
日本の物流業界は今、構造的な課題に直面しています。少子高齢化によるドライバー不足や2024年の時間外労働規制(通称「物流2024年問題」)の影響で、「モノが運べない時代」が現実味を帯びつつあります。多重下請けやアナログな業務体制が依然として残る中、DXによる効率化と生産性向上が喫緊の課題です。
こうした状況を打破する存在として、物流スタートアップが注目されています。これらは先端ITやプラットフォーム技術を活用し、配送の効率化や労働力不足といった課題に革新的なソリューションを提供している企業です。特に、今回紹介する3社は、それぞれの強みを活かし「※ラストワンマイル」から国際物流まで多様な領域で変革を起こしています。
本記事では、以下の物流スタートアップ3社を取り上げ、それぞれの企業がどのように物流業界の課題に取り組み、どのようなインパクトを与えているのかを詳しく解説します。あわせて、各社の個別記事へのリンクも掲載していますので、ぜひそちらもご覧ください。
- X Mile:ノンデスク産業の人手不足に挑むDXプラットフォーム
- CBcloud:配送マッチングでラストワンマイルを効率化
- Willbox:国際物流プラットフォームでサプライチェーンを最適化
(※ラストワンマイル:最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのこと)
X Mile:ノンデスク産業の人手不足に挑むDXプラットフォーム

X Mile株式会社(以下、クロスマイル)は物流・建設など「ノンデスク」領域に特化し、人材プラットフォームと業務DXサービスで業界課題に挑戦する物流DXスタートアップです。同社は「テクノロジーの力でノンデスクワーカーが主役の世界を」というビジョンのもと、物流をはじめとする非デスク産業の構造改革を目指しています。日本の物流業界が抱える労働力不足と低い生産性という二大課題に真正面から挑んでおり、人手不足の解消と現場のDX推進を両輪で進めている点が特徴です。
クロスマイルは、「人材マッチング」と「業務のデジタル化」の両面から物流現場を支えるスタートアップです。
まず、「人材マッチング」の面でのサービスが、人材プラットフォーム「クロスワーク」です。こちらのサービスでは、トラックドライバーや整備士など物流業界の求職者と企業をつないでおり、2024年時点で70万人超の登録者と2万社以上の事業所を抱える国内最大級の求人サイトに成長しています。これにより人材不足による業務停滞のリスクを減らし、即戦力確保を可能にしています。
「業務のデジタル化」の面で活躍しているのがクラウド型業務支援ツール「ロジポケ」です。クロスマイルはこれにより、配車や勤怠など煩雑な業務のDX化・効率化を推進しており、生産性の向上と働き方改革の両立を実現しています。
人材と業務の両輪で物流の構造課題に取り組むクロスマイルは、Forbes JAPAN「注目のスタートアップ100社」にも選出されるなど高く評価され、全国展開と組織拡大を加速中です。また、誰もが安心して荷物を届けられる社会の実現に向けて、テクノロジーを武器に挑戦を続けています。
クロスマイルについて詳しくより知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。
CBcloud:配送マッチングでラストワンマイルを効率化

CBcloud株式会社(以下、CBcloud)は、荷物を送りたい荷主(依頼主)と配送を担うドライバー(パートナー)を直接マッチングする物流プラットフォーム「PickGo(ピックゴー)」を提供するスタートアップです。CBcloudは、ラストワンマイルの非効率をテクノロジーで解決する物流プラットフォームの先駆けです。
従来の物流では、多重下請けによる情報の遅延や手数料の負担が大きな課題でしたが、CBcloudはこれを打破し、「PickGo」を展開しました。個人・企業の配送依頼に対し、最短数十秒でドライバーが見つかる仕組みで、全国5万人超の登録ドライバーにより、緊急配送や繁忙期対応にも柔軟に対応可能です。平均マッチング時間は56秒、マッチング率は99.2%と高い精度を誇り、コスト削減と配送効率の向上を同時に実現しています。
加えて、業務支援サービス「SmaRyu」では、PickGoのAPIやデータを活用した物流最適化を提供しています。1日3,000件超の配送実績と7万人以上のネットワークを活かし、配送網の構築から業務改善まで一気通貫で支援しています。
こうしたモデルは、ドライバー不足や労働時間規制といった業界の構造課題に対する有効な解決策として注目されており、CBcloudは地域自治体や大手企業との連携も進行中です。観光客の手荷物配送など、新しいサービス領域への展開も始まっており、同社は今後さらに物流DXの中核的存在として存在感を強めていくでしょう。
CBcloudについて詳しくより知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。
Willbox:国際物流プラットフォームでサプライチェーンを最適化

株式会社Willbox(以下、Willbox)は、国際物流の非効率をデータとテクノロジーで解決する物流DXスタートアップです。2019年に創業した同社は、国際物流プラットフォーム「Giho(ギホー)」を開発・運営し、複雑な輸送手配や見積もり業務をワンストップで効率化しています。従来1週間以上かかっていた輸送見積もりを最短10秒、遅くとも24時間以内で提示可能とし、企業の物流コストを平均15%削減するなど、時間と費用の大幅な削減を実現しています。
Gihoは、荷主と160社超の物流事業者をマッチングするデータベースを備えており、設備や得意分野を踏まえた最適な組み合わせを自動提案します。トラックやコンテナの選定も含め、柔軟な対応が可能です。さらに、海上運賃比較の「コンテナEC」や航空貨物向け「Giho Air」の展開も進めており、海運から空輸までカバーする包括的な国際物流プラットフォームへと進化しています。
このように、Willboxは国際物流におけるサプライチェーン全体のDXを推進している企業です。属人的だった業務のデータ化・標準化に貢献し、荷主・物流事業者双方の業務効率化と収益向上を実現しています。2024年には約7億円の資金調達に成功し、台湾法人の設立を含むアジア展開も本格化しています。日本発のグローバル物流インフラの構築を目指しており、今後さらなる成長が期待されています。
Willboxについて詳しくより知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。
まとめ:物流DXが拓く未来
今回ご紹介したX Mile、CBcloud、Willboxの3社は、それぞれの強みを活かしながら、物流業界の変革に挑む注目のスタートアップです。共通点は、デジタルプラットフォームによって供給側と需要側を直接つなぎ、物流の非効率を解消している点にあります。
これらの企業は物流DXが世に広まっていくにつれて注目度が高まっていくことが予想されるため、今後の動向からも目が離せません。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。