最終更新日 24/10/03
国内スタートアップ

【スーパーワーム】昆虫由来のタンパク質・バイオ燃料を開発!持続可能な社会の実現を目指すスタートアップ

サステナブル農業食品
Share this post
引用:スーパーワーム公式HP

世界では、人口増加に伴う食糧不足が続いており、これを解決するためには、肉や魚、野菜を育てるための飼料や肥料が不可欠です。しかし、畜産業や農業の急速な拡大は、農地への過剰な負担や地下水の枯渇といった環境問題を引き起こす恐れがあります。

そのため、環境への負荷を抑えつつ、より効率的に食料を生産できる方法が世界中で求められています。そんな中で注目されているのが、「スーパーワーム」と呼ばれる昆虫を活用して、この問題に取り組むスタートアップ「株式会社スーパーワーム」(以下、スーパーワーム)です。同社は、昆虫の力を最大限に活かし、タンパク質危機や地球温暖化といった社会課題を解決することを目指し、昆虫由来のタンパク質やバイオ燃料の開発を進めています。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から出資されるなど、注目を集めるスーパーワームについて紹介していきます。

事業内容:昆虫由来のタンパク質・バイオ燃料を開発

昆虫を利用した事業が資源の無駄を減らし、地球温暖化対策に貢献(引用:スーパーワーム公式HP)

スーパーワームの事業内容は、スーパーワーム由来のタンパク質飼料やバイオ燃料、有機肥料の生産・販売です。具体的には、タンパク質粉末「スーパーパウダー」、バイオ燃料「スーパーオイル」、有機肥料「スーパーフラス」を手がけています。

スーパーワームを活用して生産・販売している4つの商品(引用:スーパーワーム公式HP)

「スーパーパウダー」は飼料やペットフードに適した高品質なタンパク質であり、「スーパーオイル」は再生可能なエネルギー源として利用されます。また「スーパーフラス」は、栄養豊富な有機肥料として農業の持続可能性を高められます。

最大の特徴:「高いコスト競争力・優れた脱炭素効果」を持つスーパーワーム

そもそもスーパーワームは、ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫で、主にペットの餌や釣り餌として使われています。しかし、最近ではその高いタンパク質含有量と生産効率の高さから、持続可能な飼料や有機肥料、さらにはバイオ燃料の原料としても注目されています。

特に注目すべきは、スーパーワームの「高い養殖効率」です。同社のデータによると、1ヘクタールの土地で生産されるタンパク質量は、スーパーワームの場合約1680万kgに達します。これは、トウモロコシの998kgと比較すると、約17000倍もの生産効率です。このため、スーパーワームを使うことで環境への負荷を大幅に減らせるだけでなく、昆虫タンパク質の普及において最大の課題となっている「高コスト」を解決する可能性があります。

資金調達:2024年7月に複数のVCから1億円を獲得

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000121307.html

スーパーワームは2024年7月17日に、Partners Fund1号投資事業有限責任組合をリード投資家とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施しました。

なお他の投資家として、ANOBAKA3号投資事業有限責任組合や、イーストベンチャーズ 4号投資事業有限責任組合、かごしまスタートアップ支援投資事業有限責任組合も参加しています。

今回の資金調達により、同社はスーパーワーム由来の「高いコスト競争力」と「優れた脱炭素効果」を誇る製品開発を更に推進していくと発表しました。

具体的には、独自の技術を用いた効率的な養殖プロセスの構築や、エビデンス構築に向けた企業・大学との共同研究を強化するとのことです。また、より高タンパク質なスーパーワームの開発に向けて、ゲノム編集技術の研究も進めていくと述べています。

2024年9月にはNEDOのSBIR推進プログラムに採択

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000121307.html

スーパーワームは2024年10月1日、スタートアップ企業の研究開発を支援する「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の「SBIR推進プログラム(連結型)」において、2024年度の公募に採択されたと発表しました。これにより、スーパーワームは最大1500万円の助成金を受け、木質バイオマスを利用した新しい飼料の開発を進め、2025年までに実用化に向けた技術の確立を目指すとのこと。

日本国内では、バイオマスを含む再生可能エネルギーの利用拡大が課題となっており、特に農林業の副産物を有効利用する技術の開発が求められています。スーパーワームは、このニーズに応えるべく、独自の研究開発を通じてバイオマス資源の新たな可能性を切り拓くことを目指すそうです。

市場規模:フードテック市場は2050年に280兆円まで成長

引用:https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20240215_2.html

三菱総合研究所によると、2020年に24兆円だったフードテックの世界市場は、2050年にはその12倍にあたる約280兆円まで成長する可能性があると予測されています。特に、昆虫を利用した飼料の市場規模は、2019年の0.1兆円から2050年には24.2兆円にまで拡大する可能性があるそうです。

世界の人口増加や経済発展により、タンパク質の需要は今後ますます高まります。その結果、畜産業が急速に拡大することで、農地への負担・地下水の枯渇といった環境問題が懸念されています。このような背景から、畜産の生産性を向上させる昆虫飼料は、持続可能な解決策として注目され、同市場は今後さらに拡大していくでしょう。

しかし、この市場が一層成長するためには、「新しい技術を食品に適用することへの安全性の懸念」といった課題を解決することが必要です。

昆虫を活用したサステナブルなスタートアップが続々と登場

今回紹介したスーパーワーム以外にも、昆虫を活用したサステナブルな事業を展開するスタートアップが数多く存在します。

たとえば、今注目を集めているのがMorus株式会社です。同社は、日本が誇る世界トップクラスのカイコの研究技術を活かし、カイコをバイオ原料として量産し、海外にも展開しています。日本発の新しい素材産業を創出することを目指しており、特に現在は食料分野に注力しながら、4つの主要事業を展開中です。なお、Morusは「Forbes Asia 100 To Watch 2024」にも選出されています。

また、マレーシアに拠点を置くバイオテクノロジー企業Entomal Biotechも注目企業の1つです。この企業は、スーパーやレストランから回収した生ゴミなどの廃棄物をハエの幼虫で処理し、その幼虫のフンを肥料として販売しています。さらに、ハエの幼虫自体をペットフードや健康食品として生産・販売しており、循環型のサステナブルなビジネスモデルを展開しているのが大きな特徴です。

日本の株式会社ムスカも、同様にハエを活用したサステナブルな取り組みを行っています。同社の特徴として、畜産廃棄物や生ゴミといった有機廃棄物にイエバエの卵をまき、1週間ほど放置するだけで、幼虫が廃棄物を分解し、有機肥料を生成することが可能です。このプロセスにより食品ロスを削減できるだけでなく、廃棄物の焼却処分が不要になるため、CO2の排出を抑えることができ、環境に優しい処理方法を実現しています。

今後も持続可能な社会の実現に向けた、昆虫を活用した革新的な取り組みに期待です。

企業概要

  • 企業名:株式会社スーパーワーム(superworm Co., Ltd.)
  • 代表取締役:古賀 勇太朗
  • 設立:2023年5月9日
  • 所在地: 〒881-0037 宮崎県 西都市 茶臼原 1554番地5
  • 公式HP:https://superworm.jp/

まとめ

本記事では、昆虫由来のタンパク質・バイオ燃料を開発する株式会社スーパーワームについて紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

株式会社スーパーワームのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました