近年、若者のメンタルヘルスへの関心が高まっています。
ストレスや不安を抱える人が増える中、こうした悩みに寄り添う新たな解決策として注目されているのが、emol株式会社。
同社はAIチャットによるメンタルヘルスセルフケアを目的としたアプリ「emol(エモル)」を提供しており、メンタルヘルスケアを”当たり前”にし健康な社会を創ることを目標にしています。
本記事では、同社の事業内容・市場規模等について詳しく説明していきます。あなたの会社にも役立つヒントが見つかるかもしれません。
事業内容:ヘルスケアアプリ「emol(エモル)」の開発
emol(エモル)は、感情を記録してAIロボと会話するアプリです。気軽にAIと話しながら、自身の感情を向き合うことを目的とします。
emolの使い方
emolはAIロボの「ロク」とチャットで会話することで、ユーザーの感情の記録をとっていきます。
使い方は以下の通りです。
- 感情を記録
- いらいら、うれしい、かなしいなど9つの感情からその時の感情を選びます
- AIとチャットでお話し
- 吐き出したい気持ちや、感じたこと、思ったこと、今していることなどをAIに話して記録をとります
- 自分を振り返る
- 過去の記録を振り返って、客観的に観測してみます。その時になぜ何をそう思ったか自身で気づくことができます。
その他のサービス
emol株式会社は上記に紹介した「emol」の他にも、その人に合わせたメンタルヘルスケアアプリを提供しています。
従業員のこころのケアを促進する「emol for employee」
emol for Employeeは、従業員のこころのケアを促進するデジタルセルフケアプログラムです。
AIとのチャット会話を通じて、認知行動療法に基づいたメンタルセルフケアを実践します。
産前・産後のメンタルヘルスをケアする「emol for maternity」
妊産婦の方、またそのパートナーの方の産前・産後のメンタルヘルス悪化の予防を目的としたデジタルセルフケアプログラムです。
小・中学生対象の「emol for school」
小・中学生を対象としたメンタルヘルス対策・校務支援サービスです。
児童の日々の心身の健康を観察することで、変化をいち早く察知し、
メンタルヘルスの悪化を防ぎ、いじめなどの問題を未然に防ぎます。
それぞれの詳細については、emol 公式サイトをご覧ください
創業ストーリー
就活の挫折が起業の原点に
創業者の千頭氏が起業を意識し始めたのは、大学4年生の時。美大出身で極度のあがり症を持っていたため、就職氷河期という厳しい環境の中で就職活動に苦戦していました。面接では頭が真っ白になり、自分をアピールすることもできず、何度も落選を繰り返しました。
「このままどこかの企業に入るのではなく、自分でやれることを仕事にしたい」。そんな思いから、大学卒業後に独学でプログラミングを学び、1年後に最初の会社とサービスを立ち上げました。そのサービスは残念ながら成功しなかったものの、その後エンジニアとしてWebやアプリ開発の受託を続けながら、次のサービスのアイデアを模索していきました。
自身の経験が生んだ『emol』
千頭氏のメンタルヘルスへの関心は、自身の過去の経験に根差しています。学生時代、人の顔色を気にしすぎて傷つきやすく、学校に行くのが辛くなることも多々ありました。けれど、誰にもその辛さを相談できず、一人で抱え込む日々を送っていました。
「人に相談したいけれど、弱みを見せるのが怖い」「精神科やカウンセリングに行くのも抵抗がある」。そんなジレンマを抱えながらも、「誰かに相談したい」という気持ちはいつも心の中にありました。その思いが、後に感情記録アプリ『emol』の着想につながります。
「人ではなくAIやキャラクターが相談相手になれば、相手の顔色を伺う必要もないし、批判されることもない」。千頭氏はこうしたアイデアを形にし、自分と同じように「相談したいけど話せない」人たちが安心できる場所を作りたいと考えました。そして、2018年3月にリリースされた『emol』は、AIキャラクター『ロク』がユーザーの悩みに寄り添い、心の支えとなる画期的なアプリとして誕生したのです。
資金調達:シリーズAで3.15億円の資金調達
emol株式会社は、2025年1月にシリーズAラウンドにおいて3.15億円の資金調達を実施しました。
今回の調達ではグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社をリードとし、
資金は精神疾患領域の治療用アプリの臨床研究の推進及びPatient Care Programの実現に向けた人材採用の強化に充てられます。
市場規模:SaMD市場は2022年に約190億ドル
Emergen researchによると、SaMD*市場規模は2022年に190億2000万ドルでした。同市場は2032年までに23.6%の年間成長率を見せると予想されています。
市場成長の背景には、医療提供者によるリモート患者監視の需要増加や、SaMDの規制サポート、政府機関による医療サービスへの支出の増加があるそうです。
※Software as a Medical Device(医療としてのソフトウェア)の略で、「SaMD(サムディー)」と呼ばれています。疾患の治療や服薬の管理等健康を維持するためのデジタルアプリのうち、流通・販売にあたって薬事承認が必要なもののことを指します。
将来展望
emol株式会社は、今後SaMDの開発・提供だけではなく周辺の医療サービスの提供をすることで、デジタル治療がより身近で優れた医療体験の実現に繋がると考えています。
同社はSaMD開発を行う「SaMD事業」と周辺の医療サービスを提供する「医療DX事業」の2本の柱を推進し、
パーパスである「メンタルヘルスケアを”当たり前”にし、健康な社会を創る」ことを目指します。
精神疾患DTxの開発を行う「emol」、3.15億円のシリーズA資金調達を実施
会社概要
会社名:emol株式会社
所在地:東京都豊島区東池袋3-21-18 第一笠原ビル3F
設立:2019年3月18日
代表:千頭沙織
まとめ
本記事では、AIチャットによるメンタルヘルスセルフケアを目的としたアプリケーション「emol(エモル)」を提供するemol株式会社について紹介してきました。
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