最終更新日 25/04/29
国内スタートアップ注目企業

【SORA Technology株式会社】ドローン×AIでマラリア撲滅を目指す

AIヘルスケア
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(引用:SORA Technology株式会社

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、感染症対策の重要性が再認識されました。マラリアなど蚊が媒介する疾患は現在もアフリカを中心に深刻で、年間約2億4700万人が感染し約62万人が命を落としています。また、医療物資が届かず救える命が失われている地域も少なくありません。

こうしたグローバルヘルスの課題に対し、ドローン(無人航空機)とAIによる革新的ソリューションで挑むのが、2020年創業のSORA Technology株式会社(以下、SORA Technology)です。同社は「宙(SORA)から人の生き方に変革を」というミッションのもと、エアモビリティ技術で世界のどこでも安全で豊かな社会を実現することを目指しています。

本記事では、SORA Technologyの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容①:蚊の発生自体を防ぐマラリア対策「SORA Malaria Control」

(引用:SORA Technology株式会社

マラリアは蚊を媒介して感染する寄生虫症で、熱帯・亜熱帯地域の多くの人々を苦しめています。WHOの発表によれば2021年だけで世界約2億4700万人がマラリアに感染し、そのうち約61万9000人が死亡しました。

従来のマラリア対策は蚊帳の配布や室内での殺虫剤散布など成虫の駆除が中心でしたが、屋外の蚊発生源までは十分に対処できていないのが課題となっていました。近年注目されるラーバルソースマネジメント(LSM)と呼ばれる手法では、蚊の幼虫(ボウフラ)が湧く水たまりを減らすことで蚊自体の発生を抑制します。しかし、人手で広範囲の水たまりを探索し薬剤散布する従来方式では、労力とコストが膨大になる問題が指摘されています。

SORA Technologyの提供する「SORA Malaria Control」は、こうした課題を解決するために開発されました。自社開発した固定翼ドローンで上空から広域の画像データを取得し、AI解析によってマラリア蚊の発生リスクが高い水たまりを効率的に特定します。リスクが高い地点に絞ってピンポイントで防蚊剤(殺虫剤)を散布することで、従来は人海戦術が必要だったLSMを低コストで実現可能にしました。このソリューションにより人手と費用を大幅に削減しながら、マラリア感染のリスクを抑え込むことができます。

現在、ガーナやケニアなどアフリカ6か国で国際機関・現地政府と連携した実証プロジェクトが進められており、将来的にはマラリア以外のデング熱など感染症対策への応用も期待されています。

事業内容②:ドローンによる医薬品の配送で「空のインフラ」を構想

(引用:SORA Technology株式会社

必要な医療を必要なときに受けられることは、日本では当たり前に思えます。しかし世界に目を向けると、地域によっては医療物資を届けるのに長時間の危険な移動が強いられる現状があります。

世界銀行の調査では、サブサハラアフリカの農村地域で舗装道路から2km以内に居住する人口はわずか34%(対して東アジアでは90%以上)に過ぎません。その結果、道路網が未整備な地域では物資の輸送コストが高騰し、届けるまでに時間もかかってしまいます。さらに多くの開発途上国で人口が急増し、輸血用の血液やワクチンなど命を救う物資の需要が高まっている状況です。医薬品さえあれば防げる感染症で亡くなる子どもや妊産婦も多く、例えば南スーダンでは5歳未満児の約10人に1人が予防可能な疾病で命を落としている現実があります。

SORA Technologyはこのような課題に対し、「空のインフラ」を構築する発想で解決に挑んでいます。ドローンなどエアモビリティを活用して拠点間を結び、緊急度が高く温度管理が必要な医薬品の小口配送をオンデマンドかつ安全に行うサービスです。具体的にはワクチンや血液検体などを対象に、小型ドローンでの定期便・緊急便を運用し、遠隔地にも迅速に届けます。これにより途上国で進められているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成や医療分野のDXにも貢献することが可能です。また、ドローン配送によって住民が素早く検査・治療を受けられるようになることは、現地の健康改善だけでなく感染症の大流行リスク低減にもつながり、グローバルな公衆衛生の向上にもメリットがあります。

今後はより大型のドローン機体による輸送も視野に入れ、誰もが必要な医療サービスにアクセスできる「エアモビリティ社会」を創っていくとしています。

資金調達:プレシリーズAラウンドにて累計6.7億円を調達

(引用:PR TIMES

SORA Technologyは創業から比較的短期間で着実に事業成果を積み重ね、資金調達でも順調な成長を示しています。

2023年3月にはシードラウンドにて1.3億円の資金調達を実施し、2025年3月にはプレシリーズAラウンドのファーストクローズを完了しました。この最新ラウンドではニッセイ・キャピタルやSMBCベンチャーキャピタル、DRONE FUNDなど複数の投資ファンドから出資を受けており、デットファイナンス(融資)も含めた累計調達額は約6億7千万円に達しました。

調達した資金は、感染症リスク予測の高度化に向けたAIアルゴリズム開発や、アフリカ現地での事業展開拡大、国際機関・政府との連携体制強化、さらにはドローン機体および運用体制の強化に充てられる計画です。創業者兼CEOの金子洋介氏は「ドローンとAIの力で“感染症による命の損失ゼロ”を目指す」というビジョンの下、開発加速と人材採用を進め、より多くの地域で社会的インパクトを創出していく決意を表明しています。

市場規模:日本国内ドローン市場規模は2027年度に7,933億円まで拡大

(引用:OTV OKITIVE「2022年度ドローンビジネス市場調査」

ドローン関連ビジネスは国内外で年々市場規模が拡大しています。OTV OKITIVEの調査によれば、2022年度の日本国内ドローン市場規模は3,099億円で、2027年度には7,933億円まで市場が拡大する見通しです。この背景には規制緩和(レベル4飛行の解禁)による事業機会の拡大や、建設・農業分野での需要増が挙げられます。

世界のドローン市場も同様に拡大している傾向です。特に産業用途(商業用)ドローンが市場拡大を牽引しており、2030年には世界の産業用ドローン市場が1兆4,000億円規模を超えるとの予測もあります。

このように、医療・物流分野におけるドローン活用も期待が高まっており、新興国の医薬品配送や災害時の物資輸送など、SORA Technologyが取り組む領域は今後ますます市場機会が拡大していくでしょう。

会社概要

  • 会社名:SORA Technology株式会社
  • 所在地:愛知県名古屋市西区那古野2丁目14-1 なごのキャンパス
  • 設立:2020年6月
  • 代表者:金子 洋介(Founder兼CEO)
  • 公式HPhttps://sora-technology.com/

まとめ

SORA Technology株式会社は、ドローン×AIという先端技術を駆使してグローバルヘルスと物流の課題解決に挑む気鋭のスタートアップです。マラリア対策では広範囲をカバーする自律型ドローンと高度なデータ分析で、従来困難だった蚊媒介疾患の予防に新風を吹き込みました。

医薬品配送の分野でも、空の道を拓くことで「届けられない」という諦めを過去のものにしようとしています。国内外の支援を受けつつ成長する同社は、テクノロジーによって「世界中どこでも健康で暮らせる未来」の実現に貢献すると期待されています。

今後はさらなる資金調達や技術開発を通じて事業を拡大し、アフリカをはじめとする現場での実装を加速していくでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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