 公式HP:
まとめ
本記事では、一人ひとりに最適な旅行を手配するオンリーワン株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
オンリーワン株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。