最終更新日 25/02/07
国内スタートアップ

【ドクターズプライム】医師の活躍を可視化し、患者主体の医療を実現!

ITヘルスケア
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(引用:ドクターズプライム公式HP)

日本の医療現場では、救急車のたらい回しや医師の過重労働、患者が適切な医師を選べないといった課題が長年指摘されてきました。こうした課題に対し、「株式会社ドクターズプライム」(以下、ドクタープライム)は「医師の貢献を正しく評価し、患者が自分に合った医療を選べる仕組み」を構築することで、医療のあり方を根本から変えようとしています。

同社は、救急医療の受け入れ改善を支援する「Dr.’s Prime Work」、医師向けの学習動画を提供する「Dr.’s Prime Academia」、そして患者が信頼できる医師に気軽に相談できる「Dr.’s Prime LifeDoctor」の3つの事業を展開。医師のスキルや診療実績をデータとして蓄積・可視化することで、医療の質を向上させるとともに、患者と医師の新たな関係を築いています。

2025年1月にはシリーズAラウンドで3.9億円の資金調達を実施し、さらなる事業拡大を進めるドクターズプライム。彼らの挑戦が、日本の医療にどのような変革をもたらすのか、詳しく見ていきましょう。

事業内容:患者主体の医療を支えるプラットフォームの構築

ドクターズプライムは自分らしく医療を選べる未来を実現しようとしている(引用:ドクターズプライム公式HP)

ドクターズプライムは、「自分らしく医療を選べる未来」を実現することを目指し、医師と患者の関係をより良いものにするためのシステムを開発しています。

従来の医療システムでは、情報の非対称性から患者は自分に合った医師を選ぶことが難しく、医師の貢献が正しく評価される仕組みも不十分でした。同社はこの課題を解決するため、次の3つの事業を展開し、医師の活動をデータとして蓄積・可視化することで、医師の評価制度を基盤とした新しい医療の仕組みを提供しています。

  • Dr.’s Prime Work事業:救急車のたらい回しを防止、医師の救急スキルを評価
  • Dr.’s Prime Academia事業:医師向け学習動画を配信、医師の診療知識を評価
  • Dr.’s Prime LifeDoctor事業:医師に体調の悩みを気軽に相談、医師の相談スキルを評価
ドクターズプライムが目指す「患者主体の診療」(引用:田真茂 Dr.’s Prime|note)

    ①Dr.’s Prime Work事業:救急車のたらい回しを防止

    Dr.’s Prime Work事業のイメージ(引用:ドクターズプライム公式HP)

    Dr.’s Prime Work事業は「救急車たらい回しをなくす」をコンセプトに、救急車を断らない医師を病院に紹介するプラットフォーム事業です。2次救急病院・3次救急病院を中心に、救急患者を受け入れられる非常勤医師を紹介しており、その採用支援や救急体制の改善も行っています。

    この仕組みにより、病院は救急依頼があった際に、これまで以上に患者を受け入れることができるため、収益向上や地域医療への貢献を実現できます。また、常勤医師の負担軽減にもつながるので、働き方改革も達成できるでしょう。

    さらに、医師に対しては、インセンティブを活用した評価制度を導入。彼らの救急対応への意欲を高めることで、より多くの人に医療が届く仕組みを実現しています。

    従来は多忙な当直医が救急患者を受け入れられず、たらい回しが発生することが課題でした。しかし、この事業を活用すれば、救急対応が可能な医師を適切に配置できるため、受け入れ態勢を強化できます。

    創業期から展開されているこの事業は、医師・病院・患者・救急隊の「4方良し」のモデルを実現。医療関連サービスの中では比較的高い利益率(80%以上)を維持しており、これまでに16万人以上の救急患者を受け入れてきました。

    一般的な救急車受け入れ率は60%である一方、ドクターズプライムは98%以上を実現(引用:PR Times)

    ②Dr.’s Prime Academia事業:医師向け学習動画を配信

    Dr.’s Prime Academia事業のイメージ(引用:ドクターズプライム公式HP)

    Dr.’s Prime Academia事業は、「明日使える知識がすぐそこに」をコンセプトに、医師が最新の医療知識を効率的に学べる動画配信プラットフォームです。特に、忙しい医師が短時間で実践的な知識を習得できるように、30分間の学習動画を中心に配信しており、すでに3万人以上の医師が利用しています。

    このプラットフォームは、医師が学びたい分野に応じたチャンネルを選択できるほか、テレビのような体験を意識した「時間指定放送」も実施している点が特徴です。さらに、スポンサー企業や出版社とも連携し、専門書の出版や医療技術の普及にも貢献しています。また、月に500-600本という日本一の番組放送数も誇っています。

    現在は医師向けのサービスですが、今後は一般の患者向けにも医療情報を提供し、患者自身が医療について理解を深められる環境を整えていく計画です。

    Dr.’s Prime Academia事業は日本一の開催数を誇る医師向け動画メディアに(引用:PR Times)

    ③Dr.’s Prime LifeDoctor事業:医師に体調の悩みを気軽に相談

    Dr.’s Prime LifeDoctor事業のイメージ(引用:PR Times)

    Dr.’s Prime LifeDoctor事業は、「家族に医師がいるような体験」を提供することをコンセプトに、患者と信頼できる医師(LifeDoctor)をマッチングするサービスです。一般的なオンライン診療とは異なり、「1分以内に信頼できる医師から返信が得られる」という迅速な対応を重視している点が特徴です。

    これにより、患者は体調に不安を感じた際に、すぐに医師に相談できます。特に、日常的な健康相談や軽度の体調不良の際に活用されることが想定されており、より身近な医療の形を実現しようとしています。本サービスは2025年2月にリリース予定です。

    ドクターズプライムの強み:これまでになかった医師の評価制度

    ドクターズプライムは、各事業を通じて「医師のスキルや実績を可視化し、最適な医療提供につなげる仕組み」を構築しています。具体的には、各事業において医師のスキル・経験・対応力を評価し、それをデータベース化することで、患者や病院が最適な医師を選べる仕組みを作っています。この考え方は、同社が「医師版の食べログ」とも表現するように、従来の医療業界にはなかったアプローチです。

    さらに、診療データや健康管理情報が「Myカルテ」として蓄積されることで、患者は自分に合った医師や医療サービスを選びやすくなります。この仕組みにより、「医師コミュニティ」と「患者の体験」をつなぎ、個々のライフスタイルや健康状態に応じた医療を選択できる環境を構築している点が同社の最大の強みです。

    資金調達:シリーズAで初の株式発行により3.9億円を調達

    (引用:ドクターズプライム公式HP)

    医師向けサービスを提供するドクターズプライムは、2025年1月29日、シリーズAラウンドで3.9億円の資金調達を実施したと発表しました。出資元はDual Bridge Capital、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの3社で、今回の調達により、銀行融資を含む累計資金調達額は6.4億円に達しました。

    これまでの成長と資金調達を実施した背景

    ドクターズプライムはこれまで、株式発行による資金調達を行わず、自社のキャッシュフローを活用しながら黒字経営を維持してきました。特に、「Dr.’s Prime Work」事業の収益を活かし、病院向け・医師向け・患者向けの3つの事業を展開。現在は60名(うち正社員34名)のチーム体制で事業を運営し、持続可能な成長を続けています。

    しかし、成長のスピードをさらに加速させるためには、より積極的な事業投資が必要でした。そこで、代表の田氏はこれまでの自己資金による運営方針を転換し、初めて株式発行による資金調達を決断。既存事業の拡大に加え、新規事業の立ち上げを一層加速させることを目指しています。

    資金調達の目的と今後の展開

    今回の資金調達の目的は、事業投資の加速と新規サービスの開発です。特に、医師向け動画コンテンツ配信事業「Dr.’s Prime Academia」や、新たに展開する一般向けサービス「LifeDoctor」に注力し、さらなる成長を目指します。

    また、「Dr.’s Prime Work」と「Dr.’s Prime Academia」で蓄積した医師評価データの活用を進め、医師スコアを見える化する新機能を2025年2月にリリース予定です。まずは医師自身がスコアを確認できる仕組みを提供し、その後、一般向けにも拡大していく計画です。

    さらに、2025年5月には、新たな一般向けサービス「LifeDoctor」をリリースし、より多くの人が信頼できる医師を選べる仕組みを構築すると発表。今回の資金調達を通じて、ドクターズプライムは「医療の民主化」を推進し、誰もが適切な医療を受けられる社会の実現を目指していくとしています。

    創業の経緯と現在までの歩み:医療現場の構造的な課題に直面

    (引用:田真茂 Dr.’s Prime|note)

    ドクターズプライムは、医療業界の構造的な課題を解決するために生まれました。その創業の背景には、創業者自身が医師として働く中で直面した「頑張っても報われない医療の現実」があります。

    患者を救うことよりもアカデミックな実績が重視される評価制度や、医師自身が持続的に質の高い医療を提供しづらい環境に強い違和感を覚え、「自分らしく選べる医療をすべての人に届ける」という使命感のもと、起業を決意しました。

    急成長した創業期(2017-2019年):Work事業の成功

    2017年、病院のシフト管理を効率化する「Work事業」を立ち上げ、2018年に本格始動しました。医療業界の痛点を的確に捉えたこのサービスは、病院の大きな予算感とも相まって急成長。

    創業からわずか1年でARR(年間経常収益)1億円を突破し、社員1人・インターン30人という若い組織での成功を収めました。当時は勢いのある組織文化のもと、スタートアップならではのスピード感を持って事業が進んでいました。

    組織不全期(2020-2023年):拡大による課題と改革の決断

    2020年以降、事業の拡大に伴い組織の急成長を目指し、中途採用を本格化しました。しかし、異なる価値観を持つメンバーが増えたことで、意思決定がスムーズに進まない状況に直面。リーダーシップ不足により組織がまとまらず、”優秀な人は多いのに事業が進捗しない” という課題が発生したのです。

    そんな中、新たな医師向け教育サービスである「Academia事業」が立ち上がりましたが、根本的な組織課題を解決しなければ、持続的な成長は難しいと判断。組織のカルチャーを再定義し、チームワークとチャレンジ精神を重視する方針へ転換しました。この変革の過程で、当時20人以上いた社員のうち5人だけが残る形となり、大きな決断を伴う転換期となりました。

    成長期(2024年-):再出発と未来への展望

    1年以上にわたる組織改革を経て、2024年からドクターズプライムは新たな成長期に突入しています。組織を5人から34人へと拡大し、今後1年以内に150人規模への成長を目指しています。事業のスケールに伴い、人員増強が必須のフェーズに突入しているのです。

    この拡大期において最も重要視しているのが「謙虚なリーダーシップ」です。これは、自己の限界を認識し、他者の強みを活かしながら成長し続ける姿勢を指します。このリーダーシップを組織の基盤に据えることで、変化し続ける企業文化を維持し、持続的な成長を遂げることを目指しています。

    これまでの試行錯誤を経て、ドクターズプライムは単なる医療サービス企業ではなく、医療業界の構造を変革する存在として、新たなフェーズへと進んでいるのです。

    企業概要

    • 企業名:株式会社ドクターズプライム
    • 代表者:代表取締役・医師 田真茂
    • 設立:2017年4⽉
    • 所在地: 〒111-0035 東京都台東区西浅草2-27-7 浅草TFビル2階
    • 事業内容:
      • 医療の民主化サービスに向けた病院向け人材紹介サービス、医師向け学習メディア、患者向け健康相談サービスの開発・運営
    • 公式HP:https://drsprime.com/

    まとめ

    本記事では、患者主体の医療を支えるプラットフォームを構築する株式会社ドクターズプライムについて紹介しました。

    New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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