現在、急速に技術が進化する中でも、物流業界には依然として多くの課題が残っています。その代表例が「2024年問題」です。これは、トラックドライバーの労働時間短縮により輸送能力が不足し、物資の運搬が困難になるという問題を指します。それだけでなく、トラックの排気ガス等の環境問題も現存しています。
これらの問題解決に取り組むため、韓国のスタートアップBANFは「タイヤ」に注目しました。BANFは、タイヤの状態をリアルタイムでモニタリングする装置を提供し、これによりタイヤの効率的な管理を実現。燃費効率の向上やトラックの安全性の強化に貢献しています。
本記事では、BANFの事業内容や資金調達、将来展望等について詳しく紹介します。
事業内容:タイヤのリアルタイムモニタリング
韓国のスタートアップBANFは「タイヤのリアルタイムモニタリング」に注目しました。同社のモニタリング装置は、タイヤの効率的な管理を可能にし、燃費効率やトラックの安全性向上に貢献。主に以下の2つの事業を中心に行っています。
1. 自動車メーカー向けタイヤセンサーシステム
BANFは、自動車メーカー向けに安全性と燃費効率を強化するタイヤセンサーシステムを提供しています。このシステムは、タイヤの空気圧、温度、摩耗状態、ホイールアライメント、ラグナットの緩み、さらには荷重や路面状況までをリアルタイムで監視。顧客は、早期の故障検知による事故予防や燃費向上(最大20%)、タイヤ摩耗の削減(15%削減)が期待できます。
2. 道路管理者向け路面状況確認技術
BANFはまた、ITS(高度道路交通システム)および道路管理向けに路面の状況確認技術を提供。道路メンテナスを目的とした車両のタイヤが、路面と直接接触することで、路面状況や異常の即時検知と分析が可能。これにより、路面異常の早期発見や道路保全の効率化が期待できます。
料金と導入実績
BANFのシステムは、1台あたり月額50ドルで提供されています。燃費改善やタイヤ摩耗の抑制により、1台あたり年間最大4500ドルのコスト削減が見込まれます。現在、Volvo Group、Hyundai Motor Group、DHLと提携しており、123台の車両で同システムが稼働中。アメリカのタイヤメーカーとのパートナーシップも進行しており、2026年までの商業化を目指しています。
資金調達と将来展望
BANFの直近の資金調達についてまとめています。
同社は、2022年に500万ドルのプレシリーズA資金を調達。 さらに1200万ドルのシリーズA資金調達を目前に控えてるそう。そして、2027年には韓国の証券取引所への上場を目指しており、米国ナスダック市場での上場も視野に入れています。(出典はこちら)
主な出資元
- KB Investment
- Mirae Asset Capital
- Mirae Asset Venture Investment
- Kibo Technology Fund
- Timefolio Asset Management
目的
北米市場への進出に注力。自動車メーカーやフリート企業との提携の強化。
創業の経緯:起業サークルで偶然見出したタイヤの可能性
BANFの創業者ユ・ソンハン氏は、ソウル大学で電気コンピュータ工学を学び、在学中に起業サークルで活動するなど、常に起業に強い関心を持っていました。2016年、偶然目にしたタイヤ企業の財務諸表で、業界の利益率が一般の大企業を上回る15%であることに驚き、収益性とイノベーションの可能性に着目。
特に注目したのは自動運転トラックのタイヤでした。24時間稼働が前提の自動運転車はタイヤの摩耗が早く、交換頻度が上がることで、事故リスクも高まります。この課題に対し、ユ氏はタイヤ内部にセンサーを設置し、摩耗や破損の兆候をリアルタイムで検知する「タイヤ監視システム」を開発。これにより、トラックの燃費効率や安全性向上を目指したのがきっかけだそう。
参照:https://www.korit.jp/news_letsstartup_banf
会社概要
- 企業名:BANF
- 代表者:Jae Hyung Lee(CEO)
- 設立:2019年
- 所在地:韓国 ソウル
- 公式HP:https://banf.ai/
まとめ
本記事では、タイヤセンサーシステムを開発するBANF社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目の海外スタートアップを多数紹介しています。
BANFのようなモビリティ技術企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。