近い将来、豚肉だけでなく牛や鶏などの肉が食卓から消えてしまうかもしれません。世界人口はこの20年で30%以上増加し、現在80億人に到達しました。それに伴い、食肉の生産量も増加し、年間2.6億トンに達しましたが、供給は限界に近づき、タンパク質危機が懸念されています。
さらに、現在の畜産業は飼料や水など多くの環境資源を大量に必要としており、今後も安定的に肉を生産するためには、環境負荷の軽減が不可欠です。
しかし、日本では、後継者不足や生産コストの増加により、畜産農家の数が減少しており、2000年の約11,700軒から2021年には3,590軒にまで減少しました。このままでは肉だけでなく、食に関わる文化も失われてしまいます。
そこで「誰もが安心して豚肉を楽しむ未来を守ること」をミッションに、この問題に取り組んでいるのが「株式会社Eco-Pork」(以下、Eco-Pork)です。同社はICTを活用した情報可視化ツール「Porker」の提供や、IoTセンサーの開発を通じて、養豚農家の生産性向上・疾病対策などに取り組み、持続可能な豚肉の供給と環境負荷の低減を目指しています。
「『Sustainnovation ピッチ』にて最優秀賞に選ばれる」「『儲かる農業2024』にて農業ツール選手権3位を獲得する」など、注目を集めるEco-Porkについて、その事業内容等を紹介していきます。
事業内容:AI・IoT・ICTを活用した持続可能な畜産を提供
Eco-Porkは、養豚に関する持続可能なエコシステムを創造するため、AI・IoT・ICTを軸にさまざまなサービス・製品を開発しています。
<Eco-Porkの事業一覧>
- 養豚経営支援システム「Porker」の開発・提供
- 豚舎内モニタリング用IoTセンサーの開発・提供
- 豚肉生産性・資源効率性を向上させるハードウェアの開発・提供
- 豚肉の流通事業
Eco-Porkの代表サービス:養豚経営支援システム「Porker」
Eco-Porkが提供する「Porker」は、ICT・IoT・AI の3つのテクノロジーを活用して、養豚業を改善するクラウド型の経営支援システムです。
このシステムでは、豚舎内をモニタリングするIoTセンサーとデータを連携したり、スマートフォンやタブレットから入力された情報を即座に共有したりすることができます。これにより、豚舎内で何が起きているのかをすべて見える化し、生産に関する課題を効率的に分析できるため、生産性の向上と環境負荷の軽減が可能になります。
そのため、「作業記録をリアルタイムにデータ化し、スタッフ間で共有したい」「農場内のすべての情報を一元管理し、成績向上につなげたい」といった悩みを解決することが可能です。
話題のニュース:「Sustainnovation ピッチ」にて最優秀賞を受賞
食品のロスを減らすためのオンラインマーケット「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシは、Future Food Fund株式会社と共同で、2024年10月22日(火)に「Sustainnovation ピッチ」を開催しました。
このピッチイベントでは、食に関する課題解決に取り組むスタートアップ企業5社が参加。その中でも、Eco-Porkは事業全体を大きく変える可能性や、将来的な成長性、フードテック分野の広がりを感じさせる点が高く評価され、見事に最優秀賞を受賞しました。
エッグフォワード株式会社の代表取締役社長を務める徳谷 智史氏からは、「サステナビリティや社会意義だけでなく、現場感に基づいた事業構想が素晴らしい」と評価されています。
資金調達:2024年6月に岡三キャピタルパートナーズから調達
Eco-Parkは2024年6月14日に、岡三キャピタルパートナーズ株式会社が運営するファンドから資金調達を実施したと発表しました。なお、調達金額については明らかにされていません。
岡三キャピタルパートナーズのプレスリリースによると、Eco-Porkのユーザビリティの高いシステムと、豚肉供給の安定化・温室効果ガスの削減といったソーシャルインパクトに注目し、新株の引受に応じたとのこと。
Eco-Parkは今回の資金調達を通じて、プロダクト開発や体制を強化する予定です。ICT / IoT / AIを活用した、データ管理による国内外養豚業の更なる持続可能化に取り組み、養豚や豚肉を未来に継承していくとしています。
2023年9月にシリーズBファーストクローズで2.2億円を資金調達
Eco-Porkは2023年9月28日に、シリーズBラウンドのファーストクローズとして約2.2億円の資金調達契約を締結したと発表しました。この資金調達は、QBキャピタルが主導する第三者割当増資という形式で行われました。
今回の資金調達の目的は、事業拡大を目指したプロダクトの開発・他社との事業提携です。具体的には、Future Food Fundやベルシステム24ホールディングス、森久保薬品などとの連携によって、Eco-Porkのサービスをさらに強化・発展させていくことを目指しています。
<本資金調達の概要>
- 時期:2023年9月28日
- ラウンド:シリーズBファーストクローズ
- 調達方法:第三者割当増資
- 調達金額:2.2億円
- 投資家
- QBキャピタル(リード投資家)
- ベルシステム24ホールディングス株式会社
- 森久保薬品株式会社
- Future Food Fund
- オイシックス・ラ・大地株式会社が運営する食領域特化型CVC
- OKB・名南ベンチャー支援1号ファンド
- 株式会社OKBキャピタルと名南M&A株式会社が共同運営
企業概要
- 企業名:株式会社Eco-Pork(Eco-Pork co., ltd.)
- 代表者:創業者/代表取締役 神林 隆
- 設立:平成29年11月29日(平成で一度の“いい肉の日”)
- 所在地: (東京拠点)〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21-7
- 公式HP:https://www.eco-pork.com/
まとめ
本記事では、AI・IoT・ICTを軸に養豚に関する持続可能なエコシステムを創造する株式会社Eco-Porkについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
株式会社Eco-Porkのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。