半導体市場は短期的に好況・不況の波を繰り返しながら、成長を続けてきた。しかし、2023年は米中の経済摩擦などにより、深刻な半導体不足が生じ、4年ぶりのマイナス成長を記録した。
幸いにも2024年からは、インテルなどの主要メーカーが生産を強化するため、景気は徐々に回復する見込みだ。一方で「2024年問題」(供給過多)が懸念されており、今年は回復に向けた大きな転換期となるだろう。
しかし、ここで忘れてはいけないのが「半導体の検査技術」だ。ナノスケールの構造をもつ半導体チップには精度の高い検査が求められるため、従来の技術では異常のある半導体が多く流通するかもしれない。
そこで注目を集めているのが、オランダの国際的な研究機関から生まれたスタートアップ「Nearfield Instruments」だ。この記事では、同社の事業内容や資金調達について紹介していく。
事業内容:最先端の非破壊検査で半導体をチェック
Nearfield Instrumentsは最先端の「非破壊」検査技術を開発しており、X線で体内を映すように、電磁波によって半導体の内部をスキャンすることが可能だ。同社は業界最高水準の精度とスループットを持つとされており、多くの投資家から高い評価を受けている。
【Nearfield Instrumentsの特徴】 ・革新的な設計:*オプトメカトロニクスにより高精度な制御/データ処理を実現 ・非破壊計測:半導体の立体構造をリアルタイムに壊さず計測可能 ・高精度の計測:ナノメートルレベルの計測精度を実現 ・高速処理:多数のSPMを並行動作させることで高速のスキャニングを実現 |
「AUDIRA」:半導体の内部を壊さずに計測可能
Nearfield Instrumentsが開発している「AUDIRA」は、半導体の内部を破壊することなく計測することができる。また本製品は半導体の製造過程をリアルタイムに監視しており、製造中の問題を迅速に特定・修正することも可能だ。
「QUADRA」:半導体の表面を高精度で計測
Nearfield Instrumentsが開発している「QUADRA」は、半導体の表面を高精度で計測することができる装置だ。光で半導体の表面をスキャンすることで、極めて小さな傷や異常を見つけることができる。
また今年7月9日に発表されたリリースによると、「QUADRA」に新機能としてLightning Modeが追加されたようだ。この機能を活用すると、従来のシステムと比べて160倍以上の速度で画像処理が行えるそう。高速でスキャニングが行えるので大量生産に役立つらしく、この脅威的なLightning Modeは2024年8月に利用可能になる予定だ。
資金調達:シリーズCラウンドで約1.4億ユーロを獲得
Nearfield Instrumentsはこれまで複数の資金調達ラウンドを成功させており、2024年にはシリーズCラウンドで約1.4億ユーロを調達した。これにより、同社は技術開発と市場拡大を加速している。
<2016年:シリーズAラウンド>
- 金額:不明
- 目的:初期技術開発と成長の支援
- 主な投資家:オランダ応用科学研究機構(TNO)を含む
<2019年:シリーズBラウンド>
- 金額:1,750万ユーロ
- 目的:初期製品の市場投入と生産拡大
- 主な投資家:Eugene Investment & Securities、Scylla Technologies、Innovation Industries、Samsung Venture Investment Corporation
<2024年:シリーズCラウンド>
- 金額:1億3500万ユーロ
- 目的:技術開発の加速と市場拡大
- 主な投資家:Walden Catalyst、その他の新規投資家
半導体の市場規模:2030年に1兆米ドルに到達
SEMIジャパンによると、半導体市場は2023年に市場規模が前年比11%縮小するが、2024,2025年にはいずれも2桁台の成長を記録すると予測されている。
具体的には、2023年から2030年までの年平均成長率は約10%で、2030年には市場規模は1兆米ドルに達する見込みだ。AI関連技術や車載用途での需要が成長を支えていくそう。
企業概要
会社名:Nearfield Instruments B.V.
代表取締役:Hamed Sadeghian
設立:2016年
所在地:オランダ、ロッテルダム
公式HP:https://www.nearfieldinstruments.com/
まとめ
本記事では、半導体の非破壊検査を提供しているNearfield Instrumentsについて紹介した。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。
Nearfield Instrumentsのように、海外の面白い企業についてまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。