最終更新日 24/11/09
国内スタートアップ

【株式会社Yanekara】東大発、次世代のエネルギーマネジメントを担うスタートアップの事業等を解説!

サステナブル大学発
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株式会社Yanekara | 公式企業サイト

株式会社Yanekaraは、2020年6月に設立された東京大学発のスタートアップ企業です。エネルギーの効率的な活用と脱炭素社会への貢献を掲げる同社。同社は、市場連動型充放電サービス「YanePort」や、設置が容易なEV充電コントローラー「YaneCube」などで注目を集めています。

本記事では、次世代のエネルギーマネジメントを担うYanekaraの事業内容と、その背景にある起業ストーリー、資金調達等を紹介していきます。

事業内容

株式会社Yanekaraの事業内容は、市場連動型充放電サービス「YanePort」、EV充電コントローラー「YaneCube」、脱炭素ソリューションの提供の主に3つです。各事業を順に説明していきます。

市場連動型充放電サービス「YanePort」

(出典:https://yanekara.jp/

「YanePort」は、EcoFlowのポータブル電源の*市場連動型充放電を自動化するサービスです。このサービスは、Looop社の市場連動型電気料金プラン「スマートタイムONE」と連携し、電力が安価な時間帯に自動で充電し、高価な時間帯に放電することで電気代の節約を可能にします。家庭の家電やデバイスと接続することで、日常的な電力コストを削減します。

「YanePort」はアウトドアや災害時などでも活用でき、電源の確保が難しい環境でもスマートフォンの充電や調理器具、照明の電力供給が可能です。また、バッテリーの自動充放電機能により、バッテリー寿命の延長も期待できます。

*市場連動型について解説
従来の多くの電力会社が提供するプランは「従量電灯型」と呼ばれるもので、使用量に応じて一定の単価で料金が決まります。これに対し、市場連動型プランは、電力取引市場「日本卸電力取引所(JEPX)」の市場価格に応じて単価が変動します。つまり、電力の需要と供給に基づき、価格がリアルタイムで上下するプランで、「YanePort」はこの市場変動を活用することで、効率的な電力の利用を支援しています。

EV充電コントローラー「YaneCube」

(出典:https://yanekara.jp/

「YaneCube」は、EV普通充電コンセントに工事不要で設置できるEV充電コントローラーです。既存のEV充電インフラにリモート制御機能を追加する国内唯一の製品で、充電を自動制御し、コストを最適化します。充電データや消費電力を記録し、CO2削減量や電力効率の分析も可能です。充電のピークシフトをサポートし、EVごとの電費分析に寄与する製品です。

脱炭素ソリューションの提供

(出典:https://yanekara.jp/

株式会社Yanekaraは、垂直型ソーラーパネルや蓄電池、EV充電器の設計・調達・工事・EMSの構築まで、脱炭素化に必要な一連の設備を一貫して提供しています。これにより、太陽光発電の活用を最大化し、捨てられるはずだったエネルギーも有効に活用できます。

EV充電コントローラー「YaneCube」や、建築確認申請不要の垂直型太陽光モジュール「ソーラーフェンス」をベースに、同社のIoTおよびクラウドシステムを用いて、エネルギーの遠隔監視や制御を実現。工場、営業所、店舗を持つ企業に、持続可能なエネルギー運用を提案し、事業所の脱炭素化を包括的にサポートしています。

まとめると、工場や営業所、店舗を持つ企業向けに、太陽光発電や蓄電池の設計、EV充電器の導入までをトータルに支援し、事業所の脱炭素化を実現するサービスです。

株式会社Yanekaraの資金調達について

(出典:https://yanekara.jp/

2021年9月:シードラウンドで5500万円を調達

2021年9月、株式会社Yanekaraはシードラウンドで5500万円を調達しました。このラウンドには、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社が運営する「オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合」、株式会社ディープコア、さらにエンジェル投資家が参加。

調達資金は、複数台のEVを太陽光発電で効率的に走行させる充放電システムの開発と事業展開の加速に活用。

2022年11月:1.6億円を調達

続いて2022年11月には、1.6億円の資金調達を実施。東京大学協創プラットフォーム開発株式会社、三井不動産のコーポレートベンチャーキャピタルファンド(運営:グローバル・ブレイン株式会社)、31VENTURES Global Innovation Fund 2号、株式会社ディープコアが参加。

調達資金は、事業用EVの充放電管理に特化したハードウェアおよびクラウドソフトウェアの開発の推進に活用。

起業ストーリー

(出典:https://yanekara.jp/

株式会社Yanekaraの創業者・松藤圭亮氏がエネルギー問題に興味を持ったのは、小学生時代に行った自由研究がきっかけだそう。小学6年生の夏休み、松藤氏は鏡やアルミホイルを使って太陽光を集め、その熱でゆで卵やパンケーキを調理する「ソーラークッキング」に挑戦。太陽エネルギーが日常生活にどのように役立つかを実感し、再生可能エネルギーへの関心を高めたという。この興味を抱えたまま、将来の研究者を目指し東京大学に進学。

しかし、大学2年生の終わりごろ、松藤氏はエネルギー技術の発展がすでに進んでいる現実に直面します。「研究だけで社会に大きなインパクトを与えるのは難しいかもしれない」と考え、次第にエネルギーの社会実装に関心を移しました。特に、日本国内で進行している「出力制御」問題、つまり再生可能エネルギーの供給過剰によって発生する電力の無駄遣いに目を向け、効率的に電力を活用するためのシステム構築が必要だと感じたそう。

その後、松藤氏はドイツで環境問題を学んでいた吉岡大地氏と出会い、二人でエネルギー問題についての勉強を開始。吉岡氏の「日本も再生エネルギー100%・エネルギー自給率100%を目指すべき」という考えに共感し、起業を決意。

松藤氏は東京大学の「アントレプレナー道場」に参加し、起業の基礎を学びました。さらに「本郷テックガレージ」の「Spring Founders Program (SFP)」で充放電機器のプロトタイプを完成させ、製品開発の技術を習得。その後、未踏アドバンスト事業に提案した「EVをエネルギーストレージとして利用する充放電システム」が採択され、1000万円の資金を獲得しました。

2020年6月、松藤氏と吉岡氏は株式会社Yanekaraを設立し、再生可能エネルギーを無駄なく活用するためのシステムを社会に実装する事業を開始。エネルギー分野での革新的な取り組みが注目され、2024年には二人がForbesの「30 Under 30 Asia」の「INDUSTRY, MANUFACTURING & ENERGY」部門に選出されました。これは、松藤氏と吉岡氏の2名が、アジア太平洋地域で影響力にある30歳以下の若手イノベーターである、ことを示していると言えるでしょう。

参照:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/entrepreneurs24.html

市場規模:EMS市場、2035年に2.7兆円規模へ

(出典:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24014&la=ja

株式会社Yanekaraの関連市場である、エネルギーマネジメントシステム(EMS)関連の国内市場について、ここでは紹介していきます。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)の国内市場は急成長しています。富士経済の調査によると、2023年度の市場規模は約1兆2803億円。2035年度には2倍以上の2兆6887億円に拡大する見通しです。

この市場拡大の主な要因は、脱炭素化とDXの加速にあります。

製造業を中心に脱炭素経営が浸透。企業は自社のCO2排出量の可視化に加え、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(SCOPE3)の把握と削減に取り組むことがスタンダードになりつつあります。

さらに、DX化の進展で半導体関連の需要も増加。製造業やデータセンターでは、再生可能エネルギーシステムや蓄電池への関心が高まっているのも背景の1つです。

株式会社YanekaraのEMS関連サービスは、これらのトレンドに応えるものであり、今後さらに需要が高まるEMS市場で重要な役割を果たす企業として期待されています。

出典:富士経済「EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場を調査」

会社概要

社名:株式会社Yanekara

代表取締役:松藤圭亮 / 吉岡大地

設立:2020年6月

所在地:〒277-0882 千葉県柏市柏の葉五丁目4番19号東大柏ベンチャープラザ

事業内容:分散型電源に関する機器およびソリューション

まとめ

本記事では、エネルギーの効率的な活用と脱炭素社会への貢献を掲げ、日々進化する株式会社Yanekaraについて紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

株式会社Yanekaraのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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