最終更新日 25/05/23
国内スタートアップ注目企業

DX時代の個人情報保護:Acompanyのソリューションとは

DXシステム開発
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(引用:公式HP)

昨今では、データに基づいた意思決定を行うデータドリブン経営や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が、企業の成長に欠かせない取り組みとして注目されています。一方で、個人情報の漏えい・プライバシー侵害やサイバーセキュリティ上のリスクなど、データ利用にまつわる諸問題も深刻化している状況です。

このような諸問題を解決するため、データを暗号化したまま処理できる秘密計算(Confidential Computing)技術が注目を集めています。

株式会社Acompany(アカンパニー)は、この秘密計算技術を核に、プライバシー保護とデータ活用の両立を目指すスタートアップです。

本記事では、株式会社Acompany(以下、Acompany)の事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容:秘密計算クラウド×DX支援で実現する安全なデータ活用

Acompanyの主な事業は、秘密計算技術を活用したクラウドプラットフォーム提供(AutoPrivacyシリーズ)と、企業向けプライバシーDXコンサルティングサービスの2軸があります。

以下に詳しい事業内容を説明します。

事業内容①:秘密計算クラウド「AutoPrivacy」で安全なAI活用を実現

(引用:PR TIMES)

Acompanyが開発する「AutoPrivacy AI CleanRoom」は、国内初のハードウェア型秘密計算技術を搭載し、データとAIを保護するクラウド型のセキュリティサービスです。開発者向けに秘密計算を駆使したプライベートLLM(大規模言語モデル)を簡単に構築できる開発基盤を提供しており、誰でも安全に自社用AIエージェントを開発することができます。この環境では処理が全て暗号化されたまま行われるため、例えばChatGPTのような生成AIチャットアプリを、データの内容を誰にも見られることなく構築することが可能です。これにより企業は自社の機密情報やノウハウを安心して生成AIに活用でき、AIモデルの知的財産(IP)保護と利用者データの保護を両立させたサービス提供が実現します。

AutoPrivacyは、AIクリーンルーム上でLLMモデルをGPUで高速実行できるLLMホスティングや、秘密計算環境上でPythonプログラムを実行できる実行基盤、AIモデルへのアクセスを管理するAIゲートウェイ、機密データを活用した検索拡張生成(RAG)機能など、充実した機能を備えています。さらに、独自の秘密計算エンジン「QuickMPC」(MPC:Multi-Party Computation方式による秘密計算エンジン)を開発し、データを秘匿化したまま複数機関での共同計算・分析を可能にする取り組みも行っています。これらの技術を通じ、専門的なITスキルがなくても企業が安全にデータ・AIを活用できる基盤を構築することを支援します。

ターゲットとなるのは高度な機密データを利活用する需要が高い、医療や金融、製造、防衛などの業界です。それらの業界の企業にとって、機密データを社外に出すことなく他組織と共同でデータ分析を行えることや、自社のデータを活用した生成AIを業務に活用できることが大きなメリットとなります。

実際、例えば医療分野では複数の病院が患者データを暗号化したまま持ち寄り、AIで横断解析を行うことで新薬開発や診断高度化に繋げることが期待されており、金融分野でも複数の銀行が暗号化した顧客データを持ち寄り、不正取引の検知や高度な与信モデルの構築に役立てるといった応用が考えられます。

このように、業種を問わず機密データを安全に共有・分析できる環境は、今後ますます重要になるでしょう。

事業内容②:プライバシーDXコンサルティングで企業のデータ活用を支援

(引用:公式HP)

AcompanyはプライバシーDXコンサルティングサービスも提供しています。個人情報保護法の改正やGDPRなどの法規制に対応しながらデータ利活用を進めるためには、技術面だけでなく法制度面に精通した総合的支援が欠かせません。

実際、2022年4月には改正個人情報保護法が施行され、2023年6月には改正電気通信事業法の施行が控えるなど、日本のみならずEUのGDPRや米国のCPRAなど、国内外で法規制の大きな変化が進んでいます。同社は秘密計算や合成データ生成、匿名加工などプライバシー保護技術全般に関する知見を活かし、企業ごとに最適なデータ活用戦略の策定や体制構築をサポートします。

これにより、顧客企業は法令遵守を図りつつ、安心してデータの価値を引き出すことが可能です。例えば、社内規程の整備やプライバシーリスク評価、適切な技術ソリューションの選定支援など、クライアント企業の状況に合わせたサービスも展開しています。

資金調達:2025年5月にシリーズBラウンドにて総額11億円を調達

(引用:PR TIMES)

Acompanyは2025年5月にシリーズBラウンドで総額約11億円の資金調達を実施しました。リード投資家はSBIインベストメントで、グロービス・キャピタル・パートナーズ、名古屋大学系VCであるCentral Japan Innovation Capital、さらには元BCG日本代表やさくらインターネット社長といった個人投資家も参加しています。

この資金調達により累計資金調達額は約21億円となりました。なお、2023年4月にシリーズAラウンド完了時点で累計約10億円の資金調達を達成しており、創業期から着実に資金を確保してきた実績があります。

調達した資金は秘密計算を核とするプロダクトの研究開発や、グローバル展開に向けた人材採用・組織強化に投入する計画です。創業者でCEOの高橋亮祐氏は新ミッション「Trust. Data. AI.(あらゆるデータとAI活用に、信頼を。)」を掲げ、全てのデータ活用が信頼できる社会の実現を目指すと述べています。

市場規模:ハードウェア型秘密計算の市場、2032年までに3,500億ドル(約50兆円)に達する見込み

(引用:PR TIMES)

ハードウェア型秘密計算(Confidential Computing)の市場現状と将来性にも注目が集まっています。2025年時点で約242億ドル(約3.5兆円)だったこの市場規模が、2032年には3,500億ドル(約50兆円)に達し、年平均成長率は46.4%にのぼる見込みです。

既にApple(独自の「Apple Intelligence」)やGoogle、Metaといった世界的企業がこの技術の導入を開始しており、米国の政府機関や軍事部門でも活用が進みつつあります。日本国内でも政府のガバメントクラウドで秘密計算が必須技術とされるなど、プライバシーテックへの注目が高まっている状況です。

こうした世界的な潮流の中、北米を中心にプライバシー保護技術(PETs)領域のスタートアップが続々と台頭しています。Acompanyは2022年にEAGLYS社やLayerX社とプライバシーテック協会を設立し、国内での業界発展にも貢献しています。急拡大する市場環境において、最先端技術と法律知見を兼ね備える同社は、日本発のプライバシーテック企業として確固たる存在感を示しつつあるのです。

会社概要

  • 会社名:株式会社Acompany
  • 所在地:愛知県名古屋市西区那古野二丁目14番1号 なごのキャンパス
  • 設立:2018年6月
  • 代表者:代表取締役CEO 高橋亮祐
  • 資本金:1億円
  • 公式HPhttps://acompany.tech/

まとめ

プライバシーテック分野において卓越した技術力と先見性を持つAcompanyは、今後もデータ活用とプライバシー保護の両立に貢献していくことが期待されています。

また、海外展開を視野に入れ、医療・金融はもちろん経済安全保障や国防といった新領域への進出も図り、日本発イノベーションを世界に発信していく方針です。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

株式会社Acompanyのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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