少子化や経済成長の鈍化、人口減少など、社会課題が多様化し複雑化する日本。しかし、政治や行政のリソースには限りがあり、すべての課題を解決することが難しくなっているという構造的な問題が存在します。
また、内閣府の調査では、7割以上の国民が自分の意見が社会に反映されていないと感じていると報告されており、国民と政治・行政の距離が広がっています。
このような状況下で必要なのは、個人や団体など多様な民間のプレイヤーが政治や行政と協力し、政策や取り組みを共創して社会課題の解決に取り組むことです。
そこで「株式会社PoliPoli」(以下、PoliPoli)は、こうしたニーズに応えるため、政策共創プラットフォームを開発しました。このプラットフォームを通じて、国民や民間団体と政治・行政が信頼関係を構築し、協力して社会課題に取り組むことができる仕組みを提供しています。
2024年10月には資金調達を成功させるなど、注目を集めるPoliPoliについて、その事業内容や資金調達を紹介します。
事業内容:政治・行政と国民をつなぐ6つのサービスを展開
PoliPoliは「政策共創」「官民共創」の2つを軸に、政治・行政と国民をつなぐ6つのサービスを提供しています。
- 「PoliPoli」:政治家や政党を応援し、政策リクエストを送れるウェブサイト
- 「PoliPoli Gov」:行政が抱える課題に対して、国民が意見を届けられるウェブサイト
- 「PoliPoli Enterprise」:企業や団体向けに、ルールメイキングをサポートするサービス
- 「政治ドットコム」:政治に関する情報をわかりやすく発信するメディア
- 「Policy Fund」:政策を軸にした社会課題解決のための寄付基金
- 「自治体共創ファンド」:ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を活用し、地域の課題を解決するプロジェクト
PoliPoliは、これらのサービスを通じて、政治・行政と国民が一緒に政策を作り上げる場を提供しています。さまざまなステークホルダーを巻き込むべく、複数のサービスを展開している点がPoliPoliの大きな魅力です。
PoliPoliの事業①「PoliPoli」政治家に意見を届けられるウェブサイト
PoliPoliが提供する「PoliPoli」は、政治家や政党を応援したり、政策に対して意見やリクエストを届けたりできるウェブサイトです。
このプラットフォームでは、政治家が自身の考える政策を投稿し、一般の人々がその政策に対してコメントしたり、直接政治家に会いに行ったりすることで、政策の実現をサポートできます。
PoliPoliの事業②「PoliPoli Gov」行政に意見を届けられるウェブサイト
PoliPoliが手掛ける「PoliPoli Gov」は、行政に対して意見を届けることができるウェブサイトです。このサイトを通じて、行政は住民の意見や要望を直接知ることができます。
具体的には、行政が知りたいテーマをサイト上で発信し、一般の利用者がそのテーマに対してコメントを投稿。投稿されたコメントは運営によるチェックを受け、承認されるとウェブ上で公開され、同時に行政にも届きます。これにより、行政の政策づくりがさらに進み、時にはコメント投稿者が行政とのさらなる意見交換に招待されることもあります。
PoliPoliの事業③「PoliPoli Enterprise」企業・団体のルールメイキングを支援
PoliPoliが手掛ける「PoliPoli Enterprise」は、企業や団体が政策提言・ルールメイキングを行う際にサポートを行うサービスです。
このサービスでは、政策提言に必要な情報のインプットやロジックの整理といった細かな部分も支援します。また、政策に関する最新情報のモニタリングや、特定の政策担当者とのマッチングも行うため、効果的なルールメイキングを実現できます。
企業や団体は、このサービスを活用することで新しいビジネスチャンスを生み出したり、既存のビジネスにおけるリスクを減らすことができ、健全な産業基盤を築くことが可能です。
PoliPoliの事業④「政治ドットコム」政治の情報をわかりやすく解説
PoliPoliが手掛ける「政治ドットコム」は、政治に関する情報をわかりやすく発信するメディアです。
政治家インタビューなど独自のコンテンツを扱っているほか、教育や医療など注目するテーマについて毎週ニュースレターを掲載してくれます。
PoliPoliの事業⑤「Policy Fund」社会課題の解決に向けた寄付基金
PoliPoliが手掛ける「Policy Fund」は、政策を軸にした、社会課題解決を加速するための寄付基金です。
この基金は、少子高齢化や貧困問題など、さまざまな社会課題に取り組むための資金を、個人の起業家や国内外の財団などから「寄付」という形で集め、それぞれの課題に応じた「基金」を設立する仕組みです。
集まった寄付金は、その課題に取り組むNPOや、政策を提案する政治家などに提供され、解決に向けた活動や研究、政策立案や提言に活用されます。また、PoliPoliがこれまでに培ってきた政策共創のノウハウを活かし、これらの政策提言プロセスも伴走支援します。
寄付をした人に経済的リターンはありませんが、代わりに社会に対するインパクトをリターンとして提供するのが本事業の興味深い点です。
PoliPoliの事業⑥「自治体共創ファンド」:SIBで地域課題を解決
PoliPoliが手掛ける「自治体共創ファンド」は、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を活用して地域課題の解決を支援する事業です。
このファンドでは、地域の課題に取り組む自治体、解決のノウハウや実績を持つ事業者、そして資金提供者を結びつける役割を担います。さらに、PoliPoliは資金提供者・中間支援組織として、各案件をリードし、地域課題の解決を推進します。
政策共創プラットフォームとして自治体・政府と民間事業者との共創を手がけてきたPoliPoliが、事業の実証実験から政策反映までを全面的にサポートする点が魅力です。
ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)とは
ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)は、社会課題を解決するための事業に、まず民間の資金を調達して初期費用を賄い、その事業が成果を上げた際に、行政が事業者に報酬を支払う仕組みです。
行政がリスクを抑えながら課題解決にチャレンジできるうえ、事業者は行政と連携しながら社会貢献活動に取り組めます。また、資金提供者は社会的投資を通じてインパクトを生み出せるので、全ての関係者にとってメリットのある仕組みとなっています。
資金調達:2024年10月にユナイテッドから調達
PoliPoliは2024年10月16日、ユナイテッド株式会社から資金調達を行ったと発表しました。この資金調達は、シリーズBに向けた「ブリッジファイナンス」という形で行われましたが、具体的な調達額は公開されていません。
なお、今回調達した資金は主に以下の用途に充てるとしています。
- 企業・団体向けルールメイキングサポート事業「PoliPoli Enterprise」やプロダクト開発などでの採用強化
- マーケティング等の既存事業の拡張
- ASEAN諸国をはじめとしたグローバル展開の探索を含む、新規事業の立ち上げ
ユナイテッドと「国策投資」に向けた事業連携を強化
今回の資金調達を通じて、PoliPoliとユナイテッドは、スタートアップ企業への「国策投資」と呼ばれる投資活動を通じて事業連携を強化します。
「国策投資」とは、政府や自治体が進める政策に関連した事業を行うスタートアップ企業に対して、投資を行う仕組みです。この投資によって、スタートアップは新たな成長機会を得る一方で、政府は政策実現の加速を図ることができ、社会全体としても様々な課題解決が促進されると期待されています。
国や自治体が政策を実行していくためには、その分野における民間の資金が重要な役割を果たします。国策関連のスタートアップに投資を行うことで、民間資金を政策分野に動員し、政策の実行をサポートしつつ、社会的なインパクトと経済的なリターンを同時に目指すという新しい投資の形です。
ルールメイキングのサポートも強化
さらに、PoliPoliは「PoliPoli Enterprise」というサービスを通じて、ユナイテッドが投資するスタートアップの政策提言活動をサポートします。これは、リソースが限られているスタートアップと政府を結びつけ、公益性のある政策づくり(ルールメイキング)を伴走支援する取り組みです。
ユナイテッドは、これまでに株式会社メルカリやエキサイト株式会社をはじめとする100社以上のスタートアップに投資し、その成長を後押ししてきた実績があります。特に、社会課題の解決に焦点を当てた「善進(ぜんしん)投資」と呼ばれる独自の投資テーマを掲げており、今回の「国策投資」との組み合わせにより、さらなる投資活動の拡大が期待されています。
企業概要
- 企業名:株式会社PoliPoli(ポリポリ)
- 代表者:代表取締役/CEO 伊藤 和真
- 設立:2018年2月
- 所在地: 〒102-0093 東京都千代田区平河町2丁目5-3 MIDORI.so NAGATACHO
- 公式HP:https://www.polipoli.work/
まとめ
本記事では、政治・行政と国民をつなぐ政策共創プラットフォームを開発する株式会社PoliPoliについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
株式会社PoliPoliのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。