今回紹介するスタートアップ「匠技研工業株式会社」(以下、匠技研工業)は、製造業、特に中小部品製造企業が抱える課題を解決するために誕生した注目企業です。同社は、独自のクラウドシステム「匠フォース」を通じて、工場経営の効率化や技術承継の促進、適正な取引価格の実現を支援しています。
これまで製造業のDX化は一部の大企業を中心に進んできましたが、匠技研工業は中小企業を主なターゲットに据えることで、より広範な産業全体の変革を目指しているのが大きな特徴です。本記事では、同社が提供する「匠フォース」の特徴や魅力、そして将来展望について詳しく解説します。
事業内容:工場経営をDX化する「匠フォース」
匠技研工業は、中小部品製造企業に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を開発・提供しています。
「匠フォース」は、最先端のAI技術を活用したオールインワンのクラウドシステムです。図面管理から原価計算まで幅広い業務に対応できるだけでなく、各社の独自要件に応じた原価計算にも柔軟に対応可能なオーダーメイド設計が特徴です。このシステムを通じて、見積業務を起点とした工場経営全体の効率化と改善を実現します。
「匠フォース」の主な魅力と機能
「匠フォース」を導入することで、次の3つの効果が期待できます。
- 生産性向上と業務効率化
- 技術承継の実現
- 適正な見積もりによる取引の実現
1. 生産性向上と業務効率化
「匠フォース」は、最先端のAI技術を活用し、過去の類似案件を瞬時に検索できる機能を備えています。これにより、従来の手作業では時間がかかっていた業務を効率化できます。また、見積もり計算や帳票出力を自動化することで、業務負担を軽減しながら生産性を大幅に高めることが可能です。
2. 技術承継の円滑化
匠技研工業が提供するコンサルティングサービスを活用することで、見積もりノウハウの標準化と次世代へのスムーズな技術承継を実現できます。これにより、属人的な業務依存を軽減し、業務の精度や効率を均一化することが期待されるでしょう。
3.適正な見積もりによる取引の実現
「匠フォース」では、過去の案件や類似案件のデータを活用し、適正な価格での見積もり作成をサポートします。この仕組みによって、根拠のある価格提示が可能となり、取引の透明性と信頼性が向上するでしょう。また、データの蓄積を通じて、後の振り返りや改善にも役立つ仕組みが構築されます。
日本の製造業が抱える課題と匠技研工業の使命
日本の製造業は、人手不足や技術承継の困難といった課題に長年直面してきました。特に中小サプライヤー企業では、テクノロジーの普及が進まず、現場での努力が十分に報われていない現状があります。
そこで、匠技研工業は「フェアで持続可能な、誇れるモノづくりを。」をミッションに掲げ、次世代の工場経営DXを推進しています。同社はこれまで、全国の中小サプライヤー企業から大手製造業に至るまで、さまざまな業種・業態で「匠フォース」を導入してきました。
資金調達:2024年12月にシリーズAラウンドで5億円を調達
匠技研工業は2024年12月17日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資により総額5億円の資金調達を実施したと発表しました。この調達により、同社の累計調達額は7.7億円に達しています。
今回の引受先には、ファーストライト・キャピタル、Angel Bridge、アニマルスピリッツ、ジェネシア・ベンチャーズ、静岡キャピタル、そして個人投資家が名を連ねました。
調達資金の用途と今後の展望
今回調達した資金は、次世代製品である「匠フォースAI」の開発に本格的に取り組むために活用されます。この「匠フォースAI」は、これまで提供してきた製造業向けシステム(Vertical SaaS)をさらに進化させ、AI技術を組み込むことで「製造業特化型AI(Vertical AI)」としての実現を目指しているとのこと。
また、事業のさらなる成長に向けて、事業部門、製品開発部門、コーポレート部門において、マネージャーやメンバーの採用を強化する予定です。これにより、組織体制を一層強化し、製造業のDXを推進するリーディングカンパニーとして、さらなる飛躍を図るとしています。
市場規模:製造業の売上高は25年間およそ400兆円で横ばい
経済産業省のデータによれば、日本の製造業の売上高は過去25年間にわたり約400兆円で推移しています。目覚ましい成長は見られないものの、2021年度にはGDPに占める割合が20.6%に達し、112兆円という規模を誇っています。
これらの数字から、日本経済において製造業が基幹産業として重要な位置を占めていることがわかるでしょう。
海外売上比率が高い日本の製造業、収益性には課題
日本の主要メーカーの多くは、海外売上比率が50%を超えており、積極的にグローバル市場へ展開を進めています。しかしながら、海外市場での収益性には大きなばらつきが見られ、利益を安定して確保できる企業とそうでない企業の間で格差が広がっているのが実態です。
こうした収益性の課題の背景には、海外展開の拡大によって経営の複雑性が増している点が挙げられます。多様な国や地域での事業を運営する中、効率的な経営管理体制の整備が十分でない企業では、収益性の低下が懸念されています。
課題解決のカギは製造業のDX化
こうした状況を打破し、収益性を向上させるための重要な施策が、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)です。DXを通じて業務プロセスを効率化し、データを活用した迅速かつ的確な経営判断を可能にすることで、経営の複雑性を緩和できます。これにより、海外市場においても持続可能な収益基盤の構築が期待されます。
企業概要
- 企業名:匠技研工業株式会社 / Takumi Engineering,Inc.
- 代表者:代表取締役社長 前田 将太
- 設立:2020年2月
- 本社所在地: 東京都文京区本郷3-43-16 コア本郷ビル8階A室
- 公式HP:https://takumi-giken.co.jp/
まとめ
本記事では、中小部品製造企業に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を開発する匠技研工業株式会社について紹介しました。
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