近年、植物由来の代替肉等をはじめ、代替シーフードなどが注目を集めています。しかし、それら代替食品の課題は、肉本来の味と風味を完全に再現しきれない点にありました。特に「クリーミーさ」が求められる乳製品では、従来の代替品ではその滑らかな食感が再現しにくく、消費者の期待を完全に満たせていない状況でした。
そこで、スイスのスタートアップであるCultivated Biosciences(カルティベイト・バイオサイエンシズ)を紹介します。 同社は、乳製品と遜色のないクリーミーな口当たりを実現した、油脂性酵母由来の「酵母クリーム」を開発しています。
本記事では、同社の酵母クリームの特徴や最新の資金調達情報、創業の経緯等について詳しく説明しています。
事業内容:クリーミーさを再現できる酵母開発
Cultivated Biosciencesの主な事業内容は、乳製品と遜色のないクリーミーな口当たりを実現した、油脂性酵母由来の「酵母クリーム」を開発です。
同社が開発する酵母クリームの最大の特徴は、乳製品本来の「クリーミーさ」を再現している点にあります。そして、その口当たりの再現を可能にするのが、独自の「バイオマス発酵技術」です。
同社の「バイオマス発酵技術」は、非遺伝子組み換えをせずとも、タンパク質が豊富となる発酵方法を有しています。そのため、添加物いらずで味の質も維持できるクリームが生産できています。
このようにして、生産された高品質のクリームから以下の製品の提供を想定しています。
具体的な製品
- アイスクリーム
- ミルク
- マヨネーズ
- ヨーグルト
- クリームチーズ
- 医療食
- プロテイン
- デザート
同社は現在、米国食品医薬品局(FDA)の承認を待っており、2025年には米国市場、2026年には欧州市場への参入を計画しています。
創業の経緯
Cultivated Biosciencesは、2021年にTomas Turner(トーマス・ターナー)、Dimitri Zogg(ディミトリ・ゾグ)の2人よって創業されました。トーマスとディミトリは、チーズの生産で有名なあるスイスの山をハイキングしている時に出会ったそう。2人とも起業の意思があったことから、乳製品を使わない代替クリームの開発、製造を行う同社を立ち上げたと言います。
資金調達:プレシードランドにて650万ドルを調達
Cultivated Biosciencesは、2022年、2023年の資金調達によりプレシードランドにて650万ドルの調達に成功しています。以下はその詳細をまとめたものです。
<プレシードラウンド1、2022年>
金額:150万ドル
<プレシードラウンド2、2023年>
金額:500万ドル
資金調達の目的:酵母クリームの開発、生産体制の整備
出資元:Navus Ventures(オランダのベンチャーキャピタル)が主導。
300億ドル越えの代替乳製品市場と競合他社
世界の代替乳製品市場規模は2023年に285億米ドルと評価され、2024年の323億米ドルから2032年には911億米ドルに成長すると予測されています。 米国の代替乳製品市場は、消費者の食生活の嗜好の変化と植物性製品に対する需要の高まりにより、大きく成長すると想定されています。(fortune business insightsより)
乳製品代替市場は拡大を続け、競合他社も精密発酵や植物由来の乳製品開発を進めています。例えば、米国のPerfect Dayは精密発酵技術で乳タンパク質を製造する企業として、シリーズE資金調達で9000万ドルを獲得しています。同様に、 Better Dairy や New Cultureなどもそれぞれの技術で市場シェアを狙っています。
Cultivated Biosciencesも、2025年には米国市場、2026年には欧州市場への参入を計画しています。
会社概要
- 企業名:Cultivated Biosciences
- 代表者:Tomas Turner(トーマス・ターナー)、Dimitri Zogg(ディミトリ・ゾグ)
- 設立:2021年
- 所在地:スイス・チューリッヒ
- 公式HP:https://www.cultivated.bio/
まとめ
本記事では、乳製品と遜色のないクリーミーな「酵母クリーム」を開発した、Cultivated Biosciences(カルティベイト・バイオサイエンシズ)について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Cultivated Biosciences のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。