最終更新日 25/01/09
国内スタートアップ注目企業

【インターステラテクノロジズ】宇宙をもっと身近にすべく挑戦する注目スタートアップ

宇宙
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(引用:PR Times)

インターステラテクノロジズ株式会社は、「誰もが宇宙に手が届く未来」を実現することを目指し、ロケット開発と人工衛星事業を中核とした革新的なサービスを展開しています。

低コストで柔軟な設計を可能にした小型衛星専用ロケット「ZERO」、大量輸送時代に対応した大型ロケット「DECA」、そして地球上のどこでも高速大容量の通信を提供する人工衛星「OUR STARS」など、宇宙へのアクセスを広げることを目指している点が最大の特徴です。

さらに、現在トヨタグループとの提携により、ロケットの量産化や最先端技術の導入にも積極的に取り組んでおり、国内外で宇宙産業をリードする存在として注目を集めています。本記事では、インターステラテクノロジズの事業内容や技術力、そしてその未来へのビジョンについて詳しくご紹介します。

事業内容:ロケット✖️人工衛星の垂直統合サービスを提供

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

インターステラテクノロジズは、低価格で高頻度な宇宙輸送サービスを提供することで、「誰もが宇宙に手が届く未来」の実現を目指しています。その事業内容は、大きく以下の2つに分類されます。

インターステラテクノロジズの事業内容

  • ロケット事業
    • 低コストで柔軟な設計が可能な小型衛星専用ロケット「ZERO」
    • 宇宙への大量輸送に対応した大型ロケット「DECA」
    • 微小重力空間での実験や測定が可能な観測ロケット「MOMO」
  • 人工衛星事業
    • 高速大容量のブロードバンド通信を実現する「OUR STARS」

本社は北海道大樹町にあり、東京、福島、帯広の各支社、および室蘭工業大学内の技術研究所を含む5拠点で開発が進められています。

低コストで柔軟な設計が可能な小型衛星専用ロケット「ZERO」

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

「ZERO」は、インターステラテクノロジズが開発した小型衛星専用の打ち上げロケットです。このロケットにより、衛星を希望するタイミングで、希望する軌道に正確に輸送することが可能です。同社の強みとして、以下の点が挙げられます。

小型衛星専用ロケット「ZERO」の強み

  • 一気通貫の開発体制
    • 設計から製造、打ち上げまでを自社で一貫して行うことで、通常は年単位で必要なリードタイムを大幅に短縮
  • 柔軟なカスタマイズ対応
    • 自社設計・製造の強みを活かし、顧客の要望や急な仕様変更にも迅速に対応
  • 高いコスト競争力
    • コア技術の自社開発に加え、民生品の活用や3Dプリント技術の導入など、最先端の製造手法を採用することで、業界トップクラスの低価格を実現
(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

宇宙への大量輸送に対応した大型ロケット「DECA」

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

インターステラテクノロジズが開発を進める「DECA」は、宇宙への大量輸送を実現するための大型ロケットです。国内に既存する大型ロケットと同等の輸送能力を備え、2030年代には大量輸送時代に対応したサービスを提供することを目指しています。

「DECA」の主な強みとして、以下の3点が挙げられます。

  • 国内既存の大型ロケットと同等の輸送能力
    • 小型衛星コンステレーションの打ち上げに加え、大型衛星の軌道投入や宇宙ステーションへの物資輸送、小惑星探査ミッションにも対応可能
  • 低コスト化の技術蓄積を活用
    • 自社開発の小型ロケット「MOMO」や「ZERO」で培った低コスト化の設計コンセプトや生産技術を継承し、大型ロケットでも効率的な開発と運用を実現
  • 最先端の再使用技術を導入
    • 再使用技術を大型ロケットに採用することで、コスト低減効果を発揮

微小重力空間での実験や測定が可能な観測ロケット「MOMO」

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

インターステラテクノロジズが開発を進める観測ロケット「MOMO」は、微小重力空間での実験や測定を目的としたロケットです。このロケットは、宇宙空間に向けて弾道飛行を行い、高度40kmから100kmの範囲で微小重力状態を生成します。この環境を利用することで、さまざまな科学実験や技術検証を行うことが可能です。

さらに、「MOMO」は迅速に宇宙空間へ到達できる特性を活かし、企業や商品のPR・ブランディングの手段としても利用されています。たとえば、機体に広告を掲示したり、荷物(ペイロード)を搭載したりすることで、独自性のあるプロモーションを展開できる点が魅力です。

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

高速大容量のブロードバンド通信を実現する「OUR STARS」

(引用:インターステラテクノロジズ公式HP)

インターステラテクノロジズが開発を進める「OUR STARS」は、地球上のどこにいても高速かつ大容量のブロードバンド通信を利用できるサービスです。このサービスでは、ピンポン玉サイズの超小型衛星を宇宙に打ち上げ、それらを活用することで、海上や山岳地帯など従来は通信が困難だった地域でも、安定した通信環境を提供します。

現在、超小型衛星を編隊飛行(フォーメーションフライト)させ、それらを大きなアンテナとして機能させる技術の研究開発が進められています。この取り組みは、研究機関や大学、パートナー企業とのオープンイノベーション体制のもとで進行中です。さらに、軌道上での実証実験を経て、早期の衛星通信サービス提供を目指しています。

資金調達:トヨタグループから70億円の出資を獲得

(引用:ウーブン・バイ・トヨタ公式HP)

