最終更新日 24/09/13
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【Inversion Space】宇宙を倉庫に!?米宇宙軍と物流革命を起こす海外スタートアップ

大学発宇宙
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(引用元:https://www.inversionspace.com/news

本記事では1時間以内に地球上のどこへでも荷物を輸送することができるサービスを開発している、Inversion について紹介していきます。

Inversion は、設立3年目にして米宇宙軍の技術開発部門:SpaceWERXから7,100万ドルの資金を調達した今注目の企業です。現在は、ロサンゼルスに拠点を置き、宇宙を地球にとって実用的な輸送レイヤーに変えることを目標に宇宙事業に注力しています。

今回はそんなInversionの事業内容・沿革・起業ストーリー・将来展望などについて紹介していきます。

宇宙から地球へ物資を送り込む逆転の発想で、物流革命を起こす

(引用元:https://www.inversionspace.com/news

Inversionが取り組むプロジェクトInversion Spaceは「宇宙の倉庫」というコンセプトで、軍事物流に革命を起こそうとしています。

これまでの宇宙技術企業のほとんどが、宇宙に物資を送り込むことに注力してきましたが、Inversion Spaceは、宇宙から地球へ物資を送り込む新しいアプローチを取っているのが特徴的です。

現在は開発中ですが、早ければ2024年10月にスペースX社との共同ミッションで、技術検証のために「Ray」と呼ばれるカプセルを打ち上げる予定です。

将来的には、宇宙に貨物を保管し、必要なときに1時間以内に配達できるようにすることを目標としています。

Inversion Spaceが目指す「宇宙の倉庫」の特徴

①1時間以内のグローバル配送が可能

倉庫を宇宙に保有し、宇宙から直接荷物を目的地に届けることで、地球上では不可能な速さの配送を可能にします。目的地は地球上のどこへでも指定することができ、医療用品や戦場装備から小型のドローンまで、あらゆるものを輸送することが可能です。

②再利用可能なカプセルを使用

Inversion Spaceでは、再利用可能なカプセルを使用しており、配送時のコストを抑えています。

③宇宙ステーションへの物資供給が可能

Inversionは宇宙ステーションとも連携して物資供給を行うことを構想しており、政府の物流業務をより効率化します。

Inversion社の技術力の高さ

Inversionは、システムから構造、パラシュートに至るまで、ほぼすべてを自社で設計、製造しています。宇宙企業でパラシュートを自社で設計するところはほとんどなく、ゼロから設計するのは非常に困難です。しかし、Inversion のエンジニアリングチームは、昨年の2023年、パラシュートシステムの認定テストに合格しました。

Space Xとの共同プロジェクトを2024年10月に実施

Space X社のトランスポーター12型相乗りミッションとは、SpaceXの12番目のライドシェアミッションです。複数の積載物をロケットに相乗りさせることで、人工衛星をより安価で容易に打ち上げることができます。

この際にInversion Spaceが行うRayミッションでは、小型カプセルを数週間にわたって軌道上に留まらせ、搭載ロケットエンジンによる軌道離脱燃焼を開始します。ミッションの位置づけとしては、Inversionの技術力の検証です。

沿革:軍事物流の改革に向けての実証実験中

(引用元:https://www.inversionspace.com/https://www.spaceforce.mil/

現CEOであるジャスティン・フィアシェッティ氏と、共同設立者のオースティン・ブリッグスが、2021年に、Inversion社を設立しました。

設立から3年後の2024年9月には、米宇宙軍から7100万ドルを調達し、実証実験への資金源を獲得します。

2024年10月には、技術力の実証のために、Rayというカプセルを打ち上げる予定です。

2026年には、完全自律型グローバル配送を目指し、Arcという実物大の再突入機(人工衛星のうち、軌道から地表に到達させる又は空中で回収することを意図して再突入させるもののこと)の実証ミッションを開始しようとしています。

起業ストーリー:学生時代に思いついたアイデアを実現へ

(引用元:https://www.f4fspace.org/post/inversion-and-the-focus-on-return-with-justin-fiaschettihttps://x.com/jcfiaschetti

ここでは、Foundation for the futureが行った、現CEOであるジャスティン・フィアシェッティ氏へのインタビューから、Inversion社の起業ストーリーを紹介していきます。

フィアシェッティ氏は、ボストン大学で航空宇宙学を専攻中に、共同設立者のブリッグス氏と出会い、ボストン大学のロケット推進グループに一緒に参加しました。ロケット推進グループは、学部生として初めて、ロケットを宙へ打ち上げることを目指したグループです。

その後フィアシェッティ氏は、学部生中にインターンシップとして、Relativity Space社での装置の開発やスペースX社でのエンジンの地上支援装置の開発に関わります。

このような経験を通して、フィアシェッティ氏は、大学4年生の時にInversionのアイデアを思いつきました。 その後、フィアシェッティ氏とブリッグス氏は、学士号の取得を保留にし、Inversionの事業に本格的に取り組み始めました。

資金調達

Inversion社は、調達金額がわかっているものだけでも、設立から3年で8100万ドル以上の資金を調達していることがわかります。以下が公表されている過去の資金調達です。

実施日調達額投資家
2021年 3月 非公開AIN Ventures、他2人の投資家
2021年 8月 12.5万ドルFunders Club、Y Combinator
2021年 11月1000万ドルDavid Hodge、他9人の投資家
2022年 7月 非公開Pioneer Fund
2024年 9月7100万ドル米宇宙軍

将来展望:軍だけではなく民間へも顧客拡大へ

(引用元:https://medium.com/inversion-space/the-importance-of-incorporating-the-regulatory-mindset-into-new-space-entrants-early-designs-5d235cf5b6dfhttps://spacenews.com/inversion-space-targets-military-market-with-warehouses-in-space/

Inveision社は現在、軍事向けのサービスをメインで開発しています。

フィアシェッティ氏はインタビューの中で、「軍隊は常に、世界中への迅速かつ正確な貨物の配送を必要としています」とも、国防総省を主要顧客とみなす理由を話しています。

一方で、軍の顧客への導入が成功したことで、Inversion Spaceのコストはコストが下がり、民間航空や航海などの分野で、商用化が可能になると期待されています。

企業情報

会社名    Inversion

代表者    Justin Fiaschetti

本社所在地  19148 Van Ness Ave, United States

設立年月日  2021年

従業員数   11-50名

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