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近年、アニメキャラクターや芸能人など、ジャンルを問わず「推し」を持つ人が増え、「推し活」が一般的になっています。また、そんな推しの存在を身近に感じたいと考える人も少なくないのではないでしょうか。
そんな願いを叶えてくれるのが、「株式会社GATARI」(以下、GATARI)が提供する「Auris」というサービスです。
「Auris」は、MR(Mixed Reality)と聴覚を組み合わせた新しい体験を提供するサービスで、イヤホンを装着し、音声指示に従うだけで、まるで物語の中に入り込んだかのような没入感を味わうことができます。
本記事では、「Auris」の具体的な内容や機能について紹介していきます。
事業内容:耳から始めるMixed Realityプラットフォーム「Auris」
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GATARIは、音声MR(Mixed Reality、複合現実)プラットフォーム「Auris」を提供しています。これは、スマートフォンを使って現実の空間をスキャンし、その空間内にバーチャルセンサーを設置することで、ユーザーの動きに応じて音声が再生されるというサービスです。
具体的に言うと、ユーザーがセンサーに近づく、センサーを通過するといった行動をトリガーとして、特定の音声を流すことができます。たとえば、推しの声を流すシステムを設定すれば、特定の場所に足を踏み入れた瞬間に推しの音声が流れるといった体験をすることが可能です。
難しい操作はいらずスマートフォンを首にかけてイヤホンを装着し、音声の指示に従うだけで、物語の一部に入り込んだような没入体験を楽しむことができます。
「Auris」の3つの特徴
「Auris」には、利用をスムーズに、またさまざまな形で応用できるようにするための特徴が3つあります。
- 設備にダメージを与えない非侵襲性
- スマホ1台で完結できる運用性
- 異なる体験を空間に重ねられる多層性
特徴1.設備にダメージを与えない非侵襲性
「Auris」の大きな特徴の1つは、非侵襲性(施設に物理的な変更を加えずに導入できる点)です。
このシステムは、既存の設備にダメージを与えたり、新たな機器を設置したりすることなく、新しい体験を提供します。施設のスキャンデータとスマートフォンのセンサーを活用してユーザーの位置を認識するため、ビーコンや専用センサーなどの追加設備を一切必要としません。
この特性により、物理的な制約や設備に関する法的な制約を気にすることなく、「Auris」を導入できます。特に、文化財や歴史的建造物、公共空間など、従来は設備の設置が難しかった場所でも、リッチなMR体験を提供することが可能です。
特徴2.スマホ1台で完結できる運用性
運用のしやすさも「Auris」の大きな特徴です。このサービスはノーコード対応で、スマートフォン1台があれば、導入から運用まで完結できます。さらに、追加の編集やアップデートも自由に行うことが可能です。
アプリ内で空間のスキャンやコンテンツの制作、保存、公開までを一括で管理できるため、専門的な知識がなくても簡単に運用できます。「ここに入ると音が鳴る」といったシンプルな仕掛けはもちろん、ゲームのような複雑な演出まで、ノーコードで直感的に作成可能です。
さらに、コンテンツの追加や編集した内容はリアルタイムで反映され、その場ですぐに確認できます。また、データはクラウド上に保存されるため、遠隔地からでも編集・更新が可能です。これにより、運用の手間を最小限に抑えながら、柔軟にコンテンツを調整できます。
特徴3.異なる体験を空間に重ねられる多層性
多層性も「Auris」の大きな強みです。1つのスキャンデータから無限の可能性を引き出し、公共の空間にさまざまなプライベート空間を作り出すことができます。
「Auris」では、1つのスキャンデータをもとに、異なる体験を空間に多層的に重ねることが可能です。これにより、同じ場所にいながらも、ユーザーごとに異なる情報を提供できます。たとえば、視覚障害者や外国人旅行者に対して、それぞれのニーズに応じたガイド情報を提供しながら、他の訪問者の体験を妨げることなく適切なサポートを行うことができます。
具体的には、以下のような使い方が考えられます。
- エンターテインメント用途として、推しの音声や物語を楽しむ体験を提供
- インバウンド対策として、多言語ガイドを設置し、訪日外国人向けの情報提供を実施
- 視覚障害者向けの支援として、音声ナビゲーションによる移動サポートを提供
このように、「Auris」は1つの空間を複数の目的で活用できる柔軟性を持っており、さまざまなシーンでの活用が期待されています。
システムを組む際の利用方法は以下の通りです。
利用方法
利用方法は主に4つのステップに分けられます。
1.空間をスキャン
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まず、スマートフォンでAurisのアプリを立ち上げて空間のスキャンを行います。50㎡程度の空間であれば1分程度でスキャンが可能です。
2.バーチャルセンサーを配置
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次にバーチャルセンサーを配置します。スマホ1台で3次元の任意の位置に任意の大きさで簡単に配置することができます。
3.トリガーとアクションの設定
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センサーを配置できたら、トリガーとアクションを設置します。ユーザーがバーチャルセンサーに侵入または退出したなどの項目をトリガーに、様々なアクションをノーコードで設定することが可能です。
4.空間に半永久的に保存
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最後に、配置したバーチャルセンサーはあたかも物のように空間に半永久的に保存されます。編集加工はいつでも可能なため、好きなタイミングで変更することができます。
気になった方はこちらをご覧ください。
導入事例:推し活イベントからオフィスガイドまで幅広く活用
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「Auris」はその応用性の高さから幅広い分野の事業に導入されています。
実際に、2023年2月21日から開催された東京メトロ × Clock over ORQUESTA「クロケスタ駅ナカLIVE!!」では、「Auris」が活用されました。このイベントでは、東京メトロの新宿駅・銀座駅・王子駅の3駅に、各4カ所ずつ、viviONが運営するSNS連動型キャラクターソングプロジェクト「Clock over ORQUESTA」のキャラクター音声や音源が設置されました。
参加者は、各スポットを巡ることで「スペシャルライブ音源」や「ミニボイスドラマ」を楽しむことができ、スマートフォンとイヤホン、またはヘッドフォンがあれば気軽に参加できる仕組みとなっています。このように、「Auris」はバーチャルとリアルを融合させた新しいエンターテインメント体験を提供しています。
また、「Auris」はエンターテインメント分野だけでなく、オフィスガイドなど、ビジネスシーンでも活用されています。
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たとえば、GATARIは東京建物株式会社と連携し、東京建物本社ビルの「ライブオフィス」に「Auris」を導入しました。東京建物は、最新のオフィス環境を実際に見学・体験できる「ライブオフィス」を提供しており、もともと快適な環境を備えたオフィス空間を紹介する場として活用されていました。
「Auris」の導入により、来訪者はスマートフォンとイヤホンを使ってオフィス内を探索するだけで、没入感のある音声ガイドを体験できるようになりました。リアルなオフィス空間とデジタル技術をシームレスに融合させることで、より直感的で効果的なオフィス紹介が可能となっています。
このように、「Auris」はイベントやエンターテインメントだけでなく、ビジネスの現場でも活用され、新たな体験価値を創出しています。
資金調達:シリーズAラウンドにて累計調達額1億円超え
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GATARIは2021年2月22日、W ventures、OLM ventures、東大創業者の会応援ファンド、毎日みらい創造ラボ、名古屋テレビベンチャーズに加え、国光宏尚氏、小泉直也氏、濱本暁氏、馬場健氏を引受先とする第三者割当増資を実施しました。
この資金調達はプレシリーズAラウンドとして行われ、これにより累計調達額は1億円を突破しました。
市場規模:国内MR市場は2029年に5.3億円に達する予測
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国内のMR市場規模は、2024年時点で約4.4億円と推計されており、今後5年間で年平均22.46%成長し、5.3億円に達すると予測されています。
成長率の内訳を見ると、MR活用サービスは-0.68%と市場縮小が見込まれる一方で、MRコンテンツ制作(+18.9%)とMRデバイスメーカー(+28.68%)の成長が市場拡大をけん引すると考えられています。
また、時系列で見ると、特に5年後と1年後の成長率が大きくなる傾向が予測されており、今後の市場拡大に期待が集まっています。
企業概要
- 企業名:株式会社GATARI
- 代表者:竹下俊一
- 設立:2016年4月5日
- 所在地: 〒101-0023東京都千代田区神田松永町16 ダイキビル4F
- 公式HP:https://gatari.co.jp/
まとめ
本記事では、株式会社GATARI について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
株式会社GATARI のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。