最終更新日 24/11/07
国内スタートアップ

【QunaSys】量子コンピュータの社会実装を実現する注目の東大発スタートアップ

IT製造
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(引用:QunaSys公式HP)

今回紹介するのは、量子コンピュータの社会実装を目指す東大発スタートアップ「株式会社QunaSys」(以下、QunaSys)です。

同社は量子コンピュータを上手に活用するアルゴリズム研究とそれをユーザーが簡単に使えるようなソフトウェア開発を両輪で回し、量子コンピュータが社会で活用されることを目指しています。

2024年11月にシリーズB2ラウンドで17億円を資金調達するなど、注目を集めるQunaSysについて、その事業内容や資金調達の動向について紹介します。

事業内容:共同研究やプロダクト開発など複数の事業を展開

QunaSysが提供するサービス一覧(引用:QunaSys公式HP)

QunaSysは高いアルゴリズム開発力とソフトウェア実装力を生かして、共同研究やコンサルティング、プロダクト開発など、さまざまなサービスを提供しています。

たとえば、量子コンピュータのさらなる研究のために、量子アルゴリズムを用いて量子化学計算を行うクラウドサービスQamuyや、量子計算を簡単に実行するウェブアプリケーションQURI、量子コンピュータの活用に取り組むための企業コミュニティQPARCを展開しています。

また、QunaSysは、多くの企業や研究機関と協働し、量子コンピュータの産業応用を推進。パートナーとの共同研究を通じて、企業が競争優位性を築けるような新技術の構築を模索し、たとえば量子化学計算手法「QSCI」の開発などを実現してきました。

このように、QunaSysは今まで裏舞台で社会を支えていた量子物理学を表舞台に引き出し、量子コンピュータの「社会実装」に貢献しています。

QunaSysの強み:アルゴリズムまで開発できるケイパビリティ

化学領域でアルゴリズムまで踏み込んで開発できるケイパビリティがQunaSysの強み(引用:QunaSys公式HP)

QunaSysの強みは、量子コンピュータを活用するためのアルゴリズム開発まで取り組める能力にあります。

実は量子コンピュータが進化し、ハードウェアが整備されても、すべての問題が即座に解決できるわけではありません。企業の課題解決に量子コンピュータを効果的に活用するためには、以下のプロセスを繰り返すことが重要です。特に、量子コンピュータの性能を最大限に引き出すためには、特定の課題に適した専用のアルゴリズムやソフトウェアが欠かせません。

  • 量子コンピュータで取り組むべき課題の選定
  • 既存のアルゴリズムによる性能評価(ベンチマーク)
  • 必要な性能が得られない場合の課題特定
  • ボトルネックの解消に向けた新たなアルゴリズムの開発
量子コンピュータの実用化においてQunaSysが重視している4つのプロセス(引用:QunaSys公式HP)

また、各産業で用いられるさまざまなアプリケーションは、量子アルゴリズムを用いて量子コンピュータの操作を抽象化した「量子回路」に変換できます。この量子回路は、適切に変換(コンパイル)することで、どのゲート型量子コンピュータ(万能量子コンピュータ)のハードウェアでも実行可能です。

そこで、QunaSysは量子アルゴリズムと量子コンパイラの開発を推進することで、将来、実用的な量子コンピュータが登場した際に迅速に活用できる体制を整えています。このように「ハードウェアの発展を見据えてアルゴリズム開発を着実に進められる点」が、QunaSysの大きな強みです。

アルゴリズム開発を進めておくことで、どんなハードウェアでも活用できる(引用:QunaSys公式HP)

資金調達:2024年11月にシリーズB2で総額17億円を調達

2024年11月にQunaSysは総額17億円の資金調達を実施したと発表(引用:QunaSys公式HP)

QunaSysは2024年11月1日に、未来創生3号ファンドをリードインベスターとする第三者割当増資により、シリーズB2ラウンドで総額17億円の資金調達を行ったと発表しました。

さらに、三井住友銀行と5億円のコミットメントライン契約を結び、KDDI株式会社および京セラ株式会社と資本業務提携に向けて合意したことも公表しています。

この資金は、量子産業が「誤り耐性量子コンピュータ」の実現を目指して重要な変革期を迎えている中、さらなる飛躍のためにQunaSysの事業拡大に役立てられる予定です。

具体的には、国内外での事業展開を進めるだけでなく、エンドユーザー企業やパートナー企業と協力して、産業における課題解決に向けた応用分野の開拓を目指していくとしています。また、実用化に向けた技術開発や事業開発、そして量子コンピュータの性能を最大限に引き出すための基盤技術の開発にも注力する計画です。

<資金調達の概要>

  • 調達方法:第三者割当増資
  • 資金調達額:15億円
  • 資金用途:国内外への事業推進、基盤技術開発
  • 引受先
    • スパークス・アセット・マネジメント株式会社(未来創生3号ファンド)
    • 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(OUVC2号ファンド)
    • 京セラ株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(KVIF-Ⅰ)
    • KDDI株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(KDDI Open Innovation Fund 3号)
    • JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社(VGF1号)
    • 日本ゼオン株式会社
    • 富士通ベンチャーズ株式会社(合同会社富士通ベンチャーズファンド)
    • 三菱電機株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(ME イノベーションファンド)

市場規模:量子コンピューティングは2032年に126億ドルまで成長

(引用:FORTUNE BUSINESS INSIGHTS)

FORTUNE BUSINESS INSIGHTSによると、世界の量子コンピューティング市場は2023年に8億8540万米ドルの規模と評価されています。

そして、2024年には11億6010万米ドルに達し、2032年までに126億2070万米ドルまで成長する見込みです。この成長は、2024年から2032年の間に年平均成長率(CAGR)34.8%という非常に高い数値を示しています。

経済への影響:世界全体で2040年までに最大8500億ドルの経済価値を創出

(引用:BCG | What Happens When ‘If’ Turns to ‘When’ in Quantum Computing?)

BCGは2024年7月18日、「The Long-Term Forecast for Quantum Computing Still Looks Bright」というレポートを発表しました。このレポートにおいて、同社は量子コンピューティングが2040年までに、世界全体で4500億〜8500億ドルの経済価値を生み出すという2021年の予測を維持しています。

また、BCGは量子コンピューティングへの投資が堅調に伸びていくと考えています。実際、2023年には他の技術投資が全体で50%減少する中で、量子コンピューティング分野はベンチャーキャピタルから12億ドルの資金を集め、投資家から注目されました。

さらに、各国政府も量子コンピューティングの潜在力に注目し、国家安全保障や経済成長の重要な柱と見込んで多額の投資を行っています。公共部門からの支援は今後3〜5年間で100億ドルを超えると予測され、これにより量子コンピューティング分野の成長が加速する見通しです。

企業概要

  • 企業名:株式会社QunaSys (QunaSys Inc.)
  • 代表者:CEO 楊 天任
  • 設立:2018年2月
  • 所在地: 〒113-0001 文京区白山1-13-7 アクア白山ビル9F
  • 公式HP:https://qunasys.com/

まとめ

本記事では、量子コンピュータの社会実装を目指す東大発スタートアップ「株式会社QunaSys」について紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

株式会社QunaSysのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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