2017年、立教大学在学中に小川嶺氏によって設立されたタイミーを紹介します。
学生起業であることや、5年で約403億円もの資金を調達していること、コロナ禍での危機をピボットで乗り切ったことなど、深堀りがいのある企業です。
そこで本記事では、タイミーの会社概要や沿革、資金調達から、コロナ禍での戦略までを紹介します。
最近では、タイミー・キャリアプラスのサービス開始や、上場間近であるなど、動向が気になる企業です!
タイミーとは
タイミーは「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションとし、2017年8月に小川嶺氏が設立した企業です。現在はスキマバイトサービスの「タイミー」を中心に、地方の仕事や生活の体験ができる「タイミートラベル」や、オウンドメディアの「タイミーラボ」を運営しています。
タイミーの事業内容
「タイミー」は「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービスです。業種は、飲食や物流、小売を中心に、ホテル、農業、ブライダルなどの多業種が掲載されています。マネタイズは主に、事業者から、ワーカーへ支払う報酬の30%にあたる額をサービス利用料として徴収することで行なっています。
以下が「タイミー」の特徴です。
「タイミー」の特徴 | ワーカーのメリット | 事業者のメリット |
---|---|---|
報酬の立て替え | 即時で報酬を受け取れる | 支払い事務の軽減 |
相互評価機能 | 面接・履歴書が不要 | 面接・履歴書が不要 |
充実した労務機能 | 労務コストの削減 |
- 報酬の立て替え
「タイミー」はワーカーへの報酬を一時的に立て替えます。ワーカーはすぐに報酬を受け取ることができ、事業者は各ワーカーへの報酬とサービス利用料が毎月一括で請求され、支払い事務が軽減されます。 - 相互評価機能
ワーカーと事業者の相互評価機能により、面接や履歴書が不要です。アプリ上で、ワーカー・職場の客観的評価を見た上でマッチングすることができ、信頼性の確認ができます。 - 充実した労務機能
タイミーでは、事業者の様々な労務コストが削減されるシステムが搭載されています。- QRコードでの雇用契約締結
- 労働通知書の自動生成
- 源泉徴収不要
- 社保適用・マイナンバー不要
- 給与支払い報告書不要
タイミーの企業沿革
「タイミー」はどう起草されたのか
2017年8月、小川氏は、株式会社Recolleを設立し、アパレル関連事業「Recolle」を立ち上げました。しかし、エンジェル投資家からの出資が決まりかけた時に、「Recolle」に対して人のお金を預かり、数年やり遂げる覚悟を持てなかったため、起業を断念。 そして、燃え尽き症候群のようになり、就職を考え出したころ、「時間が豊かじゃない」と感じるようになったそうです。小川氏は、「時間が豊か=空いている時間で10個くらいのやることの選択肢があること」と考えました。そこで「アプリに自分の暇な時間をいれておけばその時間でできることをサジェストしてくれる便利なアプリってないの?」と思い、調べ始めたことが「タイミー」の始まりです。
タイミーのコロナ禍での戦略
タイミーは、2019年11月、橋本環奈を起用し初のTVCMを放映し始めるなど急拡大。しかし、飲食業界を中心に展開していた「タイミー」は、コロナ禍での飲食業界の不況により、5000万円規模であった単月の売り上げが3分の1以下になりました。
タイミーが取った2つの戦略
- 物流業界へのシフト
「タイミー」は、コロナ禍でも売り上げは落ちず、飲食業界と同様に労働集約型である物流業界への拡大に舵を切りました。シリーズBラウンドで株主となっていた物流会社のプロロジスのコネクションが後ろ盾となり、売り上げはV字回復。物流業界は「タイミー」の第2の柱となりました。 - 「タイミーデリバリー」の展開
タイミーは新規事業として「タイミーデリバリー」に乗り出しました。同サービスは、「まとめ配送」で配送単価を下げるモデルのフードデリバリーサービスです。しかし、既存の競合サービスの囲い込みでユーザー獲得は順調に進まず、「タイミー」の物流業界へのシフトが順調だったこともあり、半年で同サービスは畳むことになりました。
小川氏の挫折と決意
「タイミーデリバリー」を小川氏が、「タイミー」としての物流業界へのシフトなどの戦略をその他の役員が担当し、分業していた結果、小川氏は、タイミーは「社長の僕がいなくても回る状態」であると感じ、自身の社長としての存在意義に疑問を感じました。そこで小川氏は、社長を辞めて会長職に就き、「タイミーデリバリーのようなゼロイチの事業にどんどんトライして、1兆円企業をつくっていく」と決意し、その旨を筆頭株主であったサイバーエージェントの藤田氏に報告します。しかし、藤田氏の「ホームランを打とうと思ったら、本当に1兆円企業をつくりたいんだったら、どんなにつらくてもバッターボックスに立ち続けないとダメだ」との言葉で、自分が会社での疎外感から逃げ出したかっただけだと気づき、社長として続けていく覚悟を決めました。
そんな小川氏は、Forbes JAPANが開催している「日本の起業家ランキング2024」では2位に選出されています。
タイミーの資金調達
タイミーは、サービスローンチから5年ほどで約403億円もの資金調達に成功しています。注目すべきは、2022年11月の183億円、2023年9月の130億円の調達が、大手金融機関からの長期借入や融資枠の確保などによるもので、無担保・無保証かつ金利も年1.0%未満という大手企業並みの条件である点です。スタートアップが無担保・無保証でこれだけの金額を借入できるのは異例で、調達が成功した背景には、「成長の実績と、今後の成長の蓋然性の高さ」があるとタイミーCFOの八木智昭氏は語っています。
「タイミー」の実績と今後の成長
「タイミー」のワーカー数は、2019年末時点の73万人から、2023年10月時点で600万人を突破し、5年間で約8.2倍に増加。また、事業者数は同時期の比較で2019年で約39倍に増加しました。
株式会社帝国データバンクが調査した「人手不足に対する企業の動向調査(2023 年 10 月)」によると、コロナ禍以降、非正社員の人手不足割合は増加傾向にあります。少子高齢化による労働人口の減少や、時間外労働の上限規制などにより、慢性的な人手不足が予想されるなか、「タイミー」の需要は高まり続け、他業種への横展開で今後のさらなる成長が期待できるでしょう。