Amazonに代表されるEC事業は、今や私たちの生活に欠かせないサービスです。経済産業省の報告によると、2022年のEC化率は「BtoC 9.13%」「BtoB 37.5%」を記録しており、ECの普及はさらに進んでいます。
この成長産業で重要な課題の1つが、「返品・キャンセル対応」です。商品に不具合があった際、迅速に返品や交換に対応できなければ、顧客満足度が低下してしまいます。しかし、返品処理には多くの手間がかかるため、円滑に進めるのは難しいとされています。
そこで、返品や保証といった「購入後の体験」に着目してサービスを展開しているのが「Recustomer株式会社」(以下、Recustomer)です。同社はEC事業者向けに、返品・交換・注文キャンセル業務を自動化できるサービスなどを提供しており、業務効率化・顧客体験の向上に貢献しています。
2024年9月には5億円の資金調達を成功させた、注目のスタートアップ「Recustomer」をくわしく紹介していきます。
事業内容:購入体験プラットフォーム「Recustomer」
Recustomerの事業内容は、購入後の体験向上・顧客接点創造を実現する購入体験プラットフォーム「Recustomer」の運営です。具体的には、用途別に3つのサービスを提供しています。
<Recustomerの3つのプロダクト>
- 「Recustomer 返品・キャンセル」:返品・交換・注文キャンセル業務を自動化
- 「Recustomer 自宅で試着」:ユーザーのお試し購入を可能に
- 「Recustomer 配送追跡」:注文を追跡してお届け予定日を通知
このようにRecustomerは、特別な購入体験を提供することで、ユーザーの体験向上を実現し、EC事業者の売上向上を支援しています。実際に導入ブランド数は200を突破しており、食品やファッション、インテリアなど、さまざまな業界において活用されているそうです。
「Recustomer 返品・キャンセル」業務効率化・顧客体験の向上を実現
「Recustomer 返品・キャンセル」は、Recustomerの代表的なプロダクトです。
このツールは、返品・交換・注文キャンセルといった手間のかかる業務を自動化することで、業務コストの削減と顧客体験の向上を実現します。また、最適な返品オペレーションを構築できるため、「これまで対応が難しかった返品対応を新たに開始する」といったアクションを取ることも可能です。
さらに、このサービスには「返品データ分析機能」が搭載されており、返品率やSKUごとの返品・交換理由、返金と交換の割合などを細かく計測できます。たとえば、「返品理由として不良品が多い場合は製造元にフィードバックを行う」など、分析結果をもとに商品開発やECサイトの改善に役立てることができます。
「Recustomer 自宅で試着」お試し購入をもっと簡単に
「Recustomer 自宅で試着」は、自社ECサイトでお試し購入を可能にするサービスです。ユーザーは0円で商品を注文でき、商品が届いた後、試着して購入を決めた商品だけが自動で決済されます。購入しない商品はアプリ上からサッと返送するだけです。
このサービスにより、ユーザーは実店舗に行かずに気軽に自宅で試着ができるため、ECサイトでの購入時に感じる「実物を見られない」という不安を解消できます。また、試着が無料でできるので、より気軽にショッピングを楽しむことができるでしょう。
事業者側にとっては、ユーザーが購入に前向きになるため、購入率や平均注文単価の向上が期待できます。さらに、購入や返品の理由をアンケートで収集することで、顧客の潜在的なニーズを分析し、商品やサービスの改善に役立てることも可能です。
「Recustomer 配送追跡」お届け予定日を表示して顧客の不安を解消
「Recustomer 配送追跡」とは、注文追跡・お届け予定日の表示と通知が行えるサービスです。
配送状況に関する通知をメールやSMSにて通知するため、「いつ届くのかわからない」という顧客の不安を解消し、納期や配送に関する問い合わせを削減できます。
また商品追跡ページを簡単にカスタマイズすることができるため、ブランディングはもちろん、バナーを活用したSNSへの導線やレビュー依頼、商品レコメンドなどのマーケティング施策が実施可能です。
資金調達:2024年9月にシリーズAで約5億円を獲得
Recustomerは2024年9月19日、SBIインベストメントをリード投資家とするシリーズAラウンドの第三者割当増資により、約5億円の資金調達を実施しました。これにより、累計資金調達額は8.6億円に達しました。
今回の資金調達を通じて、「Recustomer」のさらなる機能拡充を進め、今後の事業基盤の強化を図る予定です。
<今回の資金調達の概要>
- 調達金額:約5億円
- 調達方法:第三者割当増資
- 新規株主:SBIインベストメント・Salesforce Ventures・DBJキャピタル・博報堂DYベンチャーズ
- 既存株主:ALL STAR SAAS FUND・Coral Capital・Gazelle Capital・G-STARTUP・モバイル・インターネットキャピタル
- 資金用途:プロダクト開発・エンジニア組織体制の強化・セールス・マーケティングチーム、カスタマーサクセスチームの組織強化
市場規模:BtoC-ECの国内市場は2021年に約20.7兆円を記録
経済産業省によると、2021年度の日本国内のBtoC-EC市場規模は約20.7兆円で、前年の約19.3兆円に対して7.35%拡大しました。年々その規模は大きくなっており、EC市場は今後も世界的に成長し続けると予測されています。
「返品率の上昇に対応できるか」がEC事業の鍵に
EC市場の拡大に伴い、ユーザーの返品率も上昇しています。
Recustomerが発表したレポートによれば、2023年の返品率は6.61%で、前年の2022年から2.2%増加しました。さらに、返品率の増加に伴い、顧客都合による返品を受け付ける事業者も増加しており、2023年には68.3%に達しています。
これらのデータから言えることとして、今後のEC事業においては、返品・交換データを正確に収集・分析し、根本的な返品率の改善を図ることが重要です。また、返品・交換を「購入ハードルを下げる施策」や「ロイヤル顧客への手厚いサービス」として活用し、顧客とのタッチポイントとして売上向上に繋げることも有効な戦略となるでしょう。
企業概要
- 企業名:Recustomer株式会社
- 代表者:CEO 柴田 康弘
- 設立:2017年3月
- 所在地: 〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1-8-11 サン・センタービル5F
- 公式HP:https://recustomer.co/
まとめ
本記事では、購入後の体験向上・顧客接点創造を実現する購入体験プラットフォーム「Recustomer」を運営する、Recustomer株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Recustomer株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。