水と油を混ぜ合わせることのできる「界面活性剤」は、洗剤や食品、化粧品、医薬品など、さまざまな用途で使われており、わたしたちの生活に欠かせないものとなっています。しかし、一般的な界面活性剤は石油から作られており、環境への影響が危惧されるようになりました。
そこで今回紹介するアライドカーボンソリューションズは、100%自然由来の「ソホロリピッド」という天然界面活性剤を開発し、環境に配慮した持続可能なソリューションを提供しています。
石油由来や化学合成に頼らず、植物オイルと天然酵母の発酵によって生み出されるこの素材は、生分解性が高く、排水後も自然に還るのが特徴です。さらに生物への毒性が弱く、さまざまな用途で利用することができるため、持続可能な産業の基盤を作る一翼を担っています。
国の研究機関である産業技術総合研究所・世界最大の化学メーカーであるBASF社と共同研究するなど、注目を集めるアライドカーボンソリューションズについて見ていきましょう。
事業内容:天然界面活性剤「ソホロリピッド」の生産開発
アライドカーボンソリューションズは、人・環境に優しいバイオサーファクタント(微生物が生産する界面活性剤)である「ソホロリピッド」の生産開発を行っています。
ソホロリピッドの最大の魅力は、100%自然由来であることです。植物油と植物由来の糖を原料に、酵母の発酵によって生成されますが、遺伝子組み換え生物は一切使用されていません。化学修飾*等も施しておらず、自然のままの構造・組成比を実現しているため、生物への毒性は非常に弱く、安心して利用できます。
化学修飾*:たんぱく質やDNAなどの生体高分子に含まれる特定の官能基を化学的に変化させて、活性や反応性などの機能を変化させること |
また、ソホロリピッドは低濃度でも優れた界面活性をを発揮し、合成界面活性剤よりも高い乳化能力を持ちます。さらに、高い生分解性も有しており、微生物により水と二酸化炭素に完全に分解されるため、従来の合成界面活性剤に比べて環境にやさしいです。
加えて、微生物由来の製品であるため、数種類の有効成分を含んでいるそう。その1つにバクテリア等に抗菌性を示す特徴があるため、乳化と抗菌の相乗効果も見込め、さまざまな用途開発が可能だとしています。実際に、アライドカーボンソリューションズはソホロリピッドを活用して、化粧品や洗剤だけでなく、畜産向けの添加物安定剤や産業用洗剤を生産しています。
これらの持続可能性・利用用途の豊富さが評価された結果、世界最大の化学メーカーであるBASF社と戦略的パートナーシップを締結しました。
<アライドカーボンソリューションズの代表製品>
- 「ACS-Sophor®」:畜産・水産用の界面活性剤
- 乳化作用で飼料中の油脂・栄養成分の吸収をサポート
- 病原性細菌の増殖を抑制するため疾病予防にも貢献
- 「BioToLife®」:パーソナルケア用途の界面活性剤
- 細菌の過剰増殖を抑制し、角質層の結束を強化することで、フケを防止
- ミクロ生態系を乱すことなく頭皮や肌を正常な状態に
- 「Sophomore®(そふもあ)」:ホームケア・雑貨・その他用途の界面活性剤
- 人にやさしく、地球にもやさしい
- さまざまな場面で従来の石油系界面活性剤の代替品となる可能性あり
資金調達:2024年10月にシリーズCで5.5億円を調達
アライドカーボンソリューションズは2024年10月1日に、シリーズCラウンドで5.5億円の資金調達を行ったとPR Timesで発表しました。今回の調達は、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社、静岡キャピタル株式会社を引受先とする第三者割当増資によって実施されました。
アライドカーボンソリューションズはこの資金をもとに、シャンプーや化粧品などのパーソナルケア用途に加え、衣料洗剤や食器洗剤などのホームケア用途や、農業・畜産業など幅広い産業用途へ展開していく予定です。具体的には、さまざまな産業向けに顧客企業と共同で、製品開発や実証試験を行うとのこと。また、国内外での生産体制を強化し、国内市場に加え、アジアや中東、欧州などへの販路拡大にも取り組むとのことです。
市場規模:天然界面活性剤の世界市場は289億ドルまで成長
Fortune Business Insightsによると、天然界面活性剤の世界市場規模は2023年に207億4000万米ドル、2024年に215億7000万米ドルを記録し、2032年に289億2000万米ドルまで成長する予測です。
天然界面活性剤の市場は、大きく4つの要因から成長しています。
- 環境意識の高まり:消費者は環境に優しい製品を求めており、生分解性で環境負荷が少ない天然界面活性剤への需要が増加しています。
- 持続可能性と健康意識:パーソナルケアや家庭用洗剤、農業といったさまざまな産業で、持続可能で健康に配慮した製品への移行が進められており、毒性の弱い天然界面活性剤の採用が進んでいます。
- 環境規制の強化:洗剤業界における従来の合成界面活性剤に対する規制の強化が、天然界面活性剤の需要を押し上げています。また、衛生意識の向上や液体石鹸の需要増加も市場成長に寄与しているとのこと。
- 生産コストの低下:天然界面活性剤の原材料価格が低下していることが、製造コストの削減に繋がり、市場拡大を後押ししています。
一方で、法的要件の複雑さや原材料価格の変動が成長の障害となる可能性があります。また、消費者が「バイオプレミアム」として、高い金額を支払うことに抵抗を感じやすい点も課題です。
しかし、持続可能な製品への関心は高まっており、天然界面活性剤市場には引き続き成長のチャンスがあるといえるでしょう。
企業概要
- 企業名:Allied Carbon Solutions株式会社
- 和名:アライドカーボンソリューションズ株式会社
- 代表者:山縣 洋介
- 設立:2006年6月
- 所在地
- 本社:〒410-0873 静岡県沼津市大諏訪847-1
- サテライトラボ :〒410-0321 静岡県沼津市西野317 AOI PARC 212室
- 公式HP:https://www.allied-c-s.co.jp/
まとめ
本記事では、人・環境に優しい天然界面活性剤「ソホロリピッド」の生産開発を行うアライドカーボンソリューションズ株式会社について紹介しました。
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