最終更新日 25/04/20
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Siiibo証券、個人とスタートアップをつなぐ社債投資で資金循環を改革

IT金融
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(引用:公式HP

日本では近年、低金利時代の転換により「金利のある世界」が到来し、利息収入によるインカムゲイン型投資への関心が高まっています。中でも社債(企業債券)は、企業にとって資金使途の柔軟性が高いメリットを持ち、個人投資家にとっても利率と期間があらかじめ決まった比較的リスク・リターンの明確な商品です。

しかし従来、社債投資は一部の機関投資家や限られた縁故先の個人にしか開かれておらず、未上場企業が社債で資金調達する機会も限られていたのが実情でした。政府もスタートアップ企業への成長資金供給を重視し、個人マネーのリスク資金への流入を促す動きを強化しています

こうした中、「自由・透明・公正な直接金融を創造する」ことをミッションに掲げるSiiibo証券株式会社(以下、Siiibo証券)が2019年に創業され、社債を通じて未上場企業と個人投資家を直接つなぐ独自プラットフォームを立ち上げました。日本の社債市場における新興プレーヤーとして、同社は伝統的な社債市場の民主化に挑戦しています。

本記事では、日本の社債市場が直面する課題と同社が提供する新しい「社債投資」サービスに焦点を当て、その専門性と将来性を解説します。

事業内容:「社債投資プラットフォームSiiibo」

(引用:PR TIMESSiiibo証券の仕組みイメージ:未上場企業(右)と個人投資家(左)を「少人数私募」の枠組みで直接マッチングし、オンライン上で社債発行・購入を実現する

Siiibo証券は、オンライン完結型の社債発行・投資プラットフォーム「Siiibo(シーボ)」を運営しています。このプラットフォームを通じてSiiiboが提供しているのは、未上場のベンチャー企業などが少人数私募債(50名未満の限定勧誘による社債)を発行し、個人投資家がインターネット上で直接購入できる仕組みです。企業は銀行融資や株式発行に加える新たな資金調達手段を得て、投資家はスタートアップ企業へ間接保有ではなく直接社債を購入して利息収入を得るという、新しい投資機会を得られる点が特徴です。

主な特徴・サービス機能:

オンライン完結型:

口座開設から社債の申込・決済・償還まで、すべてオンライン上で手続きが完結します。対面や紙の手続きを省き、忙しいビジネスパーソンも手軽に参加可能な環境を整備しています(最短3分で申込完了)。

厳格な審査体制:

発行企業に対しては、営業部門から独立した審査部門が財務健全性事業計画の妥当性反社会的勢力との関係排除など多角的な審査を実施します。経営会議で取扱可否を判断した上で情報開示・募集を行い、発行後も定期モニタリングと情報更新を行うなど、社債の健全性確保に努めています。

発行支援・IR掲載:

社債発行を希望する企業に対して、条件設計のサポートや法令確認必要書類作成支援など発行プロセス全般をサポートします。またプラットフォーム上に企業情報や事業計画を掲載し、投資家への情報提供・IR機能も提供しています。これにより知名度の低いスタートアップ企業でも魅力やビジョンを広く発信できるようになります。

投資家向け管理機能:

投資家は専用のダッシュボードで購入した社債の銘柄や利率、償還日などを一元管理が可能です。利払いスケジュールやポートフォリオ全体の利回り状況も確認でき、債券投資初心者でも分かりやすいユーザーインターフェースとなっています。これにより複数社債への分散投資も効率的に行えます。

「おまとめ債」など新サービス:

2023年以降、複数企業の社債を組み合わせ一度に分散投資できるパッケージ商品「おまとめ債」の提供を開始しました。例えば5~20銘柄の未上場企業社債をまとめて購入でき、平均2~8%程度の利回りを期待できる商品です。透明性の高い運用を維持しつつ、投資機会の拡大と社債の流動性向上(将来的なセカンダリーマーケット創出)を目指す試みとして注目されています。

利用メリット

社債投資は中長期的なインカムゲイン(利息収入)を得られるため、株式中心のポートフォリオに安定収益源を加える手段です。円建て商品で為替リスクがなく、価格変動も株式ほど大きくないことから、不確実性の高い市況下で資産の一部を債券に振り向けることは有効な分散投資策といえます。

一方企業側にとっての利点は、社債発行により経営権の希薄化を招かずに(デットファイナンスのため株式のような持分希薄化がない)、資金使途や条件を柔軟に設計できる点です。

例えば設備投資やM&A資金などにも使途を限定せず調達できるうえ、社債を購入した投資家とは利害を共にするパートナーとして発展的な関係構築も期待できます。Siiibo証券のプラットフォームを使うことで、こうした社債のメリットを活かした資金調達・資産運用がより身近になっています。

資金調達:シリーズAで約7.5億円を調達

(引用:PR TIMES

Siiibo証券はサービス拡大に伴い積極的に資金調達を行ってきました。直近では2023年10月18日付のプレスリリースにて、シリーズAラウンドで約7.5億円の第三者割当増資を実施したことを公表しています。このラウンドには、あおぞら企業投資(あおぞら銀行グループの投資ファンド)15th Rock、FINOLABファンド、Pacific Bays Capitalといった機関投資家が参加し、調達資金によりマーケティング強化やサービス機能の拡充を図る予定です。

同社は2019年の創業以来順調に資金を集めており、2021年末にはシリーズBラウンドで約5.5億円を調達し累計調達額は約10億円に達していました。シリーズAとなる今回の資金調達によって累計調達額は約16億円規模に拡大し、社債投資プラットフォームのさらなる成長に向けた十分な資本基盤を確保しています。

資金調達に合わせた新展開として、前述の新商品「おまとめ債」の拡販や、発行企業向けの新サービス公開も予告されています。スタートアップ企業の社債発行を後押しし、投資家には魅力的な利回り商品を提供することで、「社債による資金調達と資産運用」のエコシステムを拡大する方針です。実際、リリース後の投資家からは「複数のベンチャー企業をまとめて応援できる」「分散投資できる社債を探していた」といった好意的な声が寄せられており、市場からの期待の高さがうかがえます。

市場規模とポテンシャル:新たな資金循環を生み出す可能性

日本の社債市場は、2024年の社債発行額が約15.7兆円過去最高水準に迫るなど拡大傾向にあります。一方で、個人投資家が直接参加できる領域は限られており、特に未上場企業による社債発行はこれまで「縁故者向け」の狭い範囲に留まっていました。この未開拓だった個人向け社債投資マーケットに挑んでいるのがSiiibo証券です。

社債専門のネット証券というビジネスモデルは国内でも珍しく、同社は現在日本で唯一の社債特化オンライン証券を標榜しています。競合が少ないブルーオーシャン市場である反面、新規性ゆえの認知拡大や顧客教育が課題となるでしょう。しかしフィンテックの進展や投資商品の多様化志向を追い風に、個人マネーが社債市場に流入する潜在的ポテンシャルは大きいと考えられます。日本の個人金融資産は約2,000兆円規模とも言われ、その一部がベンチャー企業の社債に向かうだけでも市場規模は飛躍的に拡大する余地があります。

実際、オンライン証券各社の台頭により若年層にも分散投資インカムゲイン志向が広がってきており、社債という伝統的商品をデジタル技術で再定義するSiiibo証券の試みは、日本経済に新たな資金循環を生み出す可能性を秘めています。

会社概要

  • 会社名: Siiibo証券株式会社(英文表記: Siiibo Securities Co., Ltd.)
  • 所在地: 東京都中央区日本橋兜町8-1 FinGATE TERRACE 8F
  • 設立: 2019年1月11日
  • 代表者: 代表取締役CEO 小村 和輝(こむら かずき)
  • 公式HP: https://siiibo.com

まとめ

本記事では、社債投資プラットフォーム「Siiibo」を提供するSiiibo証券株式会社についてご紹介しました。

今後、金利環境の変化や規制緩和、競合プレーヤーの参入など外部環境の変動はあるものの、Siiibo証券のようなフィンテック企業が果たす役割はますます重要になるでしょう。社債投資をポートフォリオに取り入れることは、安定収益を確保しながら新興企業の成長を支援する社会的意義ある取り組みです。そのためSiiibo証券株式会社は、その橋渡し役として今後もサービス拡充と市場啓蒙を進め、日本における直接金融の新時代を切り拓いていくことが期待されています。

New Venture Voiceでは、Siiibo証券株式会社のような注目スタートアップを多数取り上げています。

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