世界中で再生可能エネルギーの導入が拡大しており、さまざまな技術が開発されている。その中で一際注目を集めているのが、海の上に風車を浮かせる「浮体式洋上風力発電」だ。
海は障害物がなく安定して強い風が吹くため、土地や環境に縛られることなく大量に設置することができ、莫大な再生可能エネルギーを生み出せると期待されている。
Aikido Technologies Inc.(以下、Aikido)は、革新的な浮体式風力発電技術を開発するアメリカのスタートアップだ。同社が開発する浮体式風力タービンは折り畳むことができるため、低コストでどこにでも設置できるという強みを持つ。
本記事では、折り畳み構造の風車で世界中から注目を集めるAikidoについて紹介する。
事業内容:浮体式洋上風力発電に用いるタービン等の開発
Aikidoの事業内容は、浮体式洋上風力発電に用いるタービンなどの開発だ。具体的には、発電部分である浮体式風力タービン「Aikido Turbine」と、風車を安定させるための重りである半潜水型浮体基礎「Aikido Platform」を開発している。
本技術を活用すれば、アメリカの港湾エリアの80%以上・世界中の水深の浅い港で、浮体式洋上風力の建造が可能とのことだ。
特徴①:コンパクトだから一般的なドックで組み立てることが可能
Aikidoが開発する「Aikido Turbine」は折り畳めるコンパクトな設計のため、スペースを必要とせず、一般的なドックで組み立てることが可能だ。
一般的なドッグ | Aikido Turbine | |
---|---|---|
幅 | 50m | 35m |
奥行 | 300m | 100~150m |
水面からの深さ | 12m | 4m |
水面からの高さ | 30~50m | 19m |
浮体式洋上風力発電の課題の1つに、「風車や浮体基礎を生産する拠点が世界的に少ないこと」が挙げられる。
しかし、Aikidoであれば、既存のドッグを活用することができるので、世界中で迅速に機材を生産できるほか、設備投資にかかるコストを抑えることもできる。
特徴②:世界初!起き上がる特殊な構造の浮体基礎
Aikidoが開発する「Aikido Platform」は最大の特徴として起き上がることができる。具体的には浮体基礎に海水を注水することで、重心が下になり、折り畳まれていた浮体基礎が徐々に垂直に起き上がる。
この方法であれば、高価なクレーン船の使用が不要なので、設置コストを大幅に削減することが可能だ。
特徴③:折り畳んで水平に運べるので橋の下などを通せる
Aikidoが開発する「Aikido Turbine」は折り畳んで水平に倒したまま運べるので、橋の下などを通ることができる。
沖合に風車を輸送する際に建造物などを避ける必要がないため、最短ルートで運ぶことができ、無駄な輸送コストを抑えることが可能だ。
資金調達:シードラウンドで400万ドルを獲得
Aikidoは2024年6月、浮体基礎技術の開発とパイロットプロジェクト確立のため、シードラウンドにて400万ドルを調達した。Azolla Venturesが主導であり、Propeller Venturesや、Sabanci Climate Ventures、Cisco Foundation、Anthropocene Venturesなども加わっている。
AikidoのCEOであるSam Kanner氏は、以下のように述べた。
また、今回の投資企業であるPropeller VenturesのReece Pacheco氏は以下のコメントを出している。
洋上風力発電の世界市場規模:2032年までに293.00GW
洋上風力発電の世界市場規模は、2018年に23GWと評価され、2032年までに293GWまで成長すると予測されている。
世界中で洋上風力発電の導入が進められており、実際にさまざまな規制が策定されている。また先端技術によって、風力発電の効率UP・設置コストの削減が実現しており、今後も市場が成長していくそうだ。
企業概要
会社名:Aikido Technologies Inc.
代表取締役:Sam Kanner
設立:2022年
所在地:3101 20th St, San Francisco, California, 94110, US
公式HP:https://www.aikidotechnologies.com/
まとめ
本記事では、世界初の折り畳み型浮体式洋上風力発電にチャレンジするAikidoについて紹介した。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。
Aikidoのように、海外の面白い企業についてまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。