今回紹介するのは、スカパーJSAT株式会社の社内発ベンチャー「株式会社Orbital Lasers」です。 Orbital Lasersは、レーザーを用いた宇宙事業を行っており、世界初のレーザーを用いたスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去を実現した、今注目のベンチャーです。
今回は、そんなOrbital Lasersが提供するサービスや、沿革、スカパーの社内ベンチャー制度についても紹介していきます。
事業内容:世界初のレーザー技術で宇宙のサステナビリティに貢献
Orbital Lasersは、民間企業で世界初の商用利用をめざして、レーザーによるスペースデブリ除去事業「スペースデブリ除去事業」と、高精度な地表面情報を提供する「衛星ライダー事業」の開発を行っています。
次の章で、この2つについて詳しく紹介していきます。
①スペースデブリ除去事業
Orbital Lasersでは、宇宙環境を改善するスペースデブリ除去事業を行っています。 安全な距離を保ってレーザーを照射し、制御不能で回転しているスペースデブリの姿勢を制御し、ゆっくり動かしながら大気圏に移動させて除去する技術です。
②衛星ライダー事業
まず、衛星に搭載されたレーザーを地球の表面に照射します。次に、その反射波を測定するLiDARシステムを使うことで、高精度で地表の高さを計測することができます。
この技術を応用することで、地球のよりリアルな3Dモデルと作ることや、森林の高さを計測することで求められるカーボンクレジットの評価を得ることができます。
Orbital Lasersは、この2つの事業を柱に宇宙事業を展開しています。
「Orbital Lasers」の可能性
スペースデブリとは、軌道上でいらなくなった衛星・ロケットなどの残骸のことです。その数はなんと1億個以上を越えており、過去には、衛星とスペースデブリの衝突事故が起きています。 今やスペースデブリは、今や地球温暖化や海洋プラスチック汚染と同様に重要な環境問題の一つです。
スカパーJSATとOrbital Lasersは、この問題に向き合いながら持続可能な宇宙環境の維持改善に貢献するとともに、今後も宇宙で実業する企業として歩みを進めていくそうです。
沿革:世界初の商用利用をめざして事業拡大予定
2018 年に、Orbital Lasersはスカパーの社内ベンチャー制度によって立ち上げられました。
2024年1月に、正式に法人化され、現在は事業拡大に向けて開発を行っているところです。
2025年には、DTB(Detumbling)事業、回転しているデブリを止めるレーザーペイロイドの開発・販売を予定しています。
2029年には、ADR(Active Debris Removal)事業、デブリを除去するサービスの提供を予定しています。
衛星ライダーズ事業は、サービス提供時期は未定ですが、開発が進められています。
創業ストーリー
ここでは、Uchu Bizに掲載された記事から、Orbital Lasersの創業ストーリーについて紹介していきます。
スカパーJSATは新事業の芽を探すために2018年に社内でスタートアッププログラムを募集しました。2019年に手を挙げたのが、新会社で代表取締役社長を務めている福島忠徳氏です。
福島氏は2005年にスカパーJSAに入社して、同社が運用する静止軌道衛星の運用準備マネージャーや低軌道衛星の運用設計、衝突回避の運用設計など衛星運用を14年間経験していたそうです。 衛星運用を経験してきたことでデブリがもたらすリスクを感じていたことから、社内スタートアッププログラムで、レーザーでデブリ問題を解決するプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトリーダーになりました。
以降、学術界や企業との連携を構築しながら、技術を開発するとともに事業も開発して、事業化の道を探っていたそうです。
スカパーの社内ベンチャー制度
スカパーJSAT株式会社では、スタートアップ支援プログラム「SUP」を実施しています。 社員が既存の業務にとらわれず自由な発想で新事業を企画することにより、新たな市場の開拓、競争力の強化、企業の価値創造を目的として行っているプログラムで、スカパーJSAT株式会社の社員であれば誰でも応募ができます。
応募後は、書類審査・プレゼン審査が課せられており、これらを通過したビジネスプランは、事業化に向けた検証を実施することができます。SUPでは、事業化準備に必要な人財、資金、ノウハウなどの支援も行っています。
SUPが2018年にスタートして以降、社員からたくさんの応募があり13件が採択されています。 詳しい事例を知りたい方は、こちらのサイトをご覧ください。
企業情報
会社名 株式会社Orbital Lasers
代表者 福島忠徳
本社所在地 東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR
設立年月日 2024年1月30日