株式会社ALE(以下、ALE)は、宇宙エンターテインメント事業を展開するスタートアップです。
主な事業は人工流れ星の開発で、世界各地の大規模イベントで人工流れ星を降らせることで収益化を想定しています。
本記事では、同社の事業内容・市場規模・資金調達等について詳しく説明していきます。
世界初の人工流れ星事業「Sky Canvas」
ALEの主力事業は、人工で流れ星を再現する「Sky Canvas」です。
天然の流れ星は、宇宙空間に漂う塵が大気圏に突入し、空力加熱*により発光したものです。 ALEはこの現象を、独自の技術で人工的に再現しました。
同社は流れ星の素となる粒(流星源)を人工衛星に搭載し、位置・方向・速度をコントロールして放出することで、人工流れ星を発生させます。
人工流れ星は、天然の流れ星と比較してより長く発光することが特徴です。また、人工流れ星から得られる中層大気データは、気候変動メカニズムを解明する手がかりとして活用されます。
同社は、将来的に世界各地の大規模イベントで人工流れ星を降らせることで収益化を想定しています。
※ 空力加熱:物質が気体中を超音速で飛行する際に、物質の先端部で空気が強く圧縮され、高温となる現象。
イメージビデオ
ALEは、安全性や環境への配慮も行なっています。
【安全性】
JAXAなどの厳しい安全基準をパスしており、打上げ場所や宇宙での活動を行うために各国の許認可を取得しています。
【環境配慮】
人工流れ星の流星源は、地球に宇宙から毎⽇数⼗トンという膨⼤な量が降り注いでいる物質と同じ素材で作られています。
地上・宇宙双⽅の環境への影響がないことを確認した無害な物質で作られているため、環境への負荷はありません。
⼈⼯衛星や流星源は地球の⼤気圏へ突⼊する際、空⼒加熱現象により⾼度約60~80kmで完全に燃え尽きるため、宇宙デブリ*とならないように安全に処理され、また地上に落ちる恐れはありません。
※宇宙デブリ(スペースデブリ)とは、軌道上にある不要な人工物体のことです。運用を終えた人工衛星や、故障した人工衛星、打ち上げロケットの上段、ミッション遂行中に放出した部品、爆発や衝突により発生した破片等があります。
大気データ事業「Atmospheric Data」
ALEのもう一つの主力事業は、大気データ事業「Atmospheric Data」です。
「Atmospheric Data」では、ALE独自の人工流れ星、小型衛星、プラズマ技術を活用し、これまで十分に観測できていなかった対流圏から中間圏のデータを取得するための研究を進めています。
ALEは同事業によって、気象予報精度の向上と、中⻑期の気候変動メカニズムの解明に貢献することを目指します。
また災害対策や、船舶・航空の経路最適化、エネルギー・農業等の分野における精度の高い生産・流通計画への活用も期待されています。
沿革
ALEは2011年9月に岡島礼奈氏によって設立され、これまで世界初の人工流れ星の実現に向けて事業を推進させてきました。
創業から7年後の2018年12月には人工衛星初号機が完成しました。初号機は2019年1月18日に、JAXAが開発した小型ロケット「イプシロンロケット4号機」によって打上げられました。
2019年10月には人工衛星2号機が完成し、同年12月に打ち上げに成功しました。しかし2023年4月には、流星源の動作不良により2号機の運用を終了しました。
2023年6月には、人工衛星3号機のエンジニアリングモデルが完成しました。
3号機は2025年にサービスを開始予定であり、ALEはこれからも世界初の人工流れ星の実現を目指し続けます。
資金調達:累計調達額は約50億円
ALEはこれまで複数回の資金調達を達成しており、累計調達額は50億円です。
主な株主として、Horizons Ventures、スパークス・グループ株式会社、新生企業投資株式会社などがあります。
主要な資金調達は以下の通りです。
- 2016年12月:エンジェルラウンドで約7億円の資金調達
- 2019年8月:シリーズAラウンドで約12億円の資金調達
- 2021年2月:シリーズA追加ラウンドで約22億円の資金調達
同社は調達した資金を元に、宇宙の新たな利用、そして持続的な人類の発展に向けて、日本の宇宙業界を牽引する一社として邁進していきます。
市場規模:宇宙産業市場は2040年に120兆円へ
Haver Analytics, Morgan Stanley Researchの調査によると、2020年の宇宙産業市場は43兆円(3780億ドル)でした。
同市場は2040年までに120兆円(1兆530億ドル)に成長すると予測されています。
日本の宇宙産業はこれまでは政府主導の事業が主流でしたが、最近ではALEなどの民間主導の事業が増えつつあり、今後も急速に成長していくでしょう。
宇宙ビジネスと現在と未来 「宇宙を利用する」発想で事業開発を
ALEの目標:「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」
ALE代表の岡島礼奈氏によると、同社の今後の目標は以下の通りです。
- 科学の発展に貢献 人工流れ星事業「Sky Canvas」などの、公的資金に頼らない新たな基礎科学研究の仕組みを提供し、科学の力で地球環境問題の解決に貢献します。
- 持続可能な発展 サステナビリティを重視し、人類の持続的な発展に必要な科学データを提供します。宇宙から得られるデータを活用し、気候変動のメカニズム解明に寄与します。
- エンターテインメントと教育 世界初の「人工流れ星」を通じて、多くの人に宇宙の美しさと面白さを提供します。これにより、科学への探求心を刺激し、宇宙開発への関心を高めます。
- 新しい価値の創出 時代の変化に対応し、新たな価値を生み出す挑戦を続けます。好奇心を原動力に、未知の分野を切り拓きます。
会社概要
会社名:株式会社ALE
所在地:〒105-0012 東京都港区芝大門2-11-8 住友不動産芝大門二丁目ビル1階
設立年月日:2011年9月1日
代表:岡島礼奈
まとめ
本記事では、人工流れ星などの宇宙エンターテインメント事業を展開する株式会社ALEについて紹介してきました。
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