昨今の異常気象に頭を抱えている人は多いと思います。例えば、ゲリラ豪雨に見舞われ予定の変更を余儀なくされた、台風によって旅行の予定をキャンセルしなければならなくなった、など天気に悩まされた経験は誰しもあることでしょう。
もはや日単位の天気予報があまり意味をなさなくなり、今やリアルタイムでの予報が求められる時代となりました。
その中で、今注目されているスタートアップがTomorrow.ioです。
同社は、さまざまなソースから収集した気象観測データをAIによって分析し、リアルタイムの気象予測を提供しているアメリカ発の企業です。
本記事では、Tomorrow.ioの事業内容や創業の経緯、最新の資金調達などを詳しく述べています。
事業内容:AIによる正確な気象予測の提供
Tomorrow.ioの事業は、気象データの収集・分析・予測を行い、個人や企業が活用可能な形で気象情報を提供することです。
同社は独自の気象衛星によって、地上のセンサーでは捉えられない全世界の降水量やその他の気象情報を取得。さらに、収集したデータをAIモデルで分析して、より正確な気象予報を提供しています。
同社のサービスは、運輸やエネルギー、農業、保険など、気象の影響を受けやすい多くの産業で活用されています。企業は、Tomorrow.ioの提供する気象情報を活用することで、気象リスクを最小限に抑え、効率的に事業を行うことが可能になります。
具体的な取引企業としては、Uber・Delta・Ford・National Gridなどが挙げられ、1000を超える世界中の国や企業に気象情報を提供しています。
創業の経緯:きっかけはイスラエル軍での瀕死の経験
Tomorrow.ioは、Shimon Elkabetz(シモン・エルカベッツ)、Itai Zlotnik(イタイ・ズロトニク)、Rei Goffer(レイ・ゴファー)の3人によって設立されました。
彼ら3人は、イスラエル軍の退役軍人という共通のバックグラウンドを持っていました。共にハーバード大学とMIT在学中(2016年)に、ClimaCell(現在のtomorrow.io)を立ち上げました。
創業の背景には、CEOであるシモン氏のイスラエル空軍での経験が深く関わっています。
彼は任務中に瀕死の重傷を負い、天候が生命に与える大きな影響を痛感しました。これをきっかけに、天気予報が単なる日常的な情報以上に、命や安全に直結する重要なものであると強く認識したと言います。
共同創業者であるイタイ氏とレイ氏も、それぞれ電気工学や経済学の専門知識を持ち、技術やビジネスの視点から、より精度の高い気象情報サービスの提供を目指しました。
特に、従来の気象予報システムが発展途上国や人口密度の低い地域で十分なデータを提供できていないという問題に着目しました。
これに対して彼らは、IoT、ドローン、航空機、衛星通信といった多様なデータソースを活用することで、従来の手法に依存しない気象データの収集と分析技術を導入することを決意。気象がビジネスや生活に与える影響を予測し、企業が適切な意思決定を行えるようサポートすることを目指しました。
資金調達:シリーズEを完了し、累計調達額は約2億6900万ドルに
Tomorrow.ioの、これまでの累計資金調達額は、約2億6900万ドルにおよんでいます。ここでは、各シリーズでの資金調達を簡潔に紹介しています。
- 2017年、シリーズA
- 調達額:1500万ドル
- 出資元:Greylock Partners、Venrock
- 目的:気象予測技術の開発
- 2018年、シリーズB
- 調達額:4500万ドル
- 出資元:Tenaya Capital、Glynn Capital、Crown Ventures、Casdin Capital
- 目的:ワイヤレスネットワークやIoTを活用した気象データの取得技術の強化
- 2020年、シリーズC
- 調達額:2300万ドル
- 出資元:Pitango Growth、Square Peg Capital
- 目的:SaaSプロダクトの開発と戦略プロジェクトの加速
- 2021年、シリーズD
- 調達額:7700万ドル
- 出資元:Stone Court Capital、Highline Capital
- 目的:気象予報プラットフォームの強化
- 2022年、シリーズE
- 調達額:1億900万ドル
- 出資元:Activate Capital、Lumir、MoreTech Ventures、Shavit Capital、The Strategic Development Fund (SDF)
- 目的:気象予報プラットフォームの強化
会社沿革:2度の衛星の打ち上げ
Tomorrow.ioの主要な出来事として、気象観測衛星の打ち上げが挙げられます。ここでは、衛星の打ち上げについての情報をまとめていきます。
2023年4月14日:初号機「Tomorrow-R1」を打ち上げ。
2023年6月12日:2号機「Tomorrow-R2」を打ち上げ。
SpaceXのFalcon 9ロケットを使用したライドシェアミッション「TRANSPORTER-8」にて。
同社は今後の計画として、18から24カ月の間に20機以上の衛星を打ち上げる計画を発表しています。
会社概要
- 会社名:Tomorrow.io(旧社名:ClimaCell)
- 設立年:2016年
- 創業者:Shimon Elkabetz、Itai Zlotnik、Rei Goffer
- 拠点:アメリカ合衆国、ボストン
- URL:https://www.tomorrow.io/
まとめ
本記事では、気象観測データをAIによって分析しリアルタイムの気象予測を提供しているアメリカ発の企業Tomorrow.ioについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
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