最終更新日 24/12/07
国内スタートアップ

【booost technologies】伊藤忠商事との戦略的連携を発表!サステナビリティ情報開示を支援する注目企業

ITサステナブル
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(引用:booost technologies公式HP)

今回ご紹介するのは、「booost technologies株式会社」(以下、booost technologies)という注目のスタートアップ企業です。 同社は、企業のサステナビリティに関する情報開示を支援するサービス「booost Sustainability Cloud」を提供し、企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を後押ししています。

サービス開始からわずか数年で、大企業を中心に導入が進み、2024年10月末時点では、世界80ヶ国以上で約2000社・180000拠点以上の導入実績を誇っています。さらに、このような高い実績や機能性が評価され、2024年11月には伊藤忠商事との戦略的連携が発表されました。

このように、booost technologiesは国内外でますます注目を集めており、今後の成長が期待される企業の1つです。本記事では、booost technologiesについて、その事業内容や今後の展望を紹介します。

事業内容:企業のサステナビリティ化(SX)を支援

(引用:booost technologies公式HP)

booost technologiesの事業内容は、「booost Sustainability Cloud」の開発運営と、サステナビリティコンサルティングサービスの提供です。同社の最大の特徴として、根底に「Sustainability ERP」という独自の考え方があります。

「Sustainability ERP」とは、グローバル企業が非財務情報を効率的かつ適切に管理するための「統合型SXプラットフォーム」です。このコンセプトをもとに、国内外のサステナビリティ開示基準(CSRDやISSBなど)への対応を実現し、企業価値の向上を目指すエンタープライズ企業のSXやGX(グリーン・トランスフォーメーション)を支援しています。

(引用:booost technologies公式HP)

そして、booost technologiesの中核プロダクトである「booost Sustainability Cloud」は、「Sustainability ERP」の理念を具体化したツール群です。このクラウドサービスは、環境・社会・ガバナンスに関連する1200以上のデータポイントを対象に、情報収集と集計の自動化を実現します。さらに、リアルタイムでのデータモニタリングを可能にし、国際的な開示基準に完全対応した効率的なサステナビリティ情報の管理をサポートします。

加えて、「booost Sustainability Cloud」はグローバルなデータガバナンス機能を搭載しており、企業グループやサプライチェーンを含む多層的な承認フローの実装が可能です。また、第三者保証への対応機能も備えており、企業のサステナビリティ情報開示業務を包括的に支援します。このように、業務の効率化と最適化を支える柔軟な機能が同サービスの最大の魅力です。

2024年10月末時点で、このサービスは大企業を中心に80か国以上、約2000社、186,000拠点以上に導入されています。さらに、同社は先述の通り、サステナビリティコンサルティング事業も展開しており、企業のSXプロジェクトを推進し、企業価値の向上に貢献しています。

青井宏憲CEOが語る「booost technologiesの強み」

(引用:BUSINESS INSIDER)

booost technologiesの青井宏憲CEOは、2024年11月28に開催した事業戦略発表会で、同社の最大の強みについて次のように述べています。

「グローバルで数百もの拠点のデータを効率よく、しかもガバナンスを効かせながらデータを収集するのは極めて難しく、それを実現できるのが我々のシステムの(他社にない)唯一無二のところです」

また、「事業活動が自然環境や社会システムにどのような影響を与えているのか」という非財務情報と、「それが財務上どのように影響するのか」という財務情報を詳細に提供できる点も大きな特徴です。

「PL/BSにマイナスのインパクトをどれだけ与えるのか、またPL/BSの勘定科目のどの部分にどの程度のプラスのインパクトを与えるのか。それを1円単位で算出できる特許を持っているので、ESGのリスクとプレミアムを加味した企業価値を算定できる。これができる企業は(世界に)ほぼありません」

このように、事業への影響が金額で示せるため、投資判断が明快になり、事業構造を効果的に変革していけるようになるでしょう。

資金調達:シリーズA以降の調達総額は33.5億円に

(引用:booost technologies公式HP)

booost technologiesは2024年11月28日、One Capitalをリード投資家として、伊藤忠商事、BIPROGY、パーソルビジネスプロセスデザインを引受先とする第三者割当増資により、シリーズBラウンドの資金調達を実施しました。これにより、2022年4月に完了したシリーズAラウンド以降、累計で33.5億円の資金を調達しています。今回調達した資金は、プロダクト開発の強化や組織拡大に向けた人材採用に活用される予定です。

また、この資金調達に伴い、伊藤忠商事BIPROGY、パーソルビジネスプロセスデザインの3社と資本業務提携契約を締結しました。この提携により、各社とのパートナーシップをさらに強化し、グローバル企業向けにサステナビリティ情報の開示を起点としたSX支援を推進する計画です。

「日本をSX先進国へ」プロジェクトを発足

(引用:booost technologies公式HP)

同日、booost technologiesは「日本をサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)先進国へ」プロジェクトを発足したことも発表しました。このプロジェクトは、2027年3月期以降に義務化される有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示(SSBJ基準)を契機として、日本企業のサステナビリティ経営を加速することを目指しています。

SX推進の背景と課題

近年、日本では企業価値が株価を下回る「PBR1倍割れ」の企業が増加しています。この背景には、企業評価の指標が財務情報だけでなく、サステナビリティ情報にも広がりつつあることが挙げられます。

しかし、国際的なSX推進に比べ、日本企業の取り組みは遅れている状況です。特に、サステナビリティ経営の重要性に対する社内理解の不足や、データ収集・活用基盤の未整備が課題とされています。これらは短期的な損益への偏重や、非効率的な開示業務による負荷の高さが原因でしょう。

また、国際的にはサステナビリティ情報の開示基準を整備する動きが進んでおり、国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)が2024年1月に新基準を発効しました。

一方で、日本ではSSBJが2027年以降、段階的に基準を適用していく方針です。具体的には、2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業、2028年3月期から時価総額1兆円以上の企業、2030年以降にはすべての東証プライム市場上場企業が対象となります。

SX推進に求められる対応

(引用:booost technologies公式HP)

サステナビリティ情報の開示が義務化されるにあたり、第三者の保証や高度な内部統制が必要なため、その正確性や迅速性、網羅性が一層求められます。特に時価総額3兆円以上の企業は2027年3月期から基準が適用されるため、2026年中に対応を終わらせることが必要です。

この「サステナビリティ2026問題」に対し、企業は早急に対応を進めることが求められています。

booost technologiesの取り組み

booost technologiesは、グローバル企業が抱える「サステナビリティ2026問題」を解決するため、以下に注力しています。

  • サステナビリティデータ収集業務の効率化
  • 全社的なSX推進体制とデータ基盤の構築
  • 開示業務の効率化とともに、経営改善につながる情報活用の推進

同社は本プロジェクトを通じ、日本全体でSX推進の重要性を共有し、実行可能な解決策を提案・実施していく予定です。

サステナビリティ2026問題 "日本をSX先進国へ"プロジェクト
2027年3月期からサステナビリティ情報の有価証券報告書での開示が義務化されます。「日本をSX先進国へ」プロジェクトでは、「サステナビリティ2026問題」を乗り越え、日本企業のSX推進と企業価値向上を通してグローバルでのプレゼンスを取り戻し...

市場規模:国内サステナビリティ/ESGサービスは2028年に約3800億円規模へ成長

(引用:IDC Japan)

IDC Japanの調査によると、2024年の国内サステナビリティ/ESGサービス市場規模は前年比17.8%増加し、2310億円に達する見込みです。

この市場は今後も成長を続け、2028年には3772億円規模に拡大すると予測されており、2023年から2028年の年間平均成長率(CAGR)は14.0%に達するとみられています。

2024年の市場を牽引する要因

2024年には、GHG(温室効果ガス)排出量を測定する局所的な取り組みから、サプライチェーン全体に関わる産業横断的な取り組みまで、幅広い案件が市場を牽引します。

また、自動車業界では企業や業界、国境を超えたデータ連携基盤が稼働を開始し、サーキュラーエコノミーをテーマにしたサステナビリティプラットフォームが本格的に始動することが注目されています。

今後の市場動向と成長要因

2024年から2026年にかけて、GHG排出量の算定や、EUで導入が予定されているDPP(デジタルプロダクトプラットフォーム)のバッテリーパスポートに向けた準備投資が活発化する見通しです。

バッテリーパスポートは、対象バッテリーの製造日時や場所といった基本情報に加え、原材料構成やカーボンフットプリントに関する情報の掲載が義務化されるもので、2026年後半から2027年前半に導入が予定されています。

2027年はバッテリーパスポート対応投資の反動で成長率は一時鈍化しますが、2028年以降は再度、ネイチャーポジティブなどに関わる案件の増加に伴い市場は拡大する予測です。

創業者プロフィール:青井 宏憲

(引用:booost technologies公式HP)

2010年に東証一部コンサルティング会社に入社し、スマートエネルギービジネスチームのリーダーを経て、2015年4月にClimate Techカンパニーbooost technologies株式会社を設立。 スマートエネルギー全般のコンサルティング経験が豊富で、脱炭素化のためのソリューションとして、創エネ、省エネ、エネマネにも精通。

企業概要

  • 企業名:booost technologies株式会社
  • 代表者:代表取締役 青井 宏憲
  • 設立:2015年4月15日
  • 所在地: 〒141-0032 東京都品川区大崎1-6-4 新大崎勧業ビルディング10F
  • 事業内容:booost Sustainability Cloud(booost GX、booost Supplier、booost ESG、booost Energy)の開発運営
  • 公式HP:https://booost-tech.com/

まとめ

本記事では、企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を支援するbooost technologies株式会社について紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

booost technologies株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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