最終更新日 25/02/18
国内スタートアップ

次世代ARグラスの最前線!Cellidが切り開くデジタルと現実の融合

AR製造
Share this post
(引用:Cellid公式HP)

AR(拡張現実)技術の進化が、私たちの働き方や生活を大きく変えようとしています。そんな中、革新的なARグラスと空間認識技術で注目を集めるのが「Cellid株式会社」(以下、Cellid)です。

通常のメガネのように軽量でスタイリッシュなデザインを保ちながら、フルカラー映像を映し出す次世代ARグラスを開発。さらに、リアルタイムで環境を認識する空間認識エンジンを提供し、建設や製造業など多様な分野での活用が進められています。

その実績は国内外で高く評価されており、「Forbes Asia 100 To Watch 2024」にも選出。また、世界最大のディスプレイ学会であるThe Society for Information Display(SID)において、「2024 Display Component of the Year Award」を受賞するなど、技術力の高さが認められています。

2025年2月に総額20億円の資金調達を実施するなど、注目を集めるCellidについて、その事業内容や市場動向、AR技術がもたらす未来について詳しく解説します。

事業内容:ARグラスと空間認識技術の開発

(引用:Cellid公式HP)

Cellidは、ARグラス向けのディスプレイ技術と空間認識エンジンの開発に特化したスタートアップで、特に次世代ARグラスと高精度な空間認識技術の両面から、この分野をリードしています。

Cellidの最大の特徴は、通常のメガネと同じデザインと軽さを保ちながら、フルカラー映像を映し出せるARグラスを開発している点です。このARグラスは、世界的なディスプレイ学会「The Society for Information Display(SID)」でも高く評価されるなど、業界内で注目を集めています。

また、CellidはARグラスのハードウェアだけでなく、リアルタイムで周囲の環境を認識できる空間認識エンジンも開発。建設現場やインフラ施設の3Dモデル化など、産業向けの活用も進められています。

事業①:次世代ARグラスの開発

Cellidの最大の特徴は、業界内でも最大級の広視野角(FOV:Field of View、ディスプレイが映像を映し出せる範囲)を誇る「光学シースルーディスプレイ方式のウェイブガイド(DOE方式)」を採用している点です。

ウェイブガイドとは、光を内部で反射させながら特定の方向に導く技術であり、ARグラスではディスプレイの映像を目の前の透明なレンズに投影する役割を担います。

Cellidが開発する「光学シースルーディスプレイ方式のウェイブガイド(DOE方式)」(引用:Cellid公式HP)

従来のARデバイスは、小型ディスプレイを直接目の前に配置する方式が主流でしたが、視界が狭くなるという課題がありました。しかし、ウェイブガイドであれば、視界を遮ることなく、通常のメガネと同じような感覚でAR映像を表示できます。

特に、Cellidはプラスチック製のウェイブガイドを用いることで、従来のガラス製よりも軽量かつ耐久性に優れたディスプレイを開発しました。この技術は、世界的なディスプレイ学会「The Society for Information Display(SID)」の「2024 Display Component of the Year Award」を受賞し、業界から高い評価を得ています。

光学シースルーディスプレイ方式を採用したメガネ型ARグラスのリファレンスデザイン(引用:Cellid公式HP)

また、2023年11月には、光学シースルーディスプレイ方式を採用したメガネ型ARグラスのリファレンスデザイン(検証用モデル)を発表しました。

このモデルには、8MPの高解像度カメラ、84度の広視野角、3軸IMUセンサー(IMU:Inertial Measurement Unit、デバイスの傾きや動きを検知するセンサー)が搭載されており、周囲の環境を正確に認識できます。

また、AndroidやWindowsのデバイスと接続でき、専用のソフトウェア開発キット(SDK:Software Development Kit、開発者が特定の機能を簡単に実装できるツール群)を活用すれば、使いやすいユーザーインターフェースの構築が可能です。

事業②:空間認識エンジンの提供

Cellidが開発する空間認識エンジン(引用:Cellid公式HP)

Cellidのもう1つの強みは、リアルタイムで周囲の環境を認識する空間認識エンジンの開発です。特に、SLAM技術(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と地図作成)を活用した「Cellid SLAM」により、ARデバイスが現実空間の物体や位置を正確に把握し、より没入感のあるAR体験を提供します。

この技術は、建設業界や製造業向けにも応用可能で、動画を撮影・アップロードするだけで3Dモデルを自動作成することが可能です。これにより、施工管理の効率化や現場の記録作業の省力化を実現できます。

具体的には、360度画像と3Dモデルを統合することで、現場の情報をデジタル空間に保存し、遠隔での管理や分析が可能です。また、写真をアップロードするだけで撮影位置を自動で判定し、3D上に配置することで、写真管理の手間を大幅に削減できます。

さらに、Cellidの空間認識技術はAPIとして提供されており、企業の既存システムに組み込むことで、よりスムーズな業務のデジタル化を実現できるでしょう。

ビジョン:現実世界とデジタル世界の融合へ

Cellidのビジネスモデル(引用:MoguraVR)

Cellidは、「Blending the Physical and Digital Worlds(現実世界とデジタル世界の融合)」を目指しています。ARディスプレイのハードウェアと空間認識ソフトウェアを組み合わせることで、情報をより直感的に扱えるデバイスを開発し、日常生活やビジネスの現場に革新をもたらします。

現在、国内外の大手企業と共同開発が進められており、AR技術の普及と量産化に向けた取り組みを加速中です。Cellidは、ファブレス企業(自社で製造設備を持たない企業)として、設計技術と製造プロセスを国内外の大手パートナーと連携しながら展開し、次世代ウェイブガイドの生産エコシステムを構築しています。

今後、AR技術がさらに普及する中で、Cellidの技術はさまざまな業界に変革をもたらすことが期待されています。

資金調達:2025年2月に総額20億円を調達

(引用:Cellid公式HP)

AR(拡張現実)技術を手がけるCellidは、2025年2月6日、総額20億円の資金調達を実施しました。 今回の資金調達では、日本政策投資銀行をリード・インベスターとし、以下の企業が出資しています

<本資金調達に参加した企業>

  • 株式会社日本政策投資銀行(リード・インベスター)
  • モアマネジメント株式会社
  • 15th Rock株式会社
  • 株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • 京セラ株式会社とグローバル・ブレイン株式会社が共同設立したCVCファンド

この調達により、Cellidの累計資金調達額は約52億円となりました。

調達資金は、ARグラスの主要部品(ウェイブガイドやマイクロプロジェクター)の開発強化や、ユースケース開発の推進、量産体制の整備に活用される予定です。これにより、Cellidは製品開発を加速させ、市場投入をさらに前進させる見込みです。

市場規模:AR/VRスマートグラス市場は2036年に510億ドル規模へ

(引用:SDKI)

AR(拡張現実)・VR(仮想現実)スマートグラス市場は、今後急速に拡大すると予測されています。調査企業SDKIによると、2023年の市場規模は153億米ドルでしたが、2036年までに510億米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)は約12.5%になる見込みです。この成長の背景には、デジタルトランスフォーメーションの進展や、業務効率化を求める企業ニーズの高まりがあります。

特に、製造業や物流、医療、教育などの分野では、リアルタイムデータの活用やハンズフリー操作の需要が増加。これに対応する形で、AR/VR技術の導入が進み、業務の生産性向上に寄与している状況です。

<業界別の活用事例>

  • 製造業・物流:作業員がスマートグラスを装着し、リアルタイムで作業マニュアルや部品情報を表示
  • 医療:外科医が手術中に患者のデータや3Dスキャンを確認しながら執刀
  • 教育:学生が歴史的建造物や人体の構造をARで体験しながら学習

一方、ゲーム業界でもAR/VR技術の活用が拡大しています。実際に没入感のある体験を求める消費者が増えており、2027年までにAR/VRゲームの市場規模が532億米ドルに達すると予測されています。こうしたトレンドを考慮すると、企業の業務改革やエンターテインメント分野において、AR/VRスマートグラスが果たす役割はますます大きくなるでしょう。

こうした動きは、一般のビジネスマンにも大きな影響を及ぼします。たとえば、営業やマーケティングでは、AR技術を活用したインタラクティブなプレゼンテーションが広がり、顧客のエンゲージメント向上につながっています。また、リモートワークの普及により、VRを活用した仮想オフィスや会議システムの導入が進み、物理的な距離を超えたビジネス環境が実現しつつある状況です。

今後のビジネス戦略を考えるうえで、AR/VR技術がどのような変化をもたらすのかを理解し、自社の業務や市場にどう活用できるかを検討することが重要になるでしょう。

企業概要

  • 企業名:Cellid株式会社
  • 代表者:代表取締役CEO 白神 賢
  • 設立:2016/10/27
  • 所在地:〒106-0032 東京都港区六本木4-8-6 パシフィックキャピタルプラザ5F
  • 事業内容:空間認識エンジンおよびARグラス用ディスプレイの開発・販売
  • 公式HP:https://cellid.com/

まとめ

本記事では、次世代のARグラスを開発しているCellid株式会社について紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

Cellid株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました