
近年、「ChatGPT」に代表される生成AIは業務効率化の切り札として注目されています。しかし企業では、機密データの流出リスクや適切な活用方法への不安から、本格導入を躊躇するケースも少なくありません。
そうした中、株式会社ナレッジセンスは独自の法人向けAIサービス「ChatSense(チャットセンス)」を開発し、安全な環境で最新AIを活用できるソリューションを提供しています。
実際にChatSenseは高いセキュリティと企業向け機能が評価され、東証プライム上場企業・大学を含む 500社以上の組織に導入され始めている状況です。
ナレッジセンスはこうした社会課題に挑み、「最新AIを安心して使いたい」という企業ニーズに応えるスタートアップです。
本記事では、同社の提供する基本サービスに焦点を当て、その特徴や今後の展望について紹介します。
事業内容:ChatSense ― 法人向けセキュア生成AI活用プラットフォーム

ChatSenseは、セキュリティを強化した環境でChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデルを安全かつ低コストで活用できる法人向けサービスです。企業や自治体での業務効率向上を目的とした社内向け生成AIプラットフォームであり、チャット内容が外部のAI学習に再利用されないようデータ流出防止機能を備えています。
具体的には、OpenAI公式APIを活用し入力データをAIの学習対象から除外することで、社内機密情報が外部に蓄積・漏洩しない仕組みです。また、プロンプトの社内共有やユーザー一括管理、シングルサインオン(SSO)対応、利用状況の見える化など企業向けの独自機能も豊富です。
これら通常のChatGPTにはない機能により、DX推進と情報セキュリティの両立を可能にしています。料金面でも一括支払いや無料プランの提供など導入ハードルを下げており、初期費用無料・最低利用期間なしで気軽に試せる点も魅力です。

主要ターゲットはセキュリティに厳しい大企業や自治体で、実際に従業員100名超の企業を中心に導入が進んでいます。
さらにChatSenseは常に最新技術への対応を図っており、2023年以降OpenAI GPT-4をいち早く取り入れたほか、Anthropic社の「Claude 3」や「Claude Sonnet 4」、Google社の「Gemini 2.5」など最新モデルへの対応も次々と発表しています。
これにより利用企業は用途に応じて複数の先端AIモデルを比較・選択でき、より高度な生成AI活用が可能です。
ChatSenseはこのようにセキュアかつ柔軟なAI活用基盤を提供し、企業の業務効率化と知的生産性向上を力強く支援しています。
その他の事業:OzoneとDXコンサルで支える生成AI活用支援
ナレッジセンスではChatSenseのほか、生成AIテストサービス「Ozone」の企画・運営も行っています。
Ozone(オゾン)は企業が生成AIの導入効果や使い勝手を事前検証できるサービスで、社内外向けソリューション開発やPoC支援を通じて顧客のDX戦略立案をサポートします。これにより、自社に最適なAI活用方法を模索する企業に安全な実験環境を提供し、生成AIの可能性を引き出すことが可能です。
さらに同社は生成AIを活用したDX戦略コンサルティング事業も展開し、専門知見をもとに企業ごとのAI活用プラン策定を支援しています。
これら複数の事業ドメインを通じ、ナレッジセンスは企業のDX推進と業務改革を総合的にバックアップしています。
資金調達・創業ストーリー

ナレッジセンスは2019年4月、当時東京大学に在学中だった門脇敦司氏によって創業されました。創業当初はVR(仮想現実)技術を活用したナイトクラブやシューティングゲームの開発に取り組み、2020年末にはVRバトルロイヤルゲームのリリース計画も立てるなど、新規性の高いエンタメ事業に挑戦していました。
その後、生成AIの急速な進化と市場ニーズの高まりを捉え、2022年頃から事業ドメインを生成AI分野へシフト。現在の主力サービスであるChatSenseを立ち上げ、法人向け生成AIソリューション提供企業へと大きく舵を切りました。
創業者の門脇氏は、在学中にスタートアップでのM&Aを経験し独学でプログラミングを習得した異色の経歴を持ち、技術とビジネスの両面に精通したリーダーです。そのリーダーシップのもと、ナレッジセンスは少人数チームながら着実に事業を拡大してきました。

資金調達の詳細は公表されていないものの、門脇氏は「相手のメリットを示す」ことを意識してベンチャーキャピタルに事業の価値を訴求したといい、また採用面でも「この事業がいかに面白いか」「あなたにとってどれぐらい価値があるか」を丁寧に伝えることで優秀な人材を確保してきました。
こうした戦略的なコミュニケーションと事業ピボットの柔軟性が奏功し、2023年以降は大企業との提携や自治体での実証実験も進むなど順調に実績を重ねています。
今後はChatSenseの更なる機能強化(例:社内データの追加学習やAIエージェント機能の拡充)や対応AIモデルの拡張を通じてサービス価値を高め、国内500社から更に裾野を広げた顧客基盤の拡大を目指しています。
市場規模:2030年までに、国内の生成AI市場は約1兆7,774億円に達する見通し

JEITA(電子情報技術産業協会)によると、国内外の生成AI市場は今後驚異的な成長を遂げる見通しです。
日本国内の生成AI関連市場規模は 2023年に約1,118億円と推計され、以降年平均 47.2% という非常に高い成長率で拡大し 2030年には約1兆7,774億円に達すると予測されています。これは現在規模の15倍超という急拡大です。
一方、世界全体では2023年時点で約106億ドル(約1.5兆円)の需要規模が、年平均成長率 53.3% で増大し 2030年には2,110億ドル(約30兆円)に達すると見込まれます。わずか7年で20倍近い伸びとなり、各国・各業界で生成AI活用が一気に広がる計算です。
特に製造業やサービス業など幅広い分野で生成AIがビジネス変革の原動力になると期待されており、生成AI市場の拡大に伴って、AI導入を支えるセキュリティ強化ソリューションや業務効率化ツールの需要も高まるでしょう。
ナレッジセンスが属する生成AI×業務効率化領域は、まさにこの世界的成長トレンドの中で大きなビジネスチャンスを迎えていると言えます。
会社概要
- 会社名: 株式会社ナレッジセンス
- 所在地: 東京都港区六本木七丁目18番18号 住友不動産六本木通ビル2階
- 設立年月日: 2019年4月10日
- 代表者名: 門脇 敦司
- 公式HP: https://knowledgesense.jp/
まとめ
生成AIブームの中、ナレッジセンスのChatSenseは「セキュアにAIを使いたい」という企業ニーズに応える画期的なサービスと言えます。導入障壁となる情報漏洩リスクや運用面の課題を独自機能で克服し、すでに多数の企業で実用段階に入っている点は大きな強みです。
今後は市場の拡大とともに競合も増えると予想されますが、ナレッジセンスは最新AIモデルへの対応力や迅速な機能開発を武器に市場をリードしていくでしょう。
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