Relativity Space(リレーティビティ・スペース)は、2015年に設立したアメリカの宇宙企業です。3Dプリンティング技術を駆使してロケットを製造し、宇宙ミッションのコストと時間を劇的に削減することを目指しています。
この記事では、Relativity Spaceの事業内容、主なサービス・製品、創業の経緯、資金調達などについて詳しく紹介します。
事業内容:3Dプリントによる最短2ヶ月のロケット製造
Relativity Spaceは、最先端の3Dプリンティング技術を利用してロケットを設計・製造する宇宙企業です。彼らの主な目標は、ロケット製造プロセスの自動化、部品数の削減です。将来的には、わずか2ヶ月で打ち上げ可能なロケットの製造を目指しています。
主なサービス・製品
Relativity Spaceの主な製品とサービスには、以下のものがあります。
Terran 1
Terran 1は、Relativity Spaceが開発した最初のロケットで、主に小型衛星を低軌道(LEO)に投入するために設計されています。このロケットは、85%が3Dプリンティングで製造されており、液体酸素と液体天然ガスを燃料とします。Terran 1の最大の特徴は、その迅速な製造プロセスと、従来のロケットに比べてコストが大幅に低いことです。
Terran R
Terran Rは、2026年に打ち上げ予定の次世代ロケットです。低軌道にて最大23.5トンの運搬が可能で、一部の部品を再利用する設計が特徴です。使い捨て、使い切りではなく、ロケット全体を何度も使用できるように設計されています。Terran Rは、より大型のミッションや惑星間ミッションにも対応できるよう設計されています。
Aeonエンジン
Relativity Spaceが開発した、Aeon 1・Aeon R・Aeon Vacエンジンは、全て3Dプリントされており、液体酸素と液体天然ガスを燃料としています。これらの燃料は火星で生産可能なため、火星ミッションにおいて重要な役割を果たします。
創業の経緯
Relativity Spaceは、2015年にティム・エリス(CEO)とジョーダン・ヌーン(元CTO)によって設立されました。二人は南カリフォルニア大学(USC)のロケット推進研究所で出会い、共にロケット推進システムと3Dプリンティング技術に情熱を注いでいました。
ティム・エリスは、南カリフォルニア大学で航空宇宙工学の学士号と修士号を取得しました。彼は当初、脚本家を目指していましたが、新入生オリエンテーションの際に航空宇宙工学に興味を持ち、専攻を変更しました。その後、ブルーオリジンで推進システムと金属3Dプリンティングの研究に従事しました。
ジョーダン・ヌーンは、スペースXでインターンとしてドラゴン2(スペースXが開発した有人宇宙船)の推進システムに携わり、その後USCのロケット推進研究所で主任エンジニアと運営責任者を務めました。ヌーンは、学生グループで初めてアメリカ連邦航空局(FAA)の打ち上げライセンスを取得し、宇宙へのロケット打ち上げを成功させた経験を持っています。
エリスとヌーンは共に、3Dプリンティング技術を用いたロケット製造の未来を見据え、Relativity Spaceを立ち上げました。彼らは、従来の製造方法では不可能だった新しいデザインや効率的な製造プロセスを実現することを目指しています。
なお、Relativity Spaceは、設立以来の主な実績については以下の通りです。
- 2016年:Yコンビネータに参加し、最初のロケット「Terran 1」の開発を開始。
- 2019年:最初の3Dプリンティングロケットエンジン「Aeon 1」を完成。
- 2021年:米国防総省との契約を締結し、宇宙ミッションのための部品を製造。
- 2023年:メタンを燃料とするロケットを初めて打ち上げ、100キロメートルの高さまで到達。
- 2026年予定:大型ロケット「Terran R」の打ち上げを計画。
資金調達
Relativity Spaceは、設立以来積極的に資金調達を行ってきました。
- 2020年11月
Relativity Spaceは、シリーズDラウンドで5億ドルの資金調達に成功しました。このラウンドの成功により、同社の評価額は20億ドルを超え、大きな成長を遂げました。 - 2021年6月
Relativity Spaceはさらに6億5000万ドルの新たな資金調達を実施しました。このシリーズEラウンドの資金調達により、同社の評価額は42億ドルに達しています。
Relativity Spaceは、これらの資金を活用して技術開発と製造能力の強化を図り、次世代ロケットの製造と宇宙ミッションの実現に向けた取り組みを加速させています。
将来展望:2026年にTerran R打ち上げへ
Relativity Spaceは、今後も3Dプリンティング技術を活用したロケット製造の最前線を走り続けることを目指しています。Terran 1の成功を踏まえ、より大型のTerran Rの開発に注力し、2026年の打ち上げを目指しています。また、火星や月へのミッションも視野に入れ、将来的には火星コロニーを支援する技術の開発を進めています。
Relativity Spaceは、宇宙探査の新しい時代を切り開くために、迅速で柔軟な打ち上げサービスを提供し、商業顧客や政府機関との契約を拡大していく計画です。彼らの技術は、宇宙探査のコストを削減し、新しいフロンティアの探査を可能にする鍵となるでしょう。
市場規模
Relativity Spaceが関わる宇宙発射支援サービスの市場は急速に拡大しています。
2022年には、宇宙発射支援サービスの市場規模は169億ドルと評価されており、2027年までに296億ドルに成長すると予測されています。低軌道への打ち上げサービスだけでなく、将来的には静止軌道や惑星間ミッションへのサービス提供も視野に入れており、この市場の成長に大きく寄与することが期待されています。
会社概要
会社名:Relativity Space
設立:2015年
拠点:アメリカ合衆国、カリフォルニア州
事業内容:ロケット製造、打ち上げ
代表:Tim Ellis(CEO)、Jordan Noone(CTO)