インターステラテクノロジズは2025年1月7日、トヨタグループの1社であるウーブン・バイ・トヨタ株式会社との資本業務提携を発表しました。この提携により、同社はリード投資家としてシリーズFのファーストクローズまでに、約70億円を出資することが決定しました。また、シリーズFについては、今後セカンドクローズでの追加調達も予定されています。

さらに、インターステラテクノロジズはウーブン・バイ・トヨタから取締役の派遣を受けることで、コーポレートガバナンスの強化を図るとしています。

なお、2024年10月にはシリーズEラウンドで総額39億円を資金調達したことを発表しており、その累計調達額は補助金も含めると約227億円でした。

提携の背景:トヨタの知見を活用し、ロケットの量産体制を構築

近年、小型衛星打上げの需要は、民間宇宙ビジネスの拡大や安全保障分野での重要性の高まりを背景に急増しています。2016年に年間141基だった打ち上げ数は、2023年には2860基と約20倍に拡大しました。

一方で、日本の年間打ち上げ数は2023年時点で数回程度にとどまっています。この状況を打破するため、政府は2030年代前半までに国内の打ち上げ能力を年間30件に増やすことを計画中です。

これに対して、インターステラテクノロジズは、トヨタ生産方式や自動車業界のノウハウを活用し、低コスト・高品質で量産可能なロケットの開発を目指しています。具体的には、今回の提携により、原価低減やリードタイム短縮、量産体制の構築、サプライチェーンの強化、さらにはコーポレートガバナンスの強化に向け、ウーブン・バイ・トヨタと共同で取り組んでいくとしています。

この取り組みにより、国内宇宙産業の構造改革を推進し、国内外の多様な打上げ需要に応える体制を整備することを目指すそうです。

今後の展望:ロケットと衛星通信事業の垂直統合を推進

インターステラテクノロジズは、日本で初めてロケットと衛星通信を統合するビジネスモデルを掲げています。このモデルは、米国のSpaceXによる「Starlink」事業が成功例として知られ、同社はこの事業により時価総額約55兆円に達しました。同社が開発中の衛星通信技術は、スマートフォンなどの地上端末と直接接続できる次世代ブロードバンド通信であり、高速かつ大容量を特徴としています。

今回の提携を通じて、インターステラテクノロジズはロケットと衛星通信を軸とした総合宇宙インフラ事業の実現を加速させ、「誰もが宇宙に手が届く未来」の実現を目指すとしています。

市場規模:世界の宇宙産業は140兆円規模へ成長中

(引用:国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について|経済産業省)

経済産業省のデータによると、現在の世界の宇宙産業の市場規模は約3840億ドル、つまり約54兆円(1ドル=140円換算)に達しています。このうち、約4分の1は各国政府の予算で構成され、残りの4分の3を民間企業による衛星や打ち上げ関連の事業が占めています。

特に、衛星通信や観測分野では新技術が次々と登場しており、宇宙産業は地球上の社会課題を解決する手段としても注目されている状況です。たとえば、防災や環境モニタリングの分野では、人工衛星による観測データが活用されており、災害時の迅速な対応やカーボンニュートラル実現に寄与しています。

さらに、モルガン・スタンレーの予測によれば、宇宙産業全体の市場規模は2040年までに約140兆円にまで拡大する見込みです。この成長の背景として、宇宙へのアクセスコスト低下や、民間企業による宇宙ビジネスの多様化が挙げられます。

(引用:国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について|経済産業省)

日本の宇宙産業も拡大を目指す

(引用:国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について|経済産業省)

日本国内では、宇宙産業の市場規模が現在約4兆円とされています。これまで大手重工業や電機メーカーが主導してきた日本の宇宙開発ですが、近年では大学発の技術を基盤とする約100社の宇宙ベンチャーが誕生し、新たなエコシステムが構築されつつある状況です。

政府はこの動きを加速させたいと考えており、2030年代初頭までに市場規模を8兆円へと倍増させることを目標に掲げています。その実現に向けて、技術開発の推進や企業支援、さらには国際協力の強化など、さまざまな取り組みが進められています。

宇宙産業の未来とビジネスチャンス

宇宙産業はかつて「官」主導の分野とされてきましたが、現在ではSpaceXのような企業の台頭により、「官から民へ」という大きな変化が進行しています。日本においても、小型衛星やコンステレーション(衛星群)技術を活用した事業が活発化し、これまで不可能だったデータ取得や通信サービスが実現されつつあります。

加えて、国際競争が激化する中、日本企業が競争力を高めるには、技術力だけでなく、新しいビジネスモデルやサービスの創出が不可欠です。たとえば、災害時の被害状況をリアルタイムで把握するシステムや、農業分野での効率的な生産支援を可能にする衛星データの活用は、成長が期待される新興分野です。

このように、宇宙産業は、これからの社会インフラやイノベーションの基盤として、さらなる発展が期待されています。

企業概要

  • 企業名:インターステラテクノロジズ株式会社
  • 代表者:代表取締役 CEO 稲川 貴大
  • 設立:2003年5月19日
  • 所在地: 〒089-2113 北海道広尾郡大樹町芽武149番地7
  • 公式HP:https://www.istellartech.com/

まとめ

本記事では、低価格で高頻度な宇宙輸送サービスを提供するインターステラテクノロジズ株式会社について紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

インターステラテクノロジズ株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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