最終更新日 24/07/05
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【Arctic Farming】宇宙農業技術を日常生活へ

宇宙農業
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「Arctic Farming」は、屋内農業を主流にすることで、食糧生産を一新することをミッションに掲げるフィンランドのスタートアップ企業です。同社は、日常生活で宇宙農業技術を使えるようにする室内農業器具を開発しています。

本記事では、同社の主力製品である「HERBY」を中心に、同社の事業内容等を紹介していきます。

家の中でミニチュアファームを実現

室内農業器具「HERBY」とは

同社の主力製品である「HERBY」は、冷蔵庫のような大きさの室内農業器具です。その中で、作物を自動で育てることができます。NASAの技術に基づいており、植物の種類に合わせて最適な成長環境を維持します。このユニットを電源と水道に接続するだけで、いつでも新鮮な食材を手に入れることが可能です。

「HERBY」の4つの特徴

1. 垂直面デザイン

「HERBY」は垂直に傾斜した表面で植物を栽培します。垂直的なデザインのおかげで、狭いスペースで植物を栽培することが可能。

2. 新しい灌漑方法:「クローズドループ灌漑」

「HERBY」はNASAの国際宇宙ステーションでの研究に基づいた、新しい灌漑方法を採用しています。余分な水は*クローズドループで再利用され、従来の農法と比べて95%未満の水しか使用しません。

*「クローズドループ」とは、廃棄された水を再利用することを指します。 水の中の不純物を取り除き、きれいな水としてもう一度使用する、ということです。

3. データトラッキング

内蔵のセンサー群が様々な生育変数(気温・湿度・光)を収集し、植物種ごとの生育環境を自動的に最適化します。最適な条件下で植物を育てられるので、より栄養価の高い植物をつくることが可能です。

4. 「SEEDPOD(苗床)」

苗床は独自の「SEEDPOD」と呼ばれる苗を使用しています。「SEEDPOD」によって、いつでも新しい植物を育てることができます。

「SEEDPOD」の使い方に関しては、以下の公式サイトを参照してください。

Welcome to the world of Seedpods

https://www.arcticfarming.io/seedpods

会社沿革:兄弟で始めた農業製品の開発

同社のはじまりは、「新鮮な食品を屋内で栽培できないか」というオリバー兄弟の想いからであった。 2018年、オリバー氏は、室内農業が可能な製品のプロトタイプを初めて作りました。材料は大学構内でスクラップから集めたといいます。

2020年、既存の小規模室内農業製品を試行錯誤していくなかで、「冷蔵庫サイズの農業器具」というコンセプトに決定。

2022年には、実際のユーザーから多くのフィードバックを集めるために、上記の「冷蔵庫サイズの農業器具」の試験運転を開始。

現在は、収集したフィードバックをもとに、室内農業用電化製品の「HERBY」を開発・販売しています。

資金調達

「Arctic Farming」は、2023年、垂直農法技術を市場に投入するためのシードラウンドで15万ユーロを調達しました。

今回の新たな資金調達により、ヘルシンキ地域に、室内農業用電化製品の「HERBY」を提供できます。

市場規模:垂直農法市場規模は2032年までに399億米ドル

(出典:https://www.precedenceresearch.com/vertical-farming-market

Precedence Statisticsによると、世界の垂直農法に関する市場規模は、2032年までに399億米ドル規模です。2023年から2032年までのCAGRは22.89%であり、垂直農法の市場規模は2022年に51億米ドルと評価されました。

将来展望:垂直農法の可能性

(出典:https://gigazine.net/news/20200519-vertical-farming-is-future-food/

「Arctic Farming」は、「屋内農業を主流にすることで、食糧生産を一新する」というミッションを掲げています。

世界人口の増加・都市化の進展・気候変動などの要因により、食料需要は急速に高まっています。しかし、従来の農業方法は、これらの課題に対応することが困難になりつつあります。

垂直農業は、未来の食糧生産方法として注目を集めています。 垂直農業が従来の食糧生産よりも優れている点は、場所とコストです。 場所に関しては、地域の環境条件にかかわらず、ほぼどこでも農作物を生産できることです。 コストに関しては、都市部や人口密集地域で生産ができるので、販売までの輸送と保存のコストが大幅に削減されます。

さらに、垂直農業は新たなビジネス機会を生み出す可能性があります。 IoT技術や自動化システムを活用した農業用具やソリューションの需要が高まることが予想されます。さらに、農業教育や研究機関における研究開発活動の重要性も高まるでしょう。

このような展望から、垂直農業は将来の食料生産において重要な役割を果たす可能性があります。環境に配慮した持続可能な方法で食糧安全保障を確保するために、垂直農業は今後ますます注目されるでしょう。

会社概要

会社名:Arctic Farming
位置:フィンランド
URL:https://arcticfarming.fi/
設立:2019年
従業員数:1-10名

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