最終更新日 25/04/09
注目企業海外スタートアップ

監視カメラと連動した「AI警備員」、米新興Hakimoが累計31億円調達

AIセキュリティ
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(引用:sourcesecurity.com)

近年、日本では警備業界の高齢化や人手不足が深刻化しています。アメリカでも同様に、警備会社の3分の1以上がコロナ前の人員を確保できていない一方で、犯罪件数は増加傾向にあり、効率的な警備体制の構築が急務となっている状況です。

こうした課題を解決するために、「Hakimo」はAIと監視カメラを組み合わせた、次世代セキュリティシステムを開発しました。

同社の開発する「AI Operator」は、24時間体制でカメラ映像やセンサーの情報をチェックし、異常を見逃さず自動で対応することが可能です。そのため、人手が足りない現場でも常に監視を続けられることから、警備の質を保ちつつ年間12万5,000ドル(約1,800万円)のコスト削減につながるとの試算も示されました。

2024年には、31億円の資金調達を実現し、今後のさらなる事業拡大が期待されています。

本記事では、Hakimoが開発した技術の特長や仕組み、実際の導入事例、そしてHakimoが描く新しい警備のかたちについて詳しくご紹介します。

事業内容:従来の警備の常識を覆す、AIによる次世代セキュリティ

(引用:Hakimo HP)

Hakimoは、従来の警備システムとは全く異なる、AIを活用した新しいセキュリティシステム「AI Operator」を開発しました。

Hakimoの主な特徴について、以下の4点に分けて解説します。

1. AIが常に監視し、即座に対応するスマートセキュリティ

  • AIが24時間365日監視を行い、異常や不審者をリアルタイムで検出。
  • 検知した異常に対して、即座に警告を発信し、SMS・電話・メールなどで関係者に通知。
  • 警備員の配置が難しい場所でも迅速な対応が可能。

2. 誤報の削減とアラーム精度の向上

  • AIがアラームを自動で分類しつつ優先度を判断し、誤報(迷惑アラーム)をフィルタリング
  • 早急な対応が必要なときだけに絞ることで、オペレーターの負担を軽減。

3. セキュリティ機器の状態監視と早期な改善

  • AIがカメラやドアなどのセキュリティ機器を常に自動で監視。
  • 機器に故障や接続不良が生じた場合、早期に通知し、迅速なメンテナンス対応を促進。

4. 複数のシステムを一元管理し、業務を効率化

  • 複数のセキュリティシステムやアラームを1つのインターフェースで一元管理。
  • ServiceNow、Slackなどの業務管理ツールとも連携し、セキュリティを超えた業務全体の効率化にも貢献。

このように、Hakimoの「AI Operator」は、従来の警備では難しかった効率的かつ迅速な対応を実現し、企業や施設のセキュリティを次のステージへと引き上げます。AIを活用したこの革新的な仕組みは、未来のリスク管理を担う存在として欠かせない存在になりつつあるのです。

最大の特徴:従来の“見張る”警備から“先回りする”警備へ

(引用:Hakimo HP)

Hakimoの最大の特徴は、AIが脅威を「発生する前に検知し、先回りして対応」できる点です。従来のセキュリティシステムは、問題が発生した後に対応する「事後対応型」が主流でした。しかしHakimoは、「事後対応型」「事前予防型」の両方を組み合わせたハイブリッド型のアプローチを採用しています。

例えば、夜間に無人の駐車場で、不審な人物が敷地内を徘徊している状況でも、Hakimoの「AI Operator」は監視カメラの映像から異常な行動パターンを即座に検出し、自動で警告を発することができます。

これにより、事故や破壊行為といったリスクを未然に防ぐことが可能となり、セキュリティ体制の根本的な強化が実現するのです。

現場で実証されたHakimoの警備体制

(引用:Hakimo HP)

HakimoのSNSでは、実際の導入事例が映像で多数公開されています。例えば、ある学校のバスケットコートに、2人の若者が不法侵入した事例では、AIが即座に侵入を検知し、スピーカーで警告を発しました。警告は無視されましたが、わずか数分後に警備員が現場に到着し、彼らを敷地外に追い出しました。

このように、AIは侵入者の検知から警告までを自動で行い、警備員が現場に到着するまでの時間を最小限に抑えることができます。これにより、警備業務の効率化が実現し、迅速な対応が可能になります。AIのサポートにより、人間の警備員が過度に負担を感じることなく、セキュリティ体制が強化されるのです。

実績:導入企業は100社超、導入後の犯罪発生率も低下

(引用:Hakimo HP)

Hakimoは、創業から数年間を製品開発に費やし、技術の精度を高めてきました。その結果、近年になって急速に事業を拡大し、2023年には導入企業が前年比で3倍に増加。現在では、100社以上がHakimoのAIセキュリティシステムを導入しています。

特に導入が進んでいるのは、自動車ディーラー、不動産、製造業など、侵入や盗難リスクが高い業界です。例えば、起亜自動車ディーラーのマネージャーは、「Hakimoを導入した後、不法侵入が激減し、夜も安心して眠れるようになった」とコメントしており、AIによるセキュリティ対策が実際に効果を上げていることが確認されています。

このように、AIによる迅速な対応とリアルタイムでの警告発信が、従来の警備体制に比べて効果的であることが証明されつつあり、企業にとって大きな安心を提供しているのです。

資金調達:累計約31億円でさらなる拡大へ

Hakimoは2025年3月、シリーズAラウンドで1050万ドル(約15.7億円)を調達。これにより、累計調達額は2050万ドル(約31億円)に達しました。

今回の資金調達は、Vertex VenturesとZigg Capitalが主導し、Defy.vc、Gokul Rajaram、RXR Arden Digital Venturesなどが参加したとのことです。

調達した資金は、以下の目的で使用されます。

  • 技術開発の強化
    AIエージェントの機能向上や新機能の開発に投資し、セキュリティソリューションの品質を高める。
  • 人材採用
    エンジニアやセキュリティ専門家を採用し、チームの拡大と技術力の向上を図る。
  • 市場拡大
    新規市場への進出やマーケティング活動を通じて、顧客基盤の拡大を目指す。

これらの投資を通じて、Hakimoはセキュリティ業界でのリーダーシップを強化し、より多くの企業に革新的なセキュリティソリューションを提供することを目指しています。

市場環境:拡大するセキュリティ需要と技術革新の潮流

(引用:第10節 サイバーセキュリティの動向 – 総務省

近年、世界のサイバーセキュリティ市場は急速に拡大しています。総務省の「令和6年版 情報通信白書」によれば、2023年の世界のサイバーセキュリティ市場の売上高は1,722億4000万米ドル(約25兆円)に達したとのことです

この市場拡大の背景には、以下の要因が挙げられます。

(引用:第10節 サイバーセキュリティの動向 – 総務省
  • サイバー攻撃の増加
    サイバー攻撃の件数は年々増加しており、2022年の被害数は2015年と比較して約8.3倍に達しています。
  • リモートワークやクラウドサービスの普及
    コロナ禍をきっかけにテレワークが広がり、社員が会社の外から業務システムにアクセスすることが当たり前になりました。また、業務で使うツールやデータをクラウド上に置く企業も増えています。これにより、社内ネットワークだけを守ればよかった従来のセキュリティ対策だけでは、不十分になってきているのです。
  • IoT・AIなど新技術の普及による攻撃対象の拡大
    スマート家電や自動運転車、工場のスマート化などにより、インターネットに接続された機器(IoT)が爆発的に増加しました。これに伴い、攻撃対象の範囲が拡大し、従来以上に高度なセキュリティ対策が求められています。

これらの要因により、企業や組織はセキュリティ対策の強化を迫られ、サイバーセキュリティ市場の成長が加速しています。今後もデジタル技術の進展や新たな脅威の出現により、市場規模はさらに拡大するでしょう。

企業概要

  • 企業名:Hakimo
  • 設立:2020年
  • 拠点:米国カリフォルニア州サンフランシスコ
  • 共同創業者:サム・ジョセフ、サガー・ホンヌンガー
  • 累計調達額:2,050万ドル(約31億円)
  • 公式HP:https://www.hakimo.ai/

まとめ

本記事では、AIと監視カメラを活用し、警備の常識を変えようとするスタートアップHakimoについて紹介しました。

人手不足や犯罪の高度化といった社会課題に対して、HakimoのAI警備システムは「人に頼らない24時間警備」という解を提示しています。低コストで拡張性が高く、既存インフラとも高い互換性を持つその技術は、セキュリティの新しいスタンダードになりうる存在です。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

警備の未来をつくるHakimoのように、国内外で革新的な技術を開発する企業を今後も取り上げるので、関連記事もぜひご覧ください。

